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武装警察隊ダグフェロン 地球に侵略された星の『特殊な部隊』はハラスメントがまかり通る地獄だった  作者: 橋本 直
第四章 『特殊な部隊』へと向かう

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第26話 危険物取扱免許1種とレアな『才能』

 圧倒的迫力とその姿のどう見ても萌えなことにあっけにとられている誠。ランは静かに自動車の発進動作を開始した。


「……ただ、もしも役立たずなだけじゃなくて、見込みのねー馬鹿だったら駅までタクシーでも拾えという所だったがよー、オメーはウチに必要な人間だっていう事はわかったわ」


 車は順調に走り始めた。どうやら郊外に入って渋滞を抜けたらしい。


「オメーの仕事は、詰め所に椅子で勤務時間中に座ってるそれだけだだ。他は全く期待するに値しなねーや。逆に言うとだ、それをしている限り、オメーを必要としている職場であるという自覚が持てるわけだ。オメー向きだよ、うち」


 誠は椅子に座りなおしながら、窓の外の住宅街を眺めていた。


「席にいればいいんですか?」


 誠は恐る恐るつぶやいた。


「まあ、椅子にずーと座ってろってのは、物の例えだよ。その例え出動があってもオメー何にもできねーからな。うちの連中が命懸けで守ってくれるんだ。いーだろ。さっきのハラスメントを並べ立てたが、オメーがその『才能』を持っているというのであれば、みんな、オメーを頼りにする。そんな貴重な『才能』をオメーは持ってる」


 バックミラーにはランの不敵な笑みが浮かんでいた。


「『才能』ですか?」


 誠はその言葉に違和感を感じながらつばを飲み込んだ。


「そーだ、『才能』だ。多少違和感は感じるかも知れねーが、とりあえずその『才能』はウチには他にねーんでオメー以上にその『才能』がある人間が来ねー限り。安泰だ。多分一日中その才能を発揮する機会が転がってるから、ぜひその『才能』を伸ばしてくれ。うん、うん」


 その言葉は前の冷静なランに戻った姿で語られた。


「あのーその『才能』って……なんです?そんなにレアな資格持ってませんけど。教職もってないですから。教員になる気ありませんし。なんです?『才能』って」


 なぜこの人はずばり物を言わないのだろう。そんなことを考えながらとりあえず誠は聞いてみた。


「まあ、ずばり言わないのはアタシの教育方針でね。わかる奴はわかるってことだ。ちなみにその『才能』を極めると、テレビに出れる」


「テレビ?」


 ここで喜んではいけない。なにかその才能で破滅して、結果、逮捕されて警察官に囲まれた映像が映ったからテレビに出たと言い出す。誠の持っている資格には、危険物取扱1種と言う、化学系の専門大学を卒業することが受験資格で指定されている危ない資格もある。そして、少なくともこれから行くところには種類は分からないが火薬がある。


「爆弾を作るとか……危険物取扱免許1種の資格は持ってるんで、材料を買う事は出来ます。その資格と、僕の戸籍謄本があれば、買えますから。でも、嫌ですよ、爆弾魔になるなんて」


 ランは誠の言葉を聞くと大きくため息をついた。


「オメーの資格じゃねーよ。それだったか化学工場に嘱託でそういう仕事あるから。良かったじゃねーか。アタシの話聞けて、これでいつでも転職できる職種が一個あるわけだ。良かった良かった」


 突然誠は、ちっちゃな女の子に遊ばれているという状況に赤面すると同時に、この人には人の何かを引き出す大きさと言うものがあるのではないか。


 只者ではない。見た目は幼女。そして名前からして無敵のエースで名の知れた教官。でもそれ以上に……。


「あの……中佐」


 黙って国道に戻る道を運転するランに自分の今思っていることを伝えようとした。


「なんだ、褒めるのは止めとけや。そう言う言葉を言われると人は傲慢になる、アタシもそれは命取りになることを知っている……特にアタシ等みたいな仕事ではな」


 すごく危ないプロフェッショナル。危ない仕事に慣れた殺し屋が、渋い名の知れたアクション映画の俳優が言うならそれはそれで格好がつく……が、言っているのはどう見ても8歳の幼女である。


「選択肢ぐらいはいるだろ、うちがどんなところか、どんな方針でやってるか……集まってる連中も、オメーもその方針にあってるから来た。賛同しているからアタシがいる。勉強しな、ちっとは……『学ぶ心』があれば、成長する、誰でもまあ、人生語る……ぐれーのはな……垂れること……そんなこと誰でもできるんだ、言葉を話せりゃ、誰でもできる。そこに深みがあると思ってるのは……」


 ごくりと誠は息を飲んだ。とりあえず、二つ名を持つ伝説のエースの言葉。きっといいことを言うと次の言葉を待ち続けた。


「こっから先、オメーが考えろ。誰でも言えるさ、こんなもん。餓鬼だと思ってなめてんのか、餓鬼だと思って舐めてんのか……そう言う馬鹿につける薬はねー、こいつが必要だって隊長の前で一つ芝居でも打ってやろうと思ったが、さっき言った『才能』以外は見どころはねーな。あとは自分で押し切れ。それを使わず、出ていくかどうか、選択肢はどっちにする」


 馬鹿にされたのか、褒められたのかよくわからないが、その才能があれば、これから先必要とされる、職場にいることができるらしい。できるならこんな立派な幼女の下で仕事をしたい……そして聞いてみた。


「『才能』って……」


 そんな言葉に明らかに呆れたようなため息をついて車内は静まり返った。


「その『才能』を知るタイミングは今じゃねー、おそらくそんな『才能』を持っている事実は自覚するタイミングは今じゃねー、その『才能』を開花させたあと、進むべき道が開かれるのだが、それはそれで、難しいと聞く。もし、それが唯一の『才能』でその道の険しさを知れば……」


 また口ごもる。


「言ってください!僕にどんな『才能』があるか!」


 じっと身を乗り出した誠。その顔をランはちらりと覗く。


「邪魔だ、座ってな、知ったらどうなるか、決まってんだろ。その『才能』しか持たない自分に絶望するよなー。オメーは偏差値は高い、運動能力はかなり高い、面は良い、だが、この車に乗ってるってことは、その『才能』以外で生きるのは難しーそれしかないわけだ。そんぐれー自覚するのが難しー『才能』だ。親を恨みな、環境って奴を、アタシのせいじゃねー」


 誠はとりあえず、とんでもない『才能』があるらしいこと、それが目覚める瞬間に恐ろしいことが起きると恐怖した。




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