表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貧乏辺境貴族令嬢の契約結婚から始まる事件簿  作者: 雨夜 フレ
第二章 揺れる信念

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/40

沈む

「それで、逃げられたと?」

「はい、すみません…」


私は領主に事のいきさつを話していた。


「いえ、謝罪はいりません。結果、この城内から奴らを追い出すことに成功したわけですしね」


本当に気にしていないのか、彼は窓の外を見ながら軽く告げる。

さらに恨まれることも覚悟したのだが……


「……あなたは公爵家を恨んでいないのですか?」


領主は少し笑みを浮かべてコーヒーを一口飲んで言う。


「……私の家族は当時の食料で助かった少ない領民の一人です。だから恨むなど、ありませんよ」


彼は裏表のない本当に人懐っこい笑みを浮かべた。

これが彼の本来の姿かもしれない。

ヴァン様の父上の優しさは意味があったのだ。

それが、嬉しかった。


「それであなた達は今後どうするつもりですか?」

「……おそらくですが、彼は何か大きく動くはずです。そのために準備期間に入ったとみていいでしょう。なので、しばらくは何もないはずだと思います」


彼は、「逃げない」と言った。

次で答えを出すつもりだ。

おそらく大きな事態になるだろう。

準備期間は今回のことで攻められた結果得られなかったはずだ。

しばらくは動けない。


「と、なるとしばらくは平和か?」

「ええ、しばらくは平和でしょうね」

「なんとか阻止は出来ないのですか?」

「……それは、彼次第ですね」


今まで彼は何かしらのヒントをくれていた。

そう考えると、またヒントを出してきても不思議ではない。


「なるほど、どちらにしても相手次第だと?」

「はい、今の状態では一切ヒントはありませんから」

「はあ、いつもこれだな?」


そう、いつも彼の掌の上だ。

何か出し抜けるものがあればいいのだが……


「た、大変です!!」

「どうした?」


使用人が慌てて部屋に入ってきた。

その様子は、まさに一刻を争う様子だった。


「城下町で連続で火事が起きています!!」

「!?……急いで消火活動に当たるのです!」

「私たちも向かいます!」

「……彼だと言うのですか?」

「いえ、分かりません……ただ、タイミングが出来過ぎてます」

「わかりました」


私たちは急いで火事も現場に向かった。

複数の建物が燃えており火が上がっている。


「リアリス、どうする!?」

「ヴァン様、これは確実に人為的なものなはず!犯人を捜しましょう!」

「だが、どうやって!?」


今は一刻を争う。

私は思考を加速させて考える。

視界から得られる情報を整理する。

建物はすべて人気のない大きな建物ばかり。

どれも、よく燃える木製。


「ヴァン様これは陽動なのかもしれません」

「どういうことだ?」

「燃えている物は大きく燃えやすい木製。そして人気がないものばかり。これを考えるに燃やすことは重要じゃない」

「騒ぎが重要なのか!?」

「はい!ですので、今回の本当の狙いは……」


私は領主のいる城の方向を見る。


「な!?城か!」

「はい、急ぎましょう!」


私はヴァン様と馬に乗り急いで城に戻る。

城に着くとそこはまだオレンジに包まれていなかった。


「何とか間に合いましたね?」

「ああ、だが、どこから放火する気だ?」


燃えやすく気付かれにくい場所。


「犯人は現場に戻ると言いますから」

「ああ、なるほどな」


私は微笑み、ヴァン様もにやりと笑う。


そうして、私たちは先回りをして待っていた。


ガコン。


秘密の通路が開く音がする。

そこには見たことのある影が一つ。


「やはりあなたでしたか?」

「!?」


ランプの光が彼を照らし出す。


「執事さん」

「ふ、なぜお分かりに?」

「あまりにも目的が不明な火事でしたからね?」

「同じ手は通用しないですか……」


そう、前も同じ手で陽動を食らった。

今度は通じない。


「さあ、大人しくしてもらおうか?」


ヴァン様は剣を抜き告げる。


「ふ、神は隠すものですよ?」

「そうらしいが、お前は神ではないだろ?」

「そう、ですね!」


男が一気に近寄り剣が交わる。

閃光が闇にちり、まるで妖精が飛んでいるようだ。


「ふっ!」


男の突きがヴァン様の喉元に届きそうになるが、間一髪でかわす。

そしてヴァン様は同じく突きでカウンターを入れる。

見事にそれは執事の腕をかすめる。


「くっ!?」


男の手から剣が落ちる。


「ここまでですか……」

「ああ、ここまでだ」


ヴァン様は剣を執事に突きつける。


「ふ、あの方の言う通りですね……」

「彼は分かっていたのですか?この展開を?」

「ええ、あの方は言っておりました「彼女ならすぐに気づく。同じ手は通用しないだろう」と」

「では、なぜこのようなことを?」

「ふ、私はメッセンジャーにすぎませんよ」

「メッセンジャーですか…」

「あの方はこういっておりました。「月は沈み。新たに昇る」と」

「月は沈み。新たに昇る……」


彼らしくない詩的な表現。

だが、それがとても恐ろしくて、私は鼓動が強く脈打つのを感じていた。

まるで、体温は熱く、煮え切っているようだった。


そうして、執事は城の兵士に捕ま得られ、連行されていく。

ただ、一言残して。


「これで月は……ふふ」


その言葉に不穏を覚える。

月は沈み。新たに昇る

だが、窓から見える月は雲に隠れて見えなかった。

だか、月は見えなくても確かにそこにある。

なら、夜は恐くない。


読んでいただき、ありがとうございます。

気に入っていただけたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