狼煙
今日も二本立てです。
よろしくお願いします!
新兵器の公表が済み、私とヴァン様は王子の提案で王城に一泊することになった。
「これは、なんですか……?」
「見て分かるだろ?」
「なにも分かりませんが?」
私の目の前には大きなベッドが一つだけあった。
「部屋が同じなのはわかりました。ただ、何でベットまで一緒なんですか?」
「そっちらのほうが怪しまれないだろ?」
「はあ」
私は諦めてベッドに入る。
「それではヴァン様はそちらでお願いします」
反対側をさす。
「今日は熊は置かないのか?」
「そんなものはありませんから」
そう言って、ベッドに入ってくるヴァン様。
「何か近くありませんか?」
何か妙な熱気が近い気がするし、足が当たっているような気がした。
「気のせいだ」
「いや、近いですよ?」
ヴァン様はじりじりと近づいてきていた。
「ふふ、熊さえなければ」
「ヴァン様、契約破棄されたいのですか?」
「……ずるいぞ?」
「失礼な。戦略的な方法です」
それに負けてヴァン様は少し離れていく。
そうして少し静かに部屋はなる。
「ヴァン様、彼はいったい何を考えているのでしょうか……」
「……俺達が考えて分かる話ではないよ」
「ですが、考えをやめることはできません」
「リアリスらしいな……」
今回の件もやけに抽象的と言うか目的が不明だった。
噂を流して、暴動を起こしたかった。
それが目的にしては、あまりに彼にしては不確実なやり方だ。
もしかしてこれは、布石なのかもしれない。
だけど、何の布石?
彼ほどの人物だ、てきとうな意味のないことはやらない。
そもそも、今回の噂は新兵器を秘匿しているという内容だった。
そして、それは大きな噂で上書きに成功。
無事解決したが、実際にどうにかしたわけではない。
「……まさか!?」
私はベッドから起き上がる。
「どうしたリアリス?」
「ヴァン様、私たちは勘違いをしていたのかもしれません」
「どういうことだ?」
「彼の本当の目的は……」
その瞬間、大きな爆発音が王城内にした。
「これは!?」
「ヴァン様彼です!」
私たちはすぐに着替えて部屋を出る。
廊下は兵士が走り回っていた。
「どうかしたか?」
「公爵様!それが、新兵器を保管していた倉庫の壁が相手の兵器によって破壊されました」
兵士は慌てて走り出していった。
ヴァン様もそちらに向かおうとしていた。
「ヴァン様」
私はヴァン様の袖を引く。
「おそらくそちらは誘導です」
「誘導?」
「はい、敵は二重に情報を敷きそちらに意識を向けるようにしています」
「では、なにが目的なのだ?」
「こちらです」
そうして私たちは走ってある場所に向かう。
その部屋のドアはすでに開いていた。
「陛下無事ですか!?」
「其方たち!」
そこには、王と王妃を囲うように賊がいた。
王は王妃をかばうように前に出ていた。
「貴様ら!」
ヴァン様が剣を抜き近づく。
「おっと、それ以上はやめときな?」
賊の一人がクロスボウを王に向ける。
「くっ!?」
それを見て、ヴァン様は少し後ろに下がる。
「よし、いいぞ」
男は微笑む。
「さて、王、そして王妃、あなた達にはたくさん聞きたいことがある」
「何が聞きたいのじゃ?」
王は賊に目線をそらさず聞く。
「なぜ、あの武器のことをちゃんと公表しない。少なくても、本体の構造は分かっているのだろう?」
「……」
王は肯定も否定もしない。
「あなた達はあれがどんなに危険な代物か分かっていないのですか?」
代わりに王妃が答える。
その目には問い詰めるような目線があった。
「は、分かっているさ。それがどれだけ貴族連中が恐れるものかはな?」
「そういう意味では!?」
「そういう事なんだろ!?あんたたちは民衆からの反撃を恐れている」
王妃はその迫力に黙る。
だが、静かに王は言う。
「確かに、怖いものではある」
「ふ、認めたな?」
「ああ、だが、それ以上にあの兵器は戦場を拡大させ戦争を加熱、加速させる。とても危険なものじゃ」
「……そんな建前を信じると?」
「信じる。信じないは自由じゃか、それもわしらの本心じゃよ」
賊は手を強く握り叫ぶ。
「なら!あんたたちは一生俺らに国の行く末に関わるなと言うのか!」
「少なくても、そんな野蛮な方法を取るようでは、国の行く末に関わらせられないのう」
「くっ!?」
王はただ淡々と続ける。
「確かにいずれは、民に統治にかかわってほしいと思っておる」
「口だけではなんとでも……」
「わしは凡才じゃ」
「……何が言いたい?」
「わしは其方と変わらない。いや、其方の方が王の器かもしれぬと言う事じゃ」
男は王らしからぬ発言に固まっていた。
「お、王だろあんた、何言ってるんだ!?」
「ほほ、事実じゃよ」
王は髭を触りながら笑っている。
「わしはたまたま、王になった一般人にすぎぬ。だから分かるのじゃ、血筋など王には必要ないとな」
「で、では、なぜ、王位を市民に譲らないのだ!?」
「まだ育っておらぬからじゃよ」
「育ってない?」
「うむ、王は凡才でもなれる、だが、凡才でもなるには修羅の道じゃ、人々が王になるにはそれなりの教育。そしてシステム、そういった土台が必要じゃ。今はそれが未熟、時期尚早といいわけじゃ」
男たちの持っているクロスボウは少し下がりその目には戸惑いが宿っていた。
それを王は見逃さない。
「今なら、其方たちの罪、そして家族までは罪が及ばないようにしよう」
「……本当か?」
「ああ、約束する」
王の目には一つの揺らぎもなかった。
まさに王たる器の大きさが見えた。
「……分かった」
男たちはクロスボウを床に落とす。
王は王だったのだ。
何が、凡才だろうか。
その完成された凡才はまさに王だ。
だが、この時私は彼のその執念を忘れていた。
一筋の閃光は王の体を貫く。
「あなた!?」
王妃が叫ぶ。
血が、赤色が宙を舞う。
それは開戦の狼煙だ。
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