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紆余曲折で神になった俺の異世界フィーバー  作者: 世渡β
平凡な人生に終止符を
3/4

《1-2》

仕事の合間を縫ってとはいえ更新全然ですねー……。

今ページの字数は五千未満です。

テキトーに一気でも合間合間にでも読んで頂けたらと願います。では良い一日を。

「おいっ、ちょっ、ま、待てって! 落ち着こうぜ? なっ?」


右に動きすぐ様反転し、左へステップを踏む。そしてさらにそこからまた反転。からの即座にその場を踏み蹴る。


今や前世の人間味の見る影もないその跳躍は、まさに空を飛ぶ生き物だと思える。


宙に浮かせた体を前方へと一回転。くるりと回る。そうして……、着地。左足で着地しそのまま捻って反転させて、右足を引いた形で地に着ける。


文字だけでこの光景を現したならば、一体コイツは何をしているんだと思われ兼ねないが、実際にその場を目の当たりにしたなら、成程と納得するだろう。


「あーそのなんだ。確かに最初は俺もやっちゃおっかなーなんて考えていなくも無かったけどさ。やっぱり俺にはらしく無いって言うかさ。柄にも無いことって言うかさ」


あははははー、なんて愛想笑いを浮かべながらに、言い訳を言い連ねる。最も愛想笑いなんてもんがこの相手に通じるかって聞かれたら俺は目を背けるが。


いや、そもそも、この言い訳ですら意味ある行為なのかと問われたならば、主観的には「知るか!」と叫ぶが、客観的に見れば「意味無し」とキッパリ論ずるに違いない。


何せ今俺が言い訳している相手は俺とおんなじ人間ではなく、あの狼モドキ――[ワーヴォルク]なのだから。




神の力。その力を持つ訳だが、残念ながら所持しているという事しか知らず、それが一体どんな力なのかは分からない。


そのせいか、まともに力も発揮出来ない俺は、最終的選択肢として、とにかく避けて避けて避けまくる作戦を選んだ。


強靭な四足で大地を踏み締め、猛突してくる[ワーヴォルク]。

十数秒間ほど来なかったので、心中で一息ついていたらこれだ。相手方は俺とどうにも遊びたいらしい。


こちらからすれば勘弁願いたいものである。がそうも言っていられないのが現状で。


数秒程で差を詰め、尖鋭な牙を顕にさせる。どうやらあの牙で俺の肉を噛みちぎる遊びをご所望のようだ。


だがそんな遊びに付き合っては(文字通り)身がもたないので、当然これまで同様にステップを踏んで避ける。そのまま距離を取る。


ったく。前世じゃ習い事してたお陰か案外筋肉質な体だから体脂肪率も低いだろうから食える箇所なんて少ないだろうに。

それほど飢えてるのだろうかこのヨダレ垂らしてる狼モドキ野郎は。


それを言ってしまえば俺も空腹だからおあいこなんだしここは見逃し合おうぜなんて思いつつも、気を緩めない。


一瞬の油断が俺の命を刈り取りかねんからだ。


『グルルァッ!!』


よっぽど俺と遊ぶのが楽しいのか、哮りあげる[ワーヴォルク]の姿。その鋭い眼光だけで貫かれ無いかと思えてしまう。


こちらの動きを待っているのか、はたまた別の理由が有るのか、[ワーヴォルク]は襲いかかって来ない。


もしやこのまま立ち去ってくれるか、なんてあわい期待は持たない。この狼モドキの目は未だ獲物(オレ)を狩らんとする目だ。期待なんざ全く持てない。


ただこの硬直状態は助かる。こちらは少し考える時間が惜しいのだ。


……今この場を逃れる方法は大まかに三つ。一つは簡単で一番望ましい方法。このヨダレ垂らした狼モドキを倒すこと。これである。


がいくら前世では少しだけ武術に長けていたとはいえ、いくら前世よりも身体能力が上がっているとはいえ、相手はファンタジー色濃厚な世界が産んだ狼 (モドキ)だ。武器無しで神の力が分からない以上望み薄な方法だ。


