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貧乏辺境貴族令嬢の契約結婚から始まる事件簿  作者: マモシ
第二章 揺れる信念

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折れぬ決意

「最近、村に貴族が来てのう。その貴族が来てから不正の噂が流れだし、若い連中があんなことに」

「村に貴族が来ていたのですか?」

「ああ、どうも道に迷ったらしく馬車で村の近くを彷徨っていたのを村の連中が連れてきたのじゃ」


こんな辺境にうろつく貴族?

あまりに怪しすぎる。


「それは、本当に貴族でしたか?」

「さあ、わしらには貴族の判別は不可能だからのう」

「つまり見た目が貴族だったと?」

「ああ、高級な生地の服をきていたのう」


仮定が一つ。


「それは貴族ではないかもしれません」

「ほ、ほんとですかの!?」

「はい、庶民には貴族の判別は不可能。なら何で判別するか……服なり高価な物なりを見せることくらいでしょう。ですが、本物の貴族なら刻印を見せて証明するはずですからそれは偽物の可能性が高いです」


一般的に貴族は刻印を持ち歩くなり馬車に彫るなりする。

それが確認出来なかった。

つまり偽物がわざと迷い込んでいたことになる。


「で、その貴族がどうかしたのですか?」

「ええ、村の若い連中とも仲良くしてくれて少しして去っていったのじゃが、それから妙な噂が立っていたのじゃ」

「それが、不正なお金の話だと?」

「はい、わしらはリアリス様や領主様のことをよく知っている。だから皆の者にそんなことはないと説明したのじゃが、若い連中だけは不正を確信しているかのように聞いてはくれなんだ」


確信したように……

偽貴族から何か言われたのかしら?


「それで、今若い人たちは?」

「確か村で集まって何やら話し合っておったのう」

「ならちょうどいいわね。今から言って説得しましょう」

「リアリス!危ないよ」


パパが止める。

だが、引けない。


「それでも、私からも説明する義務があるわ」

「へえー領主の娘なだけはあるな?」


聞きなれぬ声に振り返るとドアが開けられ複数人の若い男たちがいた。


「おぬしらなぜここに!?」


村長は驚き固まっていた。

と言う事は、この人たちが村の若い人達と言うわけだ。


「で、何の用ですか?」

「へ、そんなの聞かなくても分かるだろ?」


男たちは槍をこちらに向けてくる。


「これは、何のつもりですか?」

「みればわかるだろ?俺達が腐った貴族を正すのさ」

「話は聞いていたのでしょ?そんな不正はありません。あなた達が偽の貴族から何を聞いたかは知りませんが嘘です」

「ふ、これでもそう言えるのかよ?」


そういって若者はある書類を見せる。それはここ最近の帳簿だった。


「これが何か?」

「ここには援助金なんて一切記載されてないだろ?」

「そんなはず!?」


確かにそこには記載が一切なかった。

まるで、存在していなかった。

すぐに父を見る。


「お父様!」

「は、はい!」

「これはどういうことですか?」

「い、いや、僕も驚いてるんだよ!?援助金をもらってからはちゃんとした人を雇って帳簿を付けてもらっていたはずなんだけど……」


やられた!

こんなとこにも手を回されているなんて!

敵は徹底的にやっている。


「ふははは、やはりあの方は正しかった!」


男は叫ぶ。

歓喜のごとく。


「あの方?」


その時微かに頭の片隅に浮かぶのは……


「そういう事ですか!」


これは、試しているのですね。


「……やはり、あなたですか!」


彼しか考えられない。


「さあ、粛清だ!」


若者は父に槍を向ける。

私は父の前に立つ。


「やめなさい!あなた達は、踊らされているにすぎません!」

「そんな言葉を聞くものか!貴族は俺達の手で変えるんだ!」


槍が私に向かってくる。

それは私の額を掠る。

額からは血が出る。

だが、決して引かない。


「あなた達は、迷っていないのですね」

「……」

「なら、私は迷い続けます」

「なにを!」


私は槍の切っ先を血を出しながら掴む。


「私たちは人間です。間違えもします。ですが、それはあなた自身が確かめなさい。それもできないのなら、こんなものを人に向けるのではありません!」


「くっ!?」


男は少し切っ先を下げる。


「ええい!騙されるな!」


違う男が槍をこちらに向けて出してくる。

目をつぶり次こそは、と覚悟する。

だが、痛みは来ない。


「無茶をするなリアリス?」

「ヴァン様!?なぜここに?」

「フランから連絡があった雲行きが怪しいとな」


後ろの方でフランがサムズアップしていた。

ナイスフラン!


「また貴族か!お前も粛清されたいのか!?」


槍がヴァン様に向かうが、簡単にいなして見せる。


「引け!お前たちは愚か者になりたいのか!」


その気迫に一瞬止まる若者たち。


「そ、そんな脅しは聞かない!」

「お前たちはこの女の行動を見ても怪しむのか!」


そこでやっとはっきり止まる。


「彼女は身を挺して父親を守ろうとした。そんな彼女たちが不正をすると、本気で思っているのか?」


「そ、それは……」

「不正の件は聞いている怪しむならこの私ヴァン・リイ・フレイ公爵が証人だ」

「なっ!?」


男たちは誰に矛先を向けているのか気付き青ざめる。


「ここまでにしましょう?今なら罪はとはないわ」

「……」


「私は絶対にあなた達から逃げません」


強い意志を込めて男達に言う。


その言葉で、男たちは武器を床に落とす。

槍が落ちる音が、やけに大きく響いた


「はあ、よかった………」


その瞬間、私は緊張糸が切れて気を失った。


次に目が覚めるとそこは自分の部屋だった。

だが、傍らには微かな温かみがあった。


「リアリス!大丈夫か!?」


ヴァン様が抱き着いてくる。


「あ、暑苦しいです……」

「は、はい……」


ヴァン様の顔を改めてみるとやつれており少し疲れていた。

どうも心配させてしまったようだ。


「ご心配かけました」


私はぺこりと頭を下げる。


「そうだぞ、これっからは……いや、言っても無駄か…」


よく分かってらっしゃる。


「……額の傷は残るらしい。すまない」

「なぜ謝るのですか?」

「もう少し、早く来ていれば傷は残らなかった…」

「……いいんです」


私は自分の額に手をやる。


「これは、証です」

「証?」

「私が迷わなかった証ではありません。迷っても向き合うと決めた証です。」

「そうか……」

「……はい」


そして気になっていたことを聞く。


「で、その後はどうなりましたか?」

「ああ、男たちは部屋に軟禁してある。事情聴取はリアリスが起きてからだと思っていたからな」

「分かりました。行きましょう」

「大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」

「もし、きつくなったら言うんだぞ?」

「分かりました」


そうして私たちは男たちがいる部屋に入る。


「おお、リアリス様無事で何よりじゃ!」


村長が抱きしめてくれる。

その温度が優しい。


「ふふ、ありがとう」

「あ、あの」


男たちがこちらに顔を向けている。


「すみませんでした!」


しっかり頭を下げた謝罪だった。

それは心からの謝罪だと一目で分かる。


「もう、済んだことです」


そういって男たちの肩に手を置く。


「あなた達の気持ちに寄り添えなかった私の落ち度でもあります。お互い様ですね?」

「リ、リアリス様!」


男たちは全員が泣き出してしまった。

大の男がなんともまあ。


「ほら、これを使いなさい」

「あ、ありがとうございましゅう~家宝にします~」


事件は終わったが、額の傷には確かな熱がまだあった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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