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武装警察隊ダグフェロン 地球に侵略された星の『特殊な部隊』はハラスメントがまかり通る地獄だった  作者: 橋本 直
第十二章 飲み会

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第65話 脱落者達④水鉄砲

「次の奴が『水鉄砲』……アイツは嫌な奴だったな」


 ラム酒を飲みながらかなめは一刀両断に誠の先任者を斬り捨てた。その表情は不愉快そのものと言った感じだった。


「嫌な奴って……」


 何とかフォローを入れないとあとでひどい目に逢いそうな予感がして誠はそう言って見せた。


「そう?自分の立ち位置は分かってなかったけど『バケツ』よりはマシよ。いい男ギャグは私は認めないから」


 個人的な好き嫌いを前面に出してアメリアはそう言った。


「二人とも腕は確かだぞ」


「腕なんて代わりはいくらでもいんだよ!アタシはこいつは嫌いだった!」


 カウラの言葉に今度はかなめが嫌悪感をあらわにした。


「どこ出身なんです?」


 誠の向けた言葉にかなめはグラスを手にしたままそっぽを向く。


「地球人の中華系の建てた遼大陸北の『遼北人民国』。軍大学出のエリートパイロットよ。かなめちゃんも甲武国の陸軍士官学校出のエリートじゃない仲良くしてあげれば良かったのに」


 アメリアの何気ない一言に誠は驚いたようにかなめに視線を向けた。


「西園寺さん……エリートなんですか!貴族制国家の『甲武国』のエリートって……良い家柄に生まれたんですね」


 甲武国の身分制度の厳しさには同じ日本語文化圏として多少の知識のある誠は驚いたようにそう言った。


「アタシの過去の話なんてどうでもいいんだ。士官学校時代の武家貴族出身の野郎共にはいい思い出無いからな。まあ、エリートはうちの水は合わねえだろ?ランの姐御もエリート嫌いだし」


 アメリアの問いにかなめは全責任をちっちゃな機動部隊長のランに押し付けた。


「しかし、射撃の素養は高かったろ?」


「まあ『生身では』の限定がつくがな」


 それとなく言ったカウラの言葉をかなめはあっさり覆してみせる。


「まあ、上からの指示で来たってのは見ればわかったけどね。何を言っても『はい』としか言わないし。言葉を話すのがもったいないとでもいうようにここでも黙り込んで……まるでお通夜みたいだったわね、あの飲み会」


 アメリアはビールを飲みながらそう言って笑って見せた。


「その人も一週間持たなかったんですか?」


 誠が水を向けると三人は静かにうなづいた。


「こっちが言うことを軽んじて生返事ばかりしてこちらが下手に出るとすぐ偉そうにつけあがりやがって……エリートそのものって奴だな!あの態度。あそこも社会主義の国だ。経済こそ資本主義的だが一党独裁で労働党のエリートが全権を握ってるんだ……選民思想?虫唾が走る!」


「かなめちゃん……そんなに嫌わなくても」


 アメリアのフォローに聞く耳持たないというようにかなめは顔を逸らしてラム酒を口にした。


「まあ、あの顔つきと言葉尻からすると、隊長が一週間様子を見ろっていったから一週間居ただけって感じだったな。まあ典型的な上意下達で動くエリートの態度だ」


 カウラもこの男のことは気に入らないらしく何の感動も無いような表情でそう言った。


「出ていくときはあっさりしてたなあいつ。遼北の中華料理は脂っこいのに……ああ、ムカつく!」


 不機嫌そうにそう言うとかなめはグラスに残ったラムを喉に流し込んだ。


「それが組織に生きるということだ……気に入らなくても上の指示には従わなければならない社会主義国では特にその傾向が強い」


「さすがカウラちゃんは分かってらっしゃる……小夏ちゃん!ビール追加!」


 そう言うとアメリアは相変わらずの何を考えているのか分からない笑顔でビールを注文した。


 アメリア、かなめ、カウラの順の答えに誠は少し自分の置かれた状況がそれなりにヤバいモノだと察しながら静かにビールを口にした。



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