《1-1》
今回も特にバトル無しです。
字数は約三千未満と前回の三分の一にも満たないですがキリの良い所で収めたかったのでこうなりました。
ライトノベルのページ換算すれば約五ページ足らずです。
片手間程度のページと物足りなさありありですが、容赦下さいスミマセン。
目が覚める。今度は疑問を抱かない。何せ俺は死んだが死んでいないのだから。
寝ていた。今度は浮かんでいない。しっかりと背を地面に付け寝ている。
魔法が支える世界、サム。その何処かの大草原に、俺は横になっていた。
朗らかな風が頬を撫でる。そういえば俺全然寝て無かったな。意識が途切れた事は二回(生と死の狭間に呼ばれた時と今先程サムに来た時)有ったが、寝てはいない。
なんてことを思うと、軽くうとうとしてしまう。
がしかし異世界に来て最初に睡眠というのも個性的だがどうかとも思えるので、睡眠は仕方無く諦めて、体を起こす。
その瞬間に、一瞬、けれど大きな変化を感じる。
「うおう……、凄いな」
大きな変化。それは身体にあった。
たった体を起こす。それだけのことで気付ける程の違い。
その違いとは何なのか。
それは体の軽さにあった。
ふわり。そんな表現が実に似合う動きで俺はその場に立ち上がったのだ。
もし仮に俺の体重が生前と変わらないのならば、65キロ近くとなる。その体が呆気もなく起き上がったのだ。
まるで重力が逆さになったかのように。
羽のように軽いとは正にこのことだろう。
「これが神の力の恩恵か?」
神の力は一つだけだが、神の力を持つ者は恐らく全員が全員体の造りは違うと考えている。
もしそうであったならば俺の体に変化が起きていてもおかしくはない。
成程、これは良い買い物だわ。内心笑声しつつも、周りを見渡す。
見渡し見えるのは地平線。完全なる草原により作られた地平線である。
ここが何処かは分からんが、食料もない、水すらもない俺だと、もって三日である。もし生前にラーメンを食べて居なければ二日が俺の余命だったかも知れない。
そう思うと食べた豚骨ラーメンには感謝である。
それはさておき。余命が二日だろうと三日だろうと急ぎ生活を成り立たせなければならない。
それにはまず衣食住の確認だ。
最初に簡単な衣。これに関しては大変嫌な話だが今着ている学生服をずっと着ていれば問題無い。
最低でも下着ぐらいは着替えたかったが、今はそんな贅沢を言ってられない。
作ろうにも手元にその素材が無いのだから……、とそこで有る考えが浮かぶ。
確かファーレは創造の神だと言っていた(正確には創造する力を持つ女神だが)。つまりその力を持つ神から力を貰った俺にもその力が有るのでは無かろうか。
ファーレは俺の力が何かは分からないと言っていたが、可能性としては無くはない。
思い付いたら即行動。俺は適当な下着類を頭に浮かべて出てこいと念じる。
…………しかし下着類はおろか布一枚すら出て来やしない。無論ある程度分かっていた結果だってわけだが。
とはいえまだ諦めるのは早い。神の力が有るのだから、希望はちょっとは有る。
こうして俺は衣食住の事を後回しにして、自分の力の調査へと入ったのだった。
調査から二時間。俺は何の収穫も無いまま最初の時と同じようにその場に寝ていた。
様々な実験をしてみたが、そのどれもが芳しくない結果だった。
強いて言うなら二時間の検証をした力は全てハズレだった、という成果は出たが、それも慰めの成果に過ぎない。
ぐー……っ。腹部から漏れ出る音。どうやら早くも空腹の症状が出て来たようだ。
そりゃそうか。実験とかで動き回ったりとかもしたし腹も空くか。
「あー、こんな事なら先に衣食住の方をどうにかすりゃ良かったかねー」
などと今更な後悔。……こんな事を言ってる暇が有ったら今からでも衣食住の対策をするか。
衣はもうどうでもいい。一ヶ月なら我慢する。
住に関しても最終的には危険覚悟でそこら辺で寝れば良い。取り敢えず襲われない事を前提としよう。
