殺す意味を探す
誕生会から数週間が経った頃各地で異変は起こりだした。
「貴族が謎の武器により死亡……」
椅子に座り、私は手に持った新聞を眺める。
相次いで貴族が謎の狙撃により死亡。何名かは生き残る。
記事は大々的に取り上げられていた。
「あいつの仕業だな……」
「ええ、そのようですね」
「だが、なぜここにきてこんな直接的な方法を……」
確かに彼のやり方は今まで殺しは少なかった。
「やはり、もうすぐ決着がつくと言う事か……」
私は彼の告げた言葉を思い出す。
「もう逃げない」彼はそういった。
「着々と準備は整ってきていると言う事ですね」
「ああ、だが、いつ仕掛けてくるのやら」
腕を組み険しい表情をする旦那様。
「……悩み過ぎは彼の術中にはまるようなものですよ?」
「そうだな……」
それにまだ来ないはずだ。
この記事を見る限りは。
「おそらくですが、彼は実験をしているはずです」
「実験?」
「はい。謎の狙撃。つまり新兵器によるもの。ですが、あれは未完成」
「うん?……そう考えると不思議だな?何であそこまで不確実な方法を嫌ったあいつがこんな方法を?」
「そこが、鍵です」
私はコーヒーカップの縁をなぞる。
「彼は不確かな方法は取らない。ならなぜ今回は試作品を使っているのか」
「手段がなくなったからか?」
「いえ、そうではありません。ヴァン様これは新兵器完成の為の実験なのですよ」
「つまり、試作品の調整のための事件だと言うのか?」
「ええ、彼は確実を好みます。実際に人を殺す方がより完成度は高まるはずです」
そう、彼は「逃げない」と言った。
それは覚悟が決まっていることの裏返しだったのだろう。
「となると準備はまだ済んでいないと?」
「そうだとは、思いますが実際のところは不明ですね」
普通に考えればそうそう簡単に調整が終わるとは思えない。だが彼のことだ。
油断はできない。
「そもそも、なぜあの兵器の完成を急ぐ?」
ヴァン様の疑問はもっともだ。
私もそれはよくわからなかった。
今までの彼を考えるなら人殺しなどは極力避けてきていた。
それが、ここまで露骨になるとは思わなかった。
「まさか、本当に抹殺を力づくで成功させようとしているのか?」
「……私はそうは思いません」
「なぜだ?」
「彼ならそんな力任せでは変わらないことぐらいわかっているはずです。新兵器はおそらく脅し、または交渉の材料にしたいのだと思っています」
「確かにあいつならそちらを選ぶな……だが、なぜ急に?」
そう、なぜここにきて急に完成を急いでいるの?
もし初めから急いでいたのなら、やっていたはずだ。
「急ぐ理由があるのかもしれません……」
「そう考えるのが普通だが……」
「理由が分かりませんね」
「ああ、全く不明だ」
私はもう一度新聞に目を落とす。
そこにはもう一つの大きな記事が目に映る。
西の大国ハウゼン近日中に軍事演習予定。
ハウゼン。この国は我が国に負けず劣らずの大国で基本的に平和主義で自分たちから戦争を起こしたことなどない。
だが、最近王が変わってからは不審な動きが多い。今まで手を抜いていた軍事開発に一層力を入れている。
「どこも物騒ですね」
「ああ、こうも立て続けて物騒だと恐ろしくなるな」
「そう……ですね…」
私は旦那様が気になった。
続けてこうも偶然起こるのだろうか?
どうも、今回の出来事は引っかかる。
「新兵器の完成。軍事演習……」
「うん?どうした?リアリス」
「いえ、何かこう……おかしいような気がして」
そうおかしいのだ。
軍事演習が近日中にあっていま王都では謎の狙撃事件。
そして、それは新兵器の完成。そして完成精度を高めるため実験。
それが示すものは……
「ヴァン様…」
私は手に持っていた新聞紙を落とす。
「どうした!?リアリス!?」
「彼はとんでもない協力者を持っているかもしれません」
「なに?隣国の周辺国だけではないのか?」
「はい、それより大きく、危険な存在、西の大国ハウゼンです」
「な!?」
ヴァン様は表情が固まっていた。
「どういうつながりなのだ!?」
「おそらくですが、彼は軍事面で協力しているのかと」
「軍事面……まさか新兵器の完成を急いでいるのは!?」
「ええ、ハウゼンの軍事演習に間に合わすためだと思われます」
だが、おかしい。
彼は使えるものは使うはずだが……しかし……
「つまり、今急いでいるのはあいつの意思ではないと?」
「今の段階で考えるならそうですが……」
「何か気になるのか?」
「はい。彼は確かに方法は選びません。ですが、人殺しだけは慎重でした。その彼がそんな理由で素直に従って人殺しを許容するでしょうか?」
「……そのとおりだな」
彼の性格や人間性を考えるならそんな無駄な殺しはしないはず。
つまりそれほど急いで作るのには意味があるはず。
だが、現段階ではそれは不明だ。
「旦那様、奥様」
「どうしたフラン?」
「これがポストに」
「これは……」
それは西の大国ハウゼンからの手紙だった。
「内容は何と?」
「どうも、俺達は招待されたようだな。新王主催のパーティーに」
旦那様が手紙を手渡してくる。
そうして、渡された手紙は妙に冷たく感じた。
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