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武装警察隊ダグフェロン 地球に侵略された星の『特殊な部隊』はハラスメントがまかり通る地獄だった  作者: 橋本 直
第九章 勝利のあと

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第53話 面倒な先輩

 司法局実働部隊機動部隊の部屋は和気あいあいとした雰囲気に包まれていた。


「オメエ野球やってたらしいじゃねえか」



 銃を左脇のホルスターに突っ込んだままのかなめがそう言って誠に話しかけてくる。そこにはさっぱりとした笑顔があった。


「ええ、まあ。うちは都立の進学実験校だったんで部活はほとんど無くて……。でも一応、夏の大会だけは出ないといけない雰囲気があったんで」


「でも地方大会とは言え都の三回戦まで行ったんだろ?すげえじゃねえか」


 笑顔のかなめに褒められて、誠はいい気持ちでカウラに目をやった。


 頬杖をついてほほ笑みながら二人の話を聞いているカウラに少し頬を染めながら誠は咳ばらいをした。


「一回戦も二回戦も相手がうちと同じ出ると負けのチームだったからですよ……まあ、僕は体力には自信がありましたけど」


 いい調子でおしゃべりを続ける自分の背後に人の気配がして誠は振り返った。


 そこには角刈りのこわもての下士官がビニール袋と箱を手に突っ立っていた。その表情には明らかに不機嫌と怒りの感情が満ち溢れていた。


 『嫉妬』


 その言葉を具現化した不機嫌そうな表情を浮かべた目つきの鋭い四角い顔の小男は、誠に向けてずかずかと歩み寄ってくる。


「良いご身分だな。管理部には挨拶も無しか?島田のアホに管理部の悪口でも吹き込まれたんだろ……ああ、ベルガー大尉はいいんですよ、俺が用があるのはこいつだけですから。ほら、これが土産だ」


 男はそう言うとそのまま誠の座っていたお誕生日席のような位置の机にビニール袋を置いた。


「すみません……後で挨拶には行こうとは思ってたんですけど……」


 威嚇するような男の表情に少し緊張しながら誠はビニール袋を手に取る。そこには東和警察と同じ規格の『特殊な部隊』の制服と小さな冊子が入っていた。


「あのー……」


「あと、この冊子がここの電話の子機。使い方は西園寺さんに聞け」


 男は不機嫌そうにそれだけ言うとそのままその場を立ち去ろうとした。


「ああ、私が教えよう」


 カウラはそう言って立ち上がる。それを見た男は慌てて彼女のそばに走り寄った。


「いやいやいや!ベルガー大尉ほどの方のお手を(わずら)わせるようなことはしませんよ。それにしてもベルガー大尉はいつものことながらお美しい……じゃあ、西園寺さん……」


 男はそう言うと明らかに嫌そうな顔をしているかなめに目を向けた。誠はカウラとかなめで明らかに態度が違う男にどこか歪んだカウラに対する好意を感じながらかなめに視線を向けた。


「カウラが教えてえって言ってんだからそうすりゃいいじゃん。ヒンヌー教徒の教祖様はこれだから付き合いきれねえ」


 投げやりなかなめの態度に、小男は明らかに怒りの表情を浮かべて誠をにらみつけた。小男の腕力ではおそらくサイボーグのかなめの敵にはならないだろう。


「あのー……僕なにか悪いことをしましたか?」


 誠の気弱な態度に小男は憤慨したように鼻息を荒げてにらみつける。


「言っとく!貴様は新人だ!新米だ!とりあえずここに配属になったが、それは単なる偶然だ」


「そうか?こいつをうちに引っ張っるのにオメエも協力したじゃん。『こいつはロリコン犯罪者に仕立てましょうよ』って言いだしたのはテメエだったよな?確か」


 荒ぶる小男の神経を逆なでするようにかなめはぽつりとつぶやく。かなめをひとたびにらみつけた後、小男は咳払いをして椅子に座っている誠の顔を怒りを込めた視線でにらみつけた。


「ともかく、お美しいベルガー大尉の邪魔になるようなことをするな!ベルガー大尉は立派なお方だ!貴様のような軟弱モノに汚されていいような存在ではない!」


「さすがヒンヌー教徒。そんなにぺったん胸が好きなのか?カウラに気があるのがバレバレだな。まあ、結論から言うとカウラはオメエのこと嫌いだって」


 かなめの茶化すような言葉を受けると男は顔を真っ赤に染めて実働部隊の詰め所の出口に歩いていく。


「いいか!貴様を認めんからな!俺は!」


 小男はそれだけ叫ぶと実働部隊の詰め所を出て行った。


「なんです?あの人」


 誠は困惑しながら無表情で状況を見守っていたカウラに尋ねた。


菰田邦弘(こもだくにひろ)主計曹長。管理部の部長代行だ。総務とか経理の仕事は菰田の指揮下の管理部の職員が担当している……まあ島田のアホから聞いてるだろうけど部下の全員がパートのおばちゃん達だけどな……それと……」


 カウラはそこまで言うと静かにうつむいた。


「それとなんですか?」


 不可解なカウラの動きに誠は心配そうにそう尋ねた。


「ペッたん胸愛好者の集まりのカウラファンクラブの会長だ。『ヒンヌー教団』ってアタシ等は呼んでる」


 銃をいじりながらかなめは面白そうにそうつぶやいた。


「『ヒンヌー教団』?それなんです?」


 誠ははじめカウラに尋ねようとしたが顔を真っ赤にしてうつむく彼女を見て視線をニヤニヤ笑っているかなめの方に向けた。


「あの変態主計曹長殿とゆかいな仲間達はツルペタおっぱいが好きなんだと。だからうちで一番胸が無いカウラを神とあがめていやがる……まあ、あのめんどくさい角刈り頭がアタシの豊満な胸に興味を示さないでいてくれるのは結構な話ではあるんだがな」


 かなめはそう言ってうつむいたままのカウラを興味深そうに眺めた。


「迷惑な話だ……そうだ、仕事だ」


 カウラはそう言いながら箱から電話の子機を取り出して誠の机のジャックに差し込んで設定を始めた。


「なんだか怖そうな人ですね」


 明らかに誠にいい印象を持っていなそうな菰田の態度に誠はそう言って頭を掻いた。


「オメエが今日帰る寮の副寮長でもあるからな。年中顔を合わせることになるぞ……まあいろいろと変な奴だからうまくやれよ」


 かなめは無責任にそう言ってにやりと笑う。


 どうも初日から敵を作ったらしい。誠は先ほどの角刈りを思い出してそうはっきりと自覚した。


「じゃあ子機の使い方だが……」


カウラは何事も無かったかのように電話の子機を手に取る。誠は苦笑いを浮かべながらカウラの作業を見守っていた。




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