プロローグ
side:早乙女 練
そこは草木が鬱そうと生い茂る森の中、背中に大きな切り傷を負った少年が倒れていた。
「おい、大丈夫か?」
肩を叩いてやると僅かに身じろぎをした。まだ生きているようだ。
「今助けてやるからな、安心しろ」
エリクサーを取り出した俺を止めるように足をつかんできた。
「・・・せて」
いまにも途切れそうなか細い声がした
「どうした。なんて言ったんだ」
「もう、死なせて下さい」
「っ!?いや、だめだ。お前を死なせることは俺にはできない」
そういって無理矢理エリクサーを全身にかける。どうやら彼は意識を失ってしまったようだ。仕方ない、家に運ぶか
side:???
目が覚めたそこは知らない家のベッドの上だった。
「ここは・・・」
キィィと何かを開ける音がした。入ってきたのはやせ形の男だった。
「あぁ、目覚めたのか。体の具合はどうだ」
あ、そうだった。背中を切られたはず
「!?傷が、塞がってる。なんで!?」
「俺がエリクサーで治療したからな」
「・・・・・・なんで助けたの?」
「なんで死のうとするんだ?」
「・・・・・・生きててもなんもいいことないから」
「そんな顔すんな。理由はきかねぇから。なぁ俺と賭けをしないか?」
「賭け?」
「あぁそうだ。俺がお前を成人まで育ててやるよ。そん時、もう死にたくなくなってたら俺の勝ちだ」
「わかった」
「お前の名前は?」
「ない」
「じゃぁ、リンだ。おまえは今日からリンだ」
「リン・・・・・・、わかった」
こうして、僕のリンとしての新たな生活が始まった。