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武装警察隊ダグフェロン 地球に侵略された星の『特殊な部隊』はハラスメントがまかり通る地獄だった  作者: 橋本 直
第三十六章 彼女達の思い

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第161話 決意を固めながら

 誠は嵯峨から追い出されるように展望ルームから出ると、緊張からくる胃のむかつきを抑えようとハンカチで口を押えながらエレベータルームにたどり着いた。


 彼はとりあえず自分の決断を伝えようと、『特殊な部隊』司法局実働部隊機動部隊長である『偉大なる中佐殿』ことクバルカ・ラン中佐の個室を目指した。


 エレベータが誠のいる階に到着して扉が開くと中には先客がいた。


 そこにいたのは目的の幼女、クバルカ・ラン中佐だった。


「クバルカ中佐!」


 誠は嵯峨から告げられた『非情で危険な任務』について確かめようと小さなランに声をかけた。


「なんだ?神前。ここじゃあなんだから話なら食堂で聞くぞ」


 そう言ってランは誠に笑顔を向けた。相変わらずどう見ても八歳の女の子にしか見えない。


 誠は彼女の大きな目を見て、その脳内が完全に『体育会系鬼軍曹』そのものである事実に気づいた。誠は幼女にしては迫力のありすぎるランの態度におどおどしながら、エレベータに乗り込んだ。


「クバルカ中佐の執務室に行くんじゃないですか?」


 そう言ってみる誠だが、ランは否定するように首を振った。


「いいや、食堂に行く。アタシの部屋はまだ神前には刺激が強いらしいからな……どうもアタシの理想とする『任侠道』って奴は誤解されてるらしい」


「任侠道ですか……」


 ランの何気ない言葉を聞きながら、誠達はエレベータは食堂のある共有フロアーに到着した。ランは小さな体で肩で風をきって歩く。誠もおずおずとその後ろに従った。


 廊下一面に『魚拓』や大物を釣り上げた記念写真が並んでいた。


「また今日も魚ですか?」


 体力自慢の誠も『点滴』と『魚料理』の繰り返しの日々には飽きてきた。


「アタシは慣れたぞ……やっぱ天然物を船上で神経締めした魚は旨いや」


 ランはまた珍妙な発言をする。


「そうですか……」


 不思議そうにランを眺める誠を見ながら、彼女は食堂に入った。どう見ても八歳女児のグルメうんちく聞く現実に耐えながら、誠は食堂の奥のテーブルに黙って腰かけた。


 ランは誠の正面に座って誠の顔を見ると静かにうなづいた。


「どうせアレだろ?近藤とか言う『クーデター首謀者』を隊長が処刑しろって言ったことだろ?とりあえず、飯を食え。ここのとっておきの肉料理の『かつ丼』をおごってやる」


「はい……」


 誠は券売機に食券を買いに行くランの後姿を見つめていた。周りの非番の隊員達がアジの開き定食やサバの味噌煮定食を運んでいく様を見つめながら誠はぼんやりしていた。


「本当に……魚しか無いんだな」


 そう言いつつ誠は嵯峨の言った『逃げろ』と言うことを考えていた。


 今回は演習ではなく実戦である。誠にもその事実は分かっていた。そして『死』がそこに待ち構えていることも誠には理解できた。死ぬのが好きな人などいないと思っている誠にとって逃げれば確かに死とは関わらずに済むことも分かっていた。


 誠は逃げることができないと思っていた。一週間前の誠なら嵯峨の提案に乗って逃げ出していただろう。逃げるにしてはこの『特殊な部隊』の面々と関わり合いが深くなりすぎていた。


 かなめ、カウラ、アメリア、そしてラン。彼女達を見捨てて逃げることはできない。


 逃げた誠を軽蔑する視線で見つめてくる島田を想像すると逃げるという選択肢は誠には浮かばなくなっていた。


「なにボーっとしてるんだ?食えよ」


 呆然としていた誠の前にはすでにかつ丼が置いてあった。その向こうではランが誠を見つめていた。


「はい!」


 驚いた誠はそのままドンブリに手を伸ばした。



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