では残り二つとなるが、その内の一つが[ワーヴォルク]の方からどこかに行ってもらう方法。

例えば今やってるみたいにひたすら[ワーヴォルク]の攻撃を避け続けて諦めてもらうとか。


ただこれは[ワーヴォルク]がいつか諦めるだろうという希望的観測からの方法なので、倒す方法程ではないが少し確率は低いと言える。


そうなると残る一つとなるが、それは[ワーヴォルク]を巻いて逃げる、だ。

[ワーヴォルク]と相対して分かったが、コイツの攻撃が避けられる、ということは俺の方が身体能力は高い事になる。


勿論それは俺が避ける事に徹底している今だからこそ言えることで、避けながら攻撃なんてしたら一気に攻撃を食らってしまうかも知れないが。


故に逃げる選択肢一択で動けば難を逃れられるのではないかと推測した。


ただ俺は残念だが背を向けて走るなんて恐ろしい事は出来ないので、現状避けては向き直り、避けては向き直りを繰り返している訳だ。


『グラァッ!』


不意に[ワーヴォルク]が哮りつつも、先と同様猛突してきた。それをある程度余裕を持って躱す。余裕ぶっこいてどっかの達人みたいに躱しはしない。何せ命が掛かってるからな。


避けた後、また距離を取ろうかと考えていた矢先、[ワーヴォルク]が今までにない動きを見せてきた。


避けた俺に対し、そう来ることを詠んでいたのか鋭刃なる爪を持った前足を一閃して来たのだ。


突然の二擊目に動揺したために反応が少しばかり遅れる。

腹部を狙った橫薙ぎをギリギリの所で避ける。


ただし攻撃は避けれたが、代償を生むことは避けれなかった。いや、攻撃は避けれたが、裂けてしまったと表現しようか。


ビリッ。生々しい破れる音。それが俺の腹部、正確には脇腹辺りから聞こえた。


何が起きたのか確認する前に、崩れた体勢を整え、相手と離れる。確認よりも立て直しが大切だ。


相手が二連撃を避けられた事が影響したのか追撃してくる気配はない。


出来る限り目を離す時間を短くしつつ、嫌な音のした脇腹へと目を向ける。すると映ったのは、破れた上着の姿。


脇辺りから下が完全に破けていた。[ワーヴォルク]へと戻していた視線を少しずらす。

その視線の先には、ちぎれた布辺。色的にもあれが俺の上着の一部に違いない。


くそっ。この狼モドキがよくも俺の大事な一張羅を破ってくれたな。……無論思うだけで言わない。言葉が引き金に襲われる可能性も有るからだ。


このタイミングで襲われたら困る。何せ今の攻撃で問題が浮上したのだから。


猛突。そして地面を蹴って噛み付き。ここまではこれまでと同じパターンだった。そしてそれだけだと思っていた。しかし予想に反し、連撃を繰り出して来た。そう、腕の引っ掻きだ。


