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武装警察隊ダグフェロン 地球に侵略された星の『特殊な部隊』はハラスメントがまかり通る地獄だった  作者: 橋本 直
第九章 勝利のあと

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第55話 こだわりの車中

 部隊の本部棟の玄関前でアメリアと誠は雑談をしていた。誠はその中で自分の口にした発言を反芻(はんすう)しながら、これからしばらくお世話になることになる本部の入口の車止めの前にアメリアと並んで立っていた。


 好きなアニメ(三十代の女性が好きなものジャンルでまずアニメが出てくるところからして異常なことだとは自覚した)。好きなゲーム(ここでも違和感を感じた。普通に人気ゲームを挙げたとき、『そう言って実は……』とエロゲームの趣味に誘導尋問したのはどうやらそちらを言わない限り許さないらしい)のことについて話した。


 誠は明らかに警戒して口をつぐんだ。結果、分かったことはアメリアの方が誠より多趣味だということだけだった。


「来たみたいね」


 そう言ってアメリアは誠背後の誰かに向けて手を振る。誠はアメリアの視線の先を確認しようと振り向いた。


 アスファルト舗装された道を銀色の車が近づいてきていた。恐らくはかなめかカウラが運転している。


「初めて見る車ですね……なんだかレトロな車」


 その銀色のスポーツカー。運転席にはカウラ、隣の助手席にはかなめが座っている。


「そうよね。うちでフルスクラッチした車だからね。まあ、本物は地球の日本だっけ。この東和の元ネタの国で博物館にでもあるんじゃない。東和共和国の環境基準が二十世紀の地球並みにユルユルだからこうして走れるけど、地球じゃ今時ガソリン車なんて二酸化炭素規制で絶対走れないわね、公道は」


 アメリアの言葉の意味を考えながら悩んでいる誠の目の前で車は停まった。


 運転席の窓を開けたカウラが口を開く。


「乗れ……あと、アメリア……余計なことは言わなかったろうな?」


 そのカウラの目は殺意が篭っていた。


「言ってないって!誠ちゃんのゲームや映像の趣味に引っかかるものがあったら……その時はその時で考えるわよ」


 アメリアはそう言って後部座席のドアを開けた。


「じゃあ、王子様。どうぞ」


 そう言ってアメリアは開けたドアの前で手招きする。仕方なく誠はそう広くはない後部座席に体をねじ込んだ。180センチ以上なのはわかるアメリアがその隣に座る。当然後部座席は大柄の二人が座るのには狭すぎるという事だけは誠にもわかった。


「出すぞ」


 そう言うとカウラは自動車を発進させた。


「エンジン音……ガソリンエンジン車。……フルスクラッチしたって誰が作ったんですか?」


 誠は変わった車に乗っている以上、それについては普通の反応が期待できると思ってそう言った。


「島田の趣味なんだと。有名な旧車で気に入ったの作ってやるって奴が言ったらこれが候補の中に入ってた。そして部品とかの都合がついて、島田が作れると言ってきた中のうち、この緑髪の選んだのがこの『スカイラインGTR』だ」


 かなめは進行方向を向いてそう言った。


「島田先輩が作ったんですか?って一人で?」


 誠は島田が自動車を作れるという技術を持っていることに驚きつつそう言った。


「なんでも、暇なんで兵隊の技術維持のために毎回そんな趣味的な車を作るんだよ、島田は。こいつがその三台目。一台目はマニアしか知らないような日本車で運用艦の操舵手の常にマスクをしている姉ちゃんが乗ってる。二台目はアメ車で、オークションに出したら、地球の大金持ちがとんでもない金額で落札して大変な騒ぎになった。その後がこれ。通称『スカイラインGTR』」


 そう言うかなめは一切誠には目を向けず、誠に見えるのはかなめのおかっぱ頭だった。


 車はゲートを抜け、工場内を出口に向かう道路を進んだ。


「『スカイラインGTR』正式名称ですか」


 ちょっと話題が盛り上がりそうなので、誠はそう言ってみた。


「正式名称は『日産スカイラインBRN32』。まあ内装とかは現代の最新型だ。エンジンも設計図を元に最高のスペックが出せるように島田がチューンした特別製で1000馬力出る。当然、ブレーキ、ハンドリングもそれに合わせての島田カスタム。まあ、兵隊が島田が満足するものができるまで、不眠不休で作り上げた血と汗と涙が篭っているものだ。私はそれにふさわしいように大事に乗っている」


 カウラは上手な運転の見本のような運転をしながらそう言った。


「そうですか……こだわってますね……」


 誠は感心したようにカーナビの無い車のコンソールに目をやった。


「そして、ちゃんとカセットデッキまで内蔵している。今時、カセットなんてと思うが甲武じゃカセットデッキは貴族の最新メディアだからな。西園寺、いつもの曲をかけるのか?」


「当たりめえだろ?」


 かなめはそう言うとダッシュボードからカセットを取り出して誠の見慣れないコンソールのスリットに差し込んだ。


 低いドラムの音がしばらく続いた後、語り掛けるような女性のボーカルが響く。


「西園寺さん……この曲は……」


 誠はアニソンしか聞かないので、切々と語り掛けるように歌う女性ボーカルの歌声に少し違和感を感じた。


「地球の日本の歌だ。ああ、日本と言う国は21世紀半ばの東アジア限定核戦争で滅んだんだったよな。今のアメリカ信託領ジャパンのこと。そこで20世紀に流行った歌だ」


「へー……」


 そのかなめの独特な歌の趣味に感心しながら、誠は歌に聞き入った。


 アメリアのアニメとゲームの趣味。カウラの車。かなめの歌。どうやらこの三人の女性は何かに『こだわる』ところがあるらしい。誠はカウラの運転とこの車への島田の真っ直ぐな思いに感心しながら黙って車に揺られていた。


 車は工場のゲートを抜けた。




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