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武装警察隊ダグフェロン 地球に侵略された星の『特殊な部隊』はハラスメントがまかり通る地獄だった  作者: 橋本 直
第二十九章 寿司と幼女

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第137話 軍人の覚悟

「僕は……軍人です。軍人は戦争で人を殺すかもしれない職業です。その覚悟くらい……」


「いや、出来てねーな。オメーの言うのは言葉だけの上っ面だ。アタシはさんざん人を殺してきた。おそらくアタシより多くの人を直接殺した人間はいねーくらい殺した」


 強がる誠を見上げるランの瞳。それは鉛色に鈍っていつもの明るいかわいらしいランの瞳とは違う輝きを持っていた。


 誠はそんなランに初めて出会ったときの殺気を思い出した。


「確かにスイッチ一つや指示書を出してアタシより多くの人間を殺した奴はいるだろうな。でも、アタシは直接この手で直接殺した。得物は『方天画戟(ほうてんがげき)』……だから人はアタシを『汗血馬(かんけつば)騎手(のりて)』と呼ぶんだ。中国の三国志の時代に『方天画戟』を振るった大粛清の武将『呂布奉先(りょふほうせん)』にあやかってのことだ」


 そこまで言うとランは誠から目を逸らして手を猪口に伸ばした。


「そん時のアタシはどうかしてた……眠ってたところを起こしてくれた恩を感じてその『外道』の野心に利用されていることに気づかなかったんだ……馬鹿だったんだな……でも、アタシはアタシを取り戻し、その『外道』を始末して国を捨てた……」


 ランはそう言うと再び刺身をつまみに酒を飲み始めた。誠も彼女に合わせて再びどんぶりの中のちらし寿司を食べ始めた。


「結果、アタシの国、『遼南共和国』はこの世から消えた。消えて当然の国だったんだ。『外道』の野心を実現するための機械にされたアタシが言うんだ。間違いない」


 そう言って笑うランの言葉を聞きながら誠はどんぶりから口を放してランを見つめた。


「アタシが敵を落とした数……厄介なことに記録が残ってんだ……でもアタシは認めねー!アタシは一機も落としてねーんだ」


「記録が残ってるんじゃないんですか?」


 少し的外れだとは思ったが誠の口をついてそんな言葉が飛び出した。


「それは事故だ!相手の技量がひどかっただけ!アタシは『撃墜数0、被撃墜回数1』だといつも言ってる!」


 ランは誠を見上げてそう叫んだ。


「そーだな。自分勝手な言いぐさなのは分かってんだ……でも、アタシは誰も殺したくねーし、殺させたくねー。傷つけたくねーし、傷つけさせたくねー……でも……」


 そこまで言うとランはうつむいてしまった。小さな子供に肩を震わせながらうつむかれることは誠にはあまり気分のいいものでは無かった。


「それは……任務なんですよね」


 誠は静かに、そして力を込めてそう言った。


「そーだ。任務って話になる」


 ランは顔を上げた。目はわずかに涙で潤んでいた。


「それなら……遂行します。それが軍人や警察官と言う仕事だと分かってますから」


 そんな誠の言葉に嘘は無かった。その言葉を聞いてランはようやく微笑みを浮かべた。


「そーか。オメーにはそんな試練を与えたアタシやあの『駄目人間』を恨む権利があるんだぞ」


 上目遣いにそう言うランを見て誠は大きく首を横に振った。


「恨みません……アメリアさんの話じゃ、僕はずっと監視されてきたって話じゃないですか。そんな僕の知らないところで僕の運命が決められるなんて僕はごめんです……僕の運命は僕が決めます!たとえ命がけのことでも」


 誠はそう言い切るとどんぶりに残ったちらし寿司の残りに口をつけた。


「そーかい。ならいーや」


そう言うとランはにっこり微笑んだ。


「大将、アタシも小腹が空いたから握ってくれ。まずはコハダとイカで」


 ランはそう言って猪口の酒をあおる。


「はい!中佐!」


 大将は笑顔でそう言うとまずはコハダを握り始めた。


 こうして寿司屋での会食の夜は暮れて行った。




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