しっかり魔術師と最強騎士の幼馴染みバディがだいたい殴って解決するシリーズ
部下が官舎にでかい鹿を連れてきて一緒に暮らすとか言い出した助けて
**これはおまけ小話です**
本編『世界が氷で滅びかけてるのに、幼馴染の騎士がとりあえず殴って解決しようとする助けて』読んでいるともっと楽しめます。
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ギリウスは騎士団長である。
団長とはいっても現行の団は細分化されている。単なる中間管理職に過ぎないが、それでも長である。
そこそこ偉い。
官舎は個室を使ってしかるべき立場だ。が、今のギリウスは相部屋だった。
それもこれも、とびきり問題児な部下のせいである。
そいつは他の団員と同じ部屋へぶちこんでおくのは心配で、一人にしておくのが不安なやつなのだ。だったら自分で見張るしかない。というしょうもない理由でギリウスが相部屋だ。
どういう風にとびきり問題児なのか。
そもそもギリウスの団には問題児が多い。そのなかでもとびきりなのだが、それはもう説明するまでもない。見てくれ。
一月ぶりに問題児が帰って来た。
まず一ヶ月も無断でどこへ行ってたという話なのだが、そこはもういい。もはや、こいつはいてもいなくても問題ない、というか、いると問題が起きるのでいてくれないほうが精神衛生上よろしいまである。
だから、無断欠勤は許す。というか、なんで帰ってきちゃったお前。
それはともかく、問題児の問題児たる所以。ごろうじろ。
問題児はばかでかい鹿を部屋に連れて入ってきて言った。
「今日から一緒に暮らす。エルクだ」
ゆうに三メートルは越えてるでかい鹿だ。広がる角もすごい。部屋狭い。
これはあれだ、ヘラジカ、いやエルクか。
真っ白な毛並みに金の虹彩を持つ、威圧感すげえ鹿。なんなの、これ。
鹿は賢いらしく、軽く頭を下げて挨拶してきた。やばい、とびきりの問題児よりでかい鹿のほうが話通じるのかもしれん。
とにかく、こういうわけの分からないことが頻繁に起きる。さすが、とびきりの問題児。
「おいこらユタ! 官舎はペット禁止だぞ!」
問題児は真顔で返してきた。
「団長にはこれがペットなんてかわいいものに見えるのか?」
見えない。断じて見えない。いや、とびきりの問題児の横にいると凶悪なペットに見えないこともないが。
「ペットじゃなきゃなんなんだよ」
「エルクだ」
ペットではなくエルクなら禁止されてないとでも思ってんのか、お前は。
「官舎は団員以外の人間……人間じゃない動物も連れ込み禁止だ!」
特に表情を変えず、問題児は首を傾げた。
「スティーブとロインが女連れ込んでるのはいいのか?」
スティーブもロインもうちの団員だ。
「それもダメに決まってんだろが! って、あいつらまた連れ込んでんのか!? いつやりやがった!!」
「今だ」
「今かよ!?!?」
頭が痛い。なんでうちの団の風紀はこんな終わってんだ。クソ問題児どもめが。
「どうすんだよ」
バレたら減俸処分待ったなしだ。監督責任でギリウスも減俸だ。
「叩き出してくるか?」
「なに」
「エルクを泊めていいなら叩き出してくる」
女子と鹿、どちらの方がヤバイかといえば、それは圧倒的に前者である。
「よし、行け、ユタ!」
軽い身のこなしでユタが出ていくのを見送って、大きなため息が出る。
ふと、視線を感じて顔をあげれば、でかい鹿がこちらを見ていた。
鹿の顔とか分からないが、なんだか笑っているように見える。
「それにしてもでかいな!」
これが暴れたら普通に怖い。
ひとまず大人しそうなのでいいが。恐る恐る近づいて、鼻先に手を伸ばす。
「フンっ」
「あ、すみません」
鼻息荒く振り払われた。反射で謝ってしまう。相手は鹿なのだが、大きさといい威圧感といい、どうも下手に出てしまう。
鹿はふんすふんすと匂いを嗅ぎながら寝台へ行き、我が物顔でどすんと身を横たえた。
大きな体を器用に丸め、角をヘッドボードに乗っけて落ち着く。
総無視されたようだが、でもちゃんとユタの寝台を選んでいるし、実は分かってるんじゃないかと思わされる。
すーすーという寝息。遠くからは怒号と女の子の悲鳴。なにかの破砕音。
「……知らね」
ギリウスは考えるのをやめた。
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