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貧乏辺境貴族令嬢の契約結婚から始まる事件簿  作者: マモシ
第一章 見えない脅威

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母の面影

「お前は都合がいい。権力もなく、後ろ盾もない。まして利用価値もない」

「……つまり?」

「ふ、分かっているだろう?」


つまり、都合よく使える駒であり、内偵にはぴったりと言うわけだ。


「はあ、なんて日なの…」

「俺のような男と結婚できるのは幸せだろ?」

「……」

「なぜ、なにも言わない?」

「嬉しくないからです」

「は?俺のような美男で優秀な男いないぞ?」

「私そういうのは間に合っているので」

「……ジュエル!!」

「は!」


物陰からすっと、これまたイケメンな男性が出てくる。

ただ少しやつれているような気がするが気のせいだろうか?


「この女正気か?」

「はい。朝まで帳簿と格闘していた以外は正常です」


何でそれを知ってるんですか!?


「私、剣以外は得意なので」

「……」


公爵様以上にこの人が一番怖いかもしれない。


「旦那様。リアリス様の家は庶民との結婚を代々しています。価値観が違うのかもしれません」

「おお。なるほどな」


そこまで知られているのか。

確かにうちの結婚での必須項目は幸せになれるか、できるかだ。

だから、イケメンなどには興味はない。

偶然、母さんは美女だったが、私は父と足して割って、結局普通だ。

余計興味がないわけである。


「ですが、その観察力。とてもティア様に似ておられるかと」

「ああ、それは俺も思っていた」

「あの、母にあったことがあるのですか?」

「ああ、俺が小さなころに一度きりだがな」


彼の目には懐かしむかのような優しい目があった。


「彼女には恩がある」

「恩ですか?」

「ああ、彼女に家は助けられた。さっき言った過去の事件だ。お前は聞いていないのか?」

「母はそう言ったことは言わない人ですから」


母はたくさんの相談をされていた。

母の頭を頼りに助けを求める声は多かった。

だが、相談内容も、結果も、母は一切教えてはくれなかった。

「聞いても面白くない」ただそれしか言わなかった。


「そうか……彼女がいなければ、今頃我が家は没落していた」


彼はコーヒーを一口飲み言う。


「それを見事解決。うちは没落を免れたというわけだ」

「前の事件の犯人は?」

「ああ、盗賊が仕組んでいたんだ。うちに擦り付けるためにね」


なるほど。


「ちなみに配送ルートは今でも同じですか?」

「ああ、うちの領地をでて、隣の領地を抜けていくルートだ」

「隣の領地は必ず通っているのですか?」

「そうだ」

「今回取引していたものは?」

「ああ、奪われていたらしい」


なるほど。


「ちなみに中身はなんだったのですか?」

「ああ、魚、果物だ。どれも俺の父が好きだったものだ」

「料金は後払いでしたか?」

「いや、信用しているところだったから前払いでお願いしてる」


確信一つ。


「おそらく今回の話は全て商人の自作自演です」

「……証拠は?」


彼の目は鋭くなる。


「おかしくないですか?商人は襲われて死亡。荷物は奪われる。ですが、内容物は果物や魚。どれも鮮度が命です。そんなもの盗んでも近場では足がつくので売れない」

「そうだな……」

「だから、売るには遠くに持っていくしかない。だけど、それはできないもの。なら盗む価値はない。なのに盗むために商人を殺す。どれもおかしい」


あまりにもリスクが高すぎる。意味もない。


「だから自作だと?」

「ええ、商人はお金は貰っている。あとは商人を死んだように見せかければお金だけもらえる」

「だが、うちの家でも死体は確認しているんだぞ?」

「……死体の損傷具合は?」

「たしか、身元が分からないくらいひどい状態だったそうだ」


予想通りだ。


「なら簡単です。死体を用意しておく。あとはそれを置いておくだけでいい。体格など似ている死体なら身元は完全に不明と言うわけです」


二人は言葉をなくして固まっていた。

それは時間が止まったように音がなくなる。


「それで最後。荷物の行方です」

「積んでなかったのではないか?」

「それも考えました。ですけど、それは怪しまれるし、なるべく避けたい。ならどうするか」

「売るしかないですね」

「そうです」


もし荷物をそのまま置いておけば腐って無駄になってしまう。


「だが、どこにだ?足がつくぞ?」

「簡単ですよ。隣の領主です」


空気は重く強くなる。


「……それは確信か?」

「いえ、ここからは仮定です」

「なら、話すな」


彼の目は真剣だ。

それに答えるように私も意思を込めて言う。


「確かに仮定です。ですが、もしこれが本当なら、それはこれからも別の形で起こります。過去のように」

「!?」


予想外だったのか、二人とも驚いている。


「過去の事件もそうだって言うのか?」

「はい、その可能性は高いです」

「でも、ティア殿はそんなこと一言も……」

「おそらく母は敵を作りたくなかったんだと思います」

「どういうことだ?」


私はコーヒカップの縁を軽くなぞる。


「母はどこまでも家族思いの人でした。だから私たちに危害が及ぶ可能性を考えて言わなかったんだと思います」

「……そうか」


その場には時計の針の音だけが響く。

無機質な空間のように感じる時間だった。


「見事だな。ティア殿がいるみたいだった」

「はい、見事な推理でした」

「はあ、これでいいですか?」

「……欲しい」


彼はボソッとつぶやく。


「は?何言ってるんですか?」

「欲しいと言ったんだ」

「な、なにをですか?」


嫌な予感がした。


「お前がだ」


私はその言葉に口元を引くつかせる。


「お、お戯れを、こんな小娘一人に何を……」

「ふ、お前みたいな小娘がいるなら、連れてきてほしいものだ」


彼はニヤッと笑い言う。


「決まりだ。お前は俺、ヴァン・リイ・フレイの妻だ」

「ちょっと、困ります!?公爵様!」

「お前にとっても悪い話ではないぞ?」

「というと?」

「お前の家に援助金をやろう。しかも無償だ」

「!?」


それは喉から手が出るほど欲しいものだ。

家は母さんが死んでから内政は死んでおり、何とかしている状況だ。

そこにお金があれば多少立て直しができる。


「どうだ?」

「……お願いします」


私は彼の契約に乗らざる得なかった。


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