第27話:正妻の余裕と「一夫多妻」宣言! そして……新大陸の美食地帯へ
昨夜の「激しすぎるやりくり」から一夜明け。
ようやくお昼過ぎにリビングへ這い出してきたユカリは、キッチンで鼻歌混じりに昼食を作る直人の背中と、その隣で甲斐甲斐しく(しかしどこか腰つきがおぼつかない様子で)手伝うナビルを眺めていた。
ユカリは、ふっと穏やかな、そしてどこか神々しささえ感じさせる笑みを浮かべた。
「……決めたわ。ナビルちゃん」
「……っ。ユカリ様、昨夜の敗北を認めろと仰るのですか? 私の論理計算では、あと数回の試行錯誤で……」
「いいえ。もういいのよ」
ユカリはナビルに歩み寄り、その白く瑞々しいエルフの肩を優しく抱き寄せた。
「ナビルちゃん、あなたは私の大切な『妹分』。認めちゃあげるわ。……この田中家の、**『一夫多妻』**をね!」
田中家、新秩序の誕生
「ええっ!? ユカリ、いいのか!?」
俺は思わず包丁を止めて振り返った。あんなに独占欲を「やりくり」していたユカリが、まさかの公認宣言。
「だって、直人の愛は一人じゃ受け止めきれないくらい大きいんだもの! それに、ナビルちゃんがいれば、直人がもっと楽になれるし、私ももっと幸せになれる……。そう確信したのよ。これぞ、究極の『家庭内やりくり』でしょ?」
「ユカリ様……。……計算外です。まさか『寛大さ』というパラメーターで、私のロジックを上書きされるとは。……ですが、受理します。お姉様、これからは妹として、直人様の『深部』を共に管理させていただきます」
ナビルが、どこか誇らしげに、そして嬉しそうにユカリと手を繋ぐ。
『ナビルより報告。田中家の法的(家庭内)ステータスが更新されました。称号【正妻:ユカリ】に加え、新称号【管理妻(第二夫人):ナビル】が登録されました。……直人様、これからは遠慮はいりません。……存分に、私たちを「さばき」「満たして」ください』
「……なんか、さらに責任が重くなった気がするが。まあ、仲良くなってくれたならいいか」
セバスが満足げに頷き、デス・アビスは「……また面倒な住人が増えたものだ(と言いつつ、しっかり二人分のハーブティーを用意する)」と、田中家の絆はより強固なものになった。
新大陸の驚愕:美食の谷
そんな賑やかな一家を乗せた浮遊島が、ついに目的地に到着した。
雲海を抜けた先に広がるのは、大地そのものが黄金色に輝く、新大陸随一の食の宝庫**『美食の谷:グルメ・キャニオン』**。
「見て、直人! 岩が……岩が美味しそうな匂いを発してるわ!」
ユカリの言う通り、そこには奇妙な岩があちこちに転がっていた。
赤々と熱を帯びたその岩に、ナビルが解析の光を当てる。
『ナビルより解説。あれは古代の調理器具が化石化したもの、通称【自動オーブン岩】です。特定の魔力波長に反応し、その上に食材を置くだけで、芯まで完璧に火を通す「究極の調理場」となっています』
「……マジか。俺の火加減のやりくりが、岩一つで解決するっていうのか?」
直人はさっそく、谷に自生していた「霜降りマンモス茸」と「宝石トマト」をさばき、その岩の上に乗せてみた。
――ジューッ!!
瞬間、谷全体に暴力的なまでに美味そうな香りが爆発した。
「すごい……! 遠赤外線どころじゃない、魔力による分子レベルの加熱だ! ナビル、これ、屋敷のキッチンのコンロと入れ替えよう!」
「了解です、直人様。……お姉様、一緒に食材を『収穫』しに行きましょう。今夜は、田中家・新体制の『お披露目パーティー』ですから!」
「ええ! ナビルちゃん、競争よ!」
二人の女神が、楽しそうに新大陸の原野を駆けていく。
直人はその背中を眺めながら、「一夫多妻か……俺の体力、どこまで持つかな」と、少しだけ嬉しい悲鳴を上げた。