が食。おめーだけは無視出来ねぇ。
食わないと死ぬわけだからこれを放置は流石に無理な話だ。
そうなると今すぐどうにかすべきなのは衣食住の内の食となる。
果てさてどうしようかと頭を悩ませていると、不意に唸り声が聞こえた。
『グルルルルルゥ……ッ』
獰猛な唸り声。反射的に体を起こすと、その視界に生き物が映る。
青白い体毛。強靭そうな四肢。鋭い爪と牙。そして今にも襲いかかって来そうな目。
俺が知る生き物に酷似した生物が、目の前に居た。
『グルゥッ』
威嚇するかの様なその生物とは、狼だった。
しかし普通の俺の知る狼では全く無かった。
何故ならこの狼、名前をワーヴォルクと言うのだ。
……言うのだ、と断定的に言えたのにはそれはそれは深い訳がある。
何せこの狼――もとい狼モドキの頭上には、懇切丁寧に[ワーヴォルク]の文字が浮かんでいるのだから。
ワーヴォルク。要約するなら狼男だが男狼って所か。見た限りじゃ知能の欠片も無いならこの場合オスの狼って意味か。
何にせよ[ワーヴォルク]なんて他国言語を混ぜ合わさた狼なんざ、俺は聞いた事が無い。
もしかしたら居るのかも知れんが、動物博士でもない俺が知る由もない。
それにだ。こんなヨダレを垂らしてこちらを睨み今にも襲いかかるぞと自己表現満載なコイツを俺は狼とは認めない。
狼像はやはり気高き存在だ。それがこんな姿を見せるとは狼の名を汚して居る。
――――だから狩ろう。
意思は固まった。狼の名を汚す存在は許せない……なんて事はぶっちゃけた話どうでもいい。
言っちゃうけどどうでもいい。二の次どころか三でも四でも無くどうでもいい。
ならなぜこの狼を狩ろうなんつー結論に至ったのか。その答えは単純にして明快。
それが現在ぶち当たっている問題、食、これを解決させる為である。
狼の肉。詳細な所は分からないが、狼肉は食えると聞いた事が有る。事実かどうかなんてのは知らない。ただそれが話として広まっていたから耳にしたわけで有り、詰まるところ実際に誰か食べた人が広めたりとかしたんだろう。
アレだ、火のないところに煙は立たないと言うが、あんな感じだ。葉は無いが根はある噂だと信じたい。つか信じる。
目の前の[ワーヴォルク]がこの世界でどんな存在かは知らない。
ファンタジーにあるあるな魔物だとかモンスターだとかっつう立ち位置なのかも知れないし、もしかすると普通の鑑賞したりするためだけの動物なのかも知れない。
がそんなことは今俺には関係ない。
当たり前だ。こちとら命掛かってるんだ。
それにこの[ワーヴォルク]とやらも俺を襲おうとしているのだ。なのにむざむざと抵抗もせずに殺られてたまるか。
……一歩。[ワーヴォルク]がこちらに詰めてくる。
……[ワーヴォルク]がどんだけの身体能力を持っているのかは知らない。ただどう考えても故郷の狼と同等かそれ以上の身体能力を持ち得ているに違いない。
それに対しこちらは無手。猟銃どころかナイフの一つさえない。
がしかし忘れてもらっては困る。この俺、明蘭木夕眞は神の力を持っている……の……。
……やべぇ。忘れてた。たったの数分前までの事だったのにもう忘れてた。アホか、俺は鳥頭か。三歩歩いたら忘れるのか。くっそ。そういや、そういや俺――
――自分の力が何なのか分かってなかったんだった。
用語解説
[ワーヴォルク]
ワーとはwearをワーとし、男とします。良くワーウルフなんて名前を耳にしますよね。そのワーです。
ヴォルクはロシア語で狼の意。
これでワーヴォルク、ですね。
因みに狼料理は実際に有ります。
そもそも昔は食料として飼われてたりしてたらしいですからね(作者調査情報)。
とはいえ日本で狼を見付けたからと言って狩猟免許無しに狩っては駄目ですが。
そもそも今は狩猟免許あっても狩って良いかすらも分かりませんが。今のご時世ですし。
※更新ですが出来たらすぐ載せるノーストックスタイルで行きますので更新日予定は書きません