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武装警察隊ダグフェロン 地球に侵略された星の『特殊な部隊』はハラスメントがまかり通る地獄だった  作者: 橋本 直
第十二章 飲み会

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第61話 誠を追う者

「それにしてもかなめちゃん」


「なんだよアメリア」


 細い目をさらに細めてアメリアがかなめに顔を近づける。間に挟まった誠は二人の胸に体を当てまいとジョッキを持ったままのけぞるように反り返った。


「勤務中は誠ちゃんと盛り上がってたじゃない……いろいろ調べたんじゃないの?誠ちゃんのこと」


 イヤらしい笑みを浮かべつつアメリアはビールを飲み干してジョッキをカウンターに叩きつけた。


「なんだよ……調べちゃ悪いのかよ」


 ラムのグラスを傾けてかなめがアメリアをにらみつける。


「模擬戦だってわざと負けてあげたんじゃないの?実は」


 にやけた調子のアメリアの言葉にかなめはグラスをカウンターに叩きつけた。


「馬鹿言ってんじゃねえよ。アタシはマジだった。こいつが格闘戦以外は並み以下ってのは知ってたけどあれほどとは思わなかった。そんだけだ」


 いかにも彼女らしいアメリアの勘ぐりを迷惑だというようにかなめはそう言って目を逸らした。


「あの不思議な板みたいなのが無ければ僕はあの一撃で負けてたと思うんですけど……。アメリアさん、教えてください。あれは何なんですか?」


 誠は真剣な顔をしてアメリアを見つめた。そんな誠を見ながら相変わらず何を考えているか分からないアルカイックスマイルを浮かべていたアメリアただビールを一口飲んで語りだした。


「あれねえ……誠ちゃんの私生活が監視されていたことと関係があるのは分かるわよね?しかも生まれた時からどこの誰かも知らない連中に」


 少しまじめな表情を作っているアメリアの言葉に誠は静かにうなづいた。


「つまり、誠ちゃんには普通の遼州人とは違う『力』があるのよ……これから除隊するかもしれない覚悟の決まってない誠ちゃんには詳しくは言えない。それを誠ちゃんが知ればこのままうちを出て同じように監視される生活に戻った時に命取りになるかもしれない。そんなの私は嫌だもの」


 そう言うとアメリアは焼鳥盛り合わせに手を伸ばした。


「オメエには……『法術師』の素質があるかも知れねえんだ」


 かなめはそれだけ言うとグラスに残っていたわずかなラム酒を飲み干した。


「『法術師』?なんですそれ?」


 かなめが突然言い出した『法術師』と言う言葉に誠は戸惑いつつアメリアを見つめた。


「クバルカ中佐。なんであんなにちっちゃいのに『人類最強』なのかわかる?」


 急に誠に向き直ったアメリアはそう切り出した。


「なんでそこでクバルカ中佐が出てくるんですか?僕の話でしょ?今しているのは」


 話題を逸らされたと思った誠がそうアメリアに詰め寄るが、彼女の顔は真剣だった。


「そりゃあ……天才的な勘とか、反射神経とか、力でなくてなにか凄いところがあって……いや、クバルカ中佐が『法術師』だから……ですか?」


 誠はそう言ってアメリアの顔を覗き見た。


「そう。中佐には自分の身体を動かす意志で筋肉以外の力でパワーを補助する『身体強化』と言う力が常に発動しているの。だから速さだけでなく力も『人類最強』なのは間違いないわね。プロレスラーだって中佐と腕相撲したら完敗するわよ。もっとも中佐はちっちゃいから握り合うことができないでしょうけどね」


 そう言ってアメリアはビールのジョッキを手に持った。


 誠は周りを見回した。


 店内は『特殊な部隊』の隊員達ばかりで占められている。秘密が漏れる心配が無いので誠に真実を話しているんだろう。それにしても信じられないことがある。誠は頭に浮かんだ質問をぶつけることにした。


「でも……そんな力があるならなんで発表されないんですか?遼南内戦ではクバルカ中佐は昔の地球の戦争で活躍したエースと同じように聞いてますよ。それが『法術師』としての力によるものだと分かったら……」


 地球人に無い力を持つ異星人である遼州人の存在。それがなぜ公にならないのか、そしてそのことを政府はなぜ発表しないのか。いくら理系脳で社会常識ゼロの誠でも、そこには疑問しかなかった。


「分かったら何なの?その力を地球人に利用されるだけよ。地球人は遼州人の『力』を利用しようとしている。遼州にしても、地球圏と距離を保つには『法術』があるのかないのかはっきりしない状態の方が都合がいいの。だからその存在には勘づいていても地球も遼州も誰も発表しない……まあ、誠ちゃんはあまりに『法術』が普通の環境で育ったからよくわからないかもしれないけど」


 アメリアはそう言うと口の渇きをいやすべくビールを飲み始めた。


「『法術』が普通の環境ってどういう意味なんですか?僕は普通の高校教師の父と剣術師範の母の息子ですよ。そんな変わった環境にいた自覚はありません」


 目の前の糸目の大女が言う『法術が普通の環境』の意味が分からず、誠はそう聞き返した。


「いずれ、貴様も知ることになる。だが、酒に酔って聞くような話では無いんだ」


 それまで黙っていたカウラがそう言って焼き鳥の並んでいる皿を誠に差し出した。


「確かに……そうですよね。いつか教えてくださいますよね」


「約束する。貴様が覚悟を決めた時、うちに確実に残ると決めた時に話すように隊長から言われている」


 誠はカウラの差し出した皿から砂肝を取ると口にくわえた。


「僕が……特殊な環境で育ったなんて……」


 そんな自覚は誠にはまるで無かった。自分の家庭が普通の核家族だと思っていた。


「いいじゃねえか、『法術師』であろうがなかろうがオメエはオメエだろ?それで良いってアタシが言ってんだから」


 ラムのグラスを傾けながらかなめはそう言ってニヤリと笑った。誠は自分に何かしらの秘密があるらしいことだけは理解できた。




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