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貧乏辺境貴族令嬢の契約結婚から始まる事件簿  作者: マモシ
第一章 見えない脅威

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卓上の盤

王と王子は部屋から出ていき、私たちはその場で待つように厳命される。

その間に、頭に出てくる違和感は、やはりこの出来過ぎた状況だった。


「リアリス、偶然ではないのか?……」

「……まだ何の確証もありませんが、現在の状況は、整い過ぎています。まるで誰かに作られたように」

「作られた状況か……」


ヴァン様は少し考えるように腕を組む。


「何か心当たりが?」

「……少しな」


この感じ、まだ確証はないのだろう。

そうしていると、王と王子が帰ってきた。


「待たせたな」

「陛下、王妃様の容体は?」

「ああ、それなのだがな……」

「ただの疲労ですよ」


王の言葉を遮り王子が言う。


「疲労ですか……」

「うむ、医者が言うには、最近の行き過ぎた警戒のせいで、疲労がたまっていたのだそうだ」


まさに、今回、裏で手を引いている人間が喜びそうなことだが、王妃様を疲労で倒れさせる目的はなに?


「王子、あなたですか?」

「え?」


ヴァン様は王子を見据えて言う。

その手微かに震えている。

それは怒りなのか、恐れなのか。


「ヴァン公爵、なぜ私が、そのようなことを?」

「理由は分かりませんが、あなたが得意そうなことです。盤上の駒を動かし、整理し、合理的に目的を果たす。まさにあなたの手口だ」

「ほう?幼馴染を疑いますか?」


まさか二人が幼馴染とは。

だが、確かに年齢は近そうだし、同じ高位の貴族。

交友があっても不思議ではないのかもしれない。


「幼馴染だからこそですよ?」

「と言うと?」

「あなたはいつも周りのことなどお構いなしで、目的を果たすためには多少の無茶も要求する。そんなあなただ、今回の件も裏で糸を引いていても不思議ではない」

「ふむ。だが、それは単なる憶測だ」

「……」


ヴァン様もそれは分かっていたのだろう。

肯定も否定もしない。

その代わり強く王子を睨んでいた。


「そうですか……」


ただ、そう言ってヴァン様は黙ってしまう。

私はヴァン様の震えている手を軽く握る。

ヴァン様はこちらを向き軽く頷く。

ここからは私の仕事だ。


「まずは、落ち着きましょう。先に首謀者の狙いをはっきりさせれば答えもおのずと出てきます」

「うむ、そうじゃな」


私は一息入れて話し出す。


「疑問なのですが、そもそも今回の狙いは本当に王妃様だったのでしょうか?」

「どういう事じゃ?」

「それはですね、狙いが王妃様なら、もう少しやりようがあったはずですし、何より過労がたたって倒れても、王妃様には結果大きなダメージにはなりません」

「確かにのう……」

「なので、今回、王妃様が倒れたこと自体は、偶然または副産物の可能性があります。そして本命は別にあるのかもしれません」


今回の件は決して直接的ではなかった。

まるで、手加減をしているみたいな調整だ。

すべてがそう思わせる。


「本命か……」

「はい、おそらく王妃様に警戒させることは、あくまで目的達成のために必要だったため。なので、本命は王妃様がかかわる何かと考えるのが自然かと思います」

「……関係すること…」


陛下は手を顎髭に持っていき触る。


「何か心当たりはありませんか?」

「うむ……実は今回の祝宴に、王妃も参加予定だったのじゃが、もし参加していたなら、そこで祝辞を述べてもらう予定だったのじゃ」

「祝辞とは?」

「うむ。今後の公爵家のますますの発展と、今後も王家との良い関係が続けられるようにという、内容の物じゃ」


なるほど……確信一つ。


「狙いが分かりました」

「ほう?」


王子は面白そうな様子だった。

まさに余裕と言った表情だ。

それもそのはずだ。

なにせ、悪意はないのだから。


「首謀者の狙いは……あぶり出しです」

「あぶり出しとな?」

「はい、首謀者は王家と公爵家の勢力が、強まるのを嫌がっている貴族をあぶりだしたかったのです」

「リアリスそれは……」

「はい、王妃様の本来予定されていた祝辞の内容は、王家と公爵家の関係強化に繋がっていたでしょう。それをなくすことで、反応を見る、また油断させることが、目的なのです」


そう、首謀者からしたら、王妃が倒れるのは想定内。もし倒れれば余計に貴族は反応する。それならそれでよし。倒れなくても参加さえしてくれなければいい。

つまりどちらに転んでもよかったのだ。


「だが、其方の言う事が本当なら、王宮に内通者がいることになるな」

「はい、祝辞の内容を知られていることを考えると、内通者がいる可能性は高いです。今回はその内通者の親元をあぶりだすためでもあったわけです」


私は王子様の目を静かに見つめて言う。


「それが、僕の仕業だと?」

「ええ、あなた以外は可能性が極端に低い」

「というと?」


王子様は面白そうにしながら聞いてくる。

まるで面白いおもちゃを見つけたような目だ。


「まず、他の貴族などは利がない。そして危険だ」

「危険?なぜだい?」

「考えればわかりますが、王妃の暗殺の噂など、流そうものなら国家反逆罪に問われてもおかしくない。リスクが高すぎます。そしてこれで得するのは王家か公爵家。なら答えはおのずと出ます」

「王が自演している可能性は?」

「それなら、わざわざ愛する奥様を倒れるやり方はなさりません。それに、わざわざ私に話すこともありません」

「そうか……ふふふ」


よほど面白いのか笑う王子。

その様子は私にはひどく歪んで見えた。


「ビンセント…誠か?」


王は静かにだが強く怒っていた。


「ええ、私です」

「なぜ!?そんなやり方を!!」

「父上、あなたは甘すぎます。あなたのやり方では非効率そして間に合わない」

「間に合わない?」

「ええ、有事の際には後手に回る。それでは遅いのです」


彼の目は真剣そのもの、そして国を思いやるその目も、本物に見えた。


「ビンセント…」


王の目はひどく悲しく見えた。

それは、一父親としての目だ。


「私は、この国を守りたのです」

「そうか……」


誰も否定はしない。

だが、肯定もさせはしない。


「綺麗な舞台ですね………私は嫌いですが」

「ふむ。そうか……」


王子は口元に手をやり少し笑っていた。


「舞台裏は汚く表面上だけは綺麗。まるでご自身を映し出しているかのようですね?」

「な!?」


ここで初めて王子の余裕の表情は消える。

ただ、すぐに驚きの表情は消えた。

そうして、好奇心の旺盛な子供の目が出てきた。


「其方は面白いな?」

「そうですか」


私はここぞとばかりにそっぽ向く。


「ふふ、可愛らしいものだな?」

そういって私の頬を触ろうとしてくる。

その一歩手前でヴァン様が王子の手を止める。


「戯れもいい加減にしろ。ビンセント」

「おーこわい、こわい」


彼の目は本気そのものだった。

王子相手に殺気全開だ。

どうも私に触れられるのはいやらしい。

なんとなくだが、可愛いものだと思った。


「すまぬな。奥方」

「いえ、旦那様が守ってくれましたので」

「ふふん!」


なんというどや顔だ。

はあ、先が思いやられる。


そうして無事に王からの頼み事はすんだのであった。


その夜、王城。


「急がねばな…」

王子は一枚の報告書を見てそうつぶやく。

報告書には隣国の名前が滲んでいた。。

















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