これは実に厄介だった。引っ掻きが、ではない(勿論引っ掻かれて服がボロボロになるのは厄介だが)。


今まで突撃と噛み付きの単調な攻撃方法だったからこそ躱す事が出来ていたのだ。


それが、加えて前足での攻撃もとなると攻撃が詠めなくなる。


もしも突撃だと思っていたものが連撃だったら、もしも連撃だと思っていたものが突撃だけだったなら、それだけで避けるタイミングや体勢を立て直す時間が狂う。


その小さな狂いが積もりに積もって大きな狂いとなり、攻撃の直撃に発展するのだ。塵も積もれば何とやらだ。


まさかコイツにこんな攻撃が有るなんて思いもよらなかった。

今までして来なかったのは布石か……いや、そこまでの知能はコイツには無さそうだ。となるとただやらなかっただけか。


俺を突撃だけでも倒せる相手だと考えていたんだろう。それはそれで悔しいが、状況的にはずっと俺を格下だと思ってくれていた方がマシだった。


『グラゥッッッ』


四足飛び。バラバラでなく同時に蹴る事で速さが増す。これも今まで見せなかった動きだった。

横に避けるのは遅い。一撃目が来ても二擊目を食らう可能性が三割以上。たった三割されど三割だ。


横は駄目、モグラでもあるまいし下も駄目。となると残るのは一つしかない。


たんっ、軽やかにジャンプする。前にジャンプするとぶつかり兼ねない位置まで[ワーヴォルク]が来ていたので今回は仕方無く後方に退く形のジャンプとなる。


――――その判断が、間違っていた。



後方へ跳び、後は着地をして体勢を整える。それが俺のこれからの動きだった訳だが、それは余儀なく辞退となった。


仕方無かったのだ。予期して居なかったのだ。

相手が人間だったならこんなヘマはし無かったと思う。闘い慣れてるからだ。けれど今回の相手は狼モドキなのだ。予期出来ずとも誰が責められようか。いや責められまい。


内心で反語の言い訳を連ねている間にも、危険は迫っていた。

強靭なる四肢を持つ[ワーヴォルク]。その四肢を使った動きはとてもカッコよかった。


[ワーヴォルク]は、突撃し、着地した刹那には、また地面を蹴って居たのだ。



――――更なる加速――――


初速でトップスピードを出せる生物はそうは居ない。かの台所、主婦……否、全人類の敵たるGの名を持つ奴が初速からトップスピードで走ると聞いた事が有るがその真偽はともかくとしてそんな生物は滅多に居ない。


無論普通に速度を上げるには二回、三回と蹴る事でスピードを増すのだ。そして今回の[ワーヴォルク]もその例に漏れず、連続して地面を蹴る事で、初速以上のスピードを出したのだ。


それが一体どうしたのか。なに、簡単だ。

やつ、[ワーヴォルク]は軌道から予測でもしているのか、はたまた本能からかは定かではないにせよ、俺の予測着地点に向かって跳んだのである。それもタイミングを合わせた様に。


もしこのまま時が経ち、重力に従い降下していけば、待ち受けるのは良くて切り傷。または重傷。悪くて死だ。


愉快な話だ。愉快過ぎて笑えてくるぜ。


「クソがっ!」


降下していく事に悪態をつく。このまま行けば牙かはたまた爪か。どちらかの餌食となるだろう。

この世界に来て早々退散なんざ、後免こうむるわ。


つっても、今更体を捻らせようとも、衝突は避けられない。それが軽傷か重傷かの違いだけだ。


ここまで来ると覚悟を決めるしか無かった。


今まで何だかんだと渋って居たが、こんなところで死んでは堪らん。笑い話にもなりゃしない。


ならもしこのまま死ぬってんなら、最後まで遊んで散ってやろうじゃねぇか。


宙から落ちている短い間に、決心する。


『グルルルアァァッッッッ!!』


仕留めた、とでも言いたげな勝利の雄叫びを上げる[ワーヴォルク]。

だが雄叫び如きに怯んでいる暇など無いのだ。

このたった一秒か二秒。それだけの瞬間に全意識を集中させる。


頭に浮かべるのはこれまでの思い出……走馬灯ではなく、たった一つの動作だった。

脳内でリピートされる動き。これが有るのと無いのとでは成功確率は確実に変わってくる。



――――そして時が来た。


跳躍して約二十秒足らず。それ程までに短時間で多くの思考が脳を焼いた。だがそれも最後だ。


決心したのだ。ならばもう後はその思いに付き従い動くのみ。止まることは許されない。


……[ワーヴォルク]が跳び迫り、それに当たる形で落下していく俺。このままでは恐らく腹部を食われるだろう。


んなことさせて堪るかってんだ。意気込んだ俺は、頭で何度も何度も繰り返した動きを――いいや、違う――、攻撃をした。


捻る。捻る捻る捻る。体全体を空中で捻らせる。半回転。まだ足りない。勢いをここで殺さずに、もっと勢いを着けて顔を、胴体を、足を回す。


その時にはもう、左足だけは別行動をしていて、

[ワーヴォルク]は既にもうそこまで迫っていて、

もうあと二メーターを切った所で、


俺は全力全開で左足を振り抜いた。


後に思えば俺はなんて残酷な事をしたのだろうと少し反省する。


それはまるで人間の足ではなく、一種の鈍器だった。硬く、そして刹那に振り抜かれたソレは、普通の人間の蹴るという行為ではなかったのかもしれない。


ただこの時は必死だったのだ。無我夢中だったのだ。こうしなければ俺は死んでいたのだ。


そう、だから仕方無かったのである。




『ズドオオオォォォォォォォー…………ンッッッッッ!!!!!!』


轟音。それはさながら大砲を一斉に発射した際に放たれる音で。その大砲が着弾し着地点のモノ全てを吹き飛ばした音で。


結局のところ、一体何があったのかと言うと、俺が蹴った狼モドキこと[ワーヴォルク]が吹き飛び、その蹴りの余波や、吹き飛んだ[ワーヴォルク]が地面を抉っていった、そんな音だったのだ。

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