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【01】 始まりは追いかけっこから - ④


「いい加減止まりなさいっ!」

「そっちが追いかけるのやめればそれで終わるだろ!」

「いいえ! あなたが校則をきちんと守らなければ、終わった事にならないわ!」

「だから嫌だっつーの!」



 彼らの追いかけっこと論争の理由。

 それは、服装に関する校則違反であった。


 何も知らない第三者が聞けば、そんな些細な事、と笑うだろう。


 今までこの追いかけっこは、昼休み終了という名の時間切れ以外での終わり方をした事がない。どちらか片方が断念するという事は無かった。

 自由に生活したい彼と、完璧主義の風紀委員である彼女の自尊心が、諦めるという手段を許さない。


 諦めるのが嫌いな彼と自尊心の高い彼女にとって、これは大事なのだ。



「だああっ、そろそろ諦めろよ! ここまでして追いかける必要ねぇだろ!」



 校舎裏を走りながら、後ろから追いかけて来ている彼女に向かって彼は言う。



「貴方が諦めて! シャツ出しもボタンを二つ開ける事もズボンを緩く履く事も校則違反なのよ!?」

「んな事知るか! 俺の好きなようにさせろっての!」



 随分と走っているというのに、二人は息を切らす事なく喋っている。

 それどころか、半ば叫ぶようにしながら声を出して喋っていた。



「校則違反者はしっかり更生させなければ気が済まないの!」

「自己満足で俺を振り回すな!」

「将来困るわよ!? 高校はどうするの!」

「お前は俺の母親かァァァ!!」



 素早く突っ込む彼。しかし、走る速度は緩めない。そして追いかける彼女もまた、彼の突っ込みに対して真面目に返す。



「母親じゃなくて風紀委員よ、苗字か名前できっちりと呼びなさいこの校則違反者っ!」

「廊下走りまくってる奴に言われたかねーよ!」

「走らせているのは貴方だわ!」

「じゃあ走らなかったらいいだろ!」



 喋りながら走るのも疲れてきたのか、彼はぶっきらぼうに言う。

 しかし、彼女の反応は変わらない。



「受験生がそれじゃ駄目よ!」

「だからお前は俺の母親かよォォ!!」



 漫才にも似た掛け合い。

 その大きな声が周囲の生徒達にも聞こえていたのか、何人かの生徒が笑っている。

 しかし、二人には周囲の生徒など見えておらず、お構いなしだ。



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