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武装警察隊ダグフェロン 地球に侵略された星の『特殊な部隊』はハラスメントがまかり通る地獄だった  作者: 橋本 直
第三十二章 時代遅れに見える『鉄道輸送』

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第147話 部隊運用の仕組み

 演習の予定が入ってから、『特殊な部隊』はそれまでの暇人の集団と言う様相から実戦を想定した武装集団であるということを証明するような喧噪に包まれていた。


 いつもは人影の少ないハンガーの出入り口ではあわただしげに次々とコンテナが運び出される。


 そんな騒ぎをよそに誠は倉庫の裏でうんこ座りでタバコを吸いながら働く部下達を放置している島田の前をぼんやりと眺めていた。目の前をコンテナを積んだトレーラーが走っていく。


「島田先輩……このコンテナは『運用艦』の港まで運ぶんですか?僕の機体を運んで来た時みたいにトレーラーなんかで」


 タバコを吸う島田の目の前で『マックスコーヒー』を飲む笑顔のサラの視線を浴びながら誠はそう言った。


「神前、やっぱりオメエは『高学歴馬鹿』だ。何にも分かってねえ」


 島田は誠を見上げるとそう言い放った。そういう間にもトレーラーは、巨大な隊舎の倉庫からコンテナや、大型の『シュツルム・パンツァー用兵器』などを搬出している。


「こいつは『菱川重工業豊川工場』の裏の『貨物ターミナル駅』まで運ぶわけ。」


「『貨物ターミナル駅』?」


 初めて聞く言葉に誠は首をひねった。


「そうだよ、東和共和国国有鉄道の貨物線が隣の工場の裏まで通ってるの。まあ、この工場が落ち目になってからはほとんど使われていないがな。そこで、うちの手持ちのトレーラーから『貨物列車』に積み替えて、運用艦『ふさ』のところまで運ぶの」


 島田は頭の悪い高校生を教えるいい加減な教師のようにそう言った。


「荷物を積み替えるんですか?それって面倒じゃないですか?」


 荷役作業をするつなぎの技術部員の一人が手渡した缶コーヒーを受け取りながら誠はそう言った。立ち上がった島田は完全に見下すような目で誠を見つめる。


「そっちの方がコストが安いんだよ。運用艦『ふさ』は『常陸(じょうりく)県』の『多賀港(たがみなと)』に停泊している。全部の貨物をそこまで運ぶにはうちの手持ちのトレーラーじゃ数が足りねえ」


 誠はぼんやりと偉そうな顔の『ヤンキー』である島田の説明を聞いていた。


「もしそこまでは、トレーラーの数が揃っていたとしてもだ。高速道路に乗って五時間かけて『多賀港』まで行くことになる。途中で料金所とかのゲートが通れない資材もあるから、そっちは一般道に降りる……めちゃくちゃ手間がかかるんだよ……それでもトレーラーで運ぶとして足りない運搬用のトレーラーとかの手配。どうすんだよ。レンタルするのか?そんな予算うちにはねえぞ」


 自分で馬鹿な誠に説明していて腹が立つ、島田の顔はそんな気持ちを表していた。


「じゃあ『鉄道輸送』だと、そんな問題無いんですか?」


 社会を知らない自分を理解し始めた誠は素直に島田にそう尋ねた。


「あのなあ、兵器は元々『船舶輸送』か『鉄道輸送』を前提に設計するわけなんだ。『空輸』なんて制空権が取れなきゃ話になんねえだろ?海や宇宙なら、大きさ制限がほとんどない『船舶輸送』が考えられるが、『陸上戦力』になることを前提にしたシュツルム・パンツァーは『鉄道輸送』ができるようにできてるの!それ、軍事の『常識』!神前、おめえさんは『幹部候補生』だろ?そんなことも知らねえのか?」


 隊内の噂では割り算ができないはずの島田から、『理路整然』とした言葉が出てくるのに誠はただ感心するしかなかった。


「でも……もう05式が無いですけど……どうしたんですか?」


 誠は思いついた疑問を先輩にぶつけた。その隣ではサラが島田に愛の視線を送っている。


「一番先に専用コンテナで搬出済み。あれは、さすがに分解しないと『鉄道輸送』は無理だからな。今朝一番でバラして朝一の臨時便に乗っけた」


 島田はサラから空き缶を受け取ると、吸い終えたタバコをねじ込んだ。



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