不正の噂
式典は中止となり私たちは王城の個室に事情を聴くために案内されていた。
そこには、王、王子、私、ヴァン様がいた。
「うむ。ビンセントから聞いてはいたが、ここまでとは……」
「ええ、完全に不意を突かれました」
まさか、新兵器がまだあってそれを使って国への脅しにするとは……
「今回のことで、市民からの不安の声が増えておる」
「そうですか……」
それも狙いなのだろう。
彼らは現政権にに対しての不安をあおり王家の統治に不満を増やすことも狙ったのだろう。
「ですが、彼らは言った何が狙いなのだろうね?」
「確かに、いくらなんでも回りくどいやり口だな」
彼らは戦争で事を済まそうとしていた。
だが、それが難しくなり方法を変えた可能性がある。
「正直、今の状況では断定は難しいと思います」
「うむ。今は奴らの動きを見る必要があるのう」
そうして私とヴァン様に視線が集まる。
「もちろん何か私たちにまた何かあれば報告いたします」
「うむ。悪いの」
そう、今回の件は完全ではないが防げた。
旗は倒されなかった。それなら、また彼は何か仕掛けてくるかもしれない。
「とにかく今回の件はご苦労だった。今日はゆっくり家に帰って休むがいい」
そうして私たちは屋敷に帰ってきた。
「フラン疲れたわ」
「お疲れ様です。奥様」
フランに抱き着き頭を撫でてもらう。
「……いいな」
ぼっそっとヴァン様がつぶやく。
「ならやってあげましょうか?」
「い、いいのか!?」
「ええ」
私は手を広げる。
「さあ、いいですよ?」
「……そっちではなかったのだが……まあ、いいか」
ヴァン様が抱き着いてきた。
それを確認して頭を撫でる。
「どうですか?安心しますよねヴァン様」
「ああ……これは案外いいな」
「お二人とも限界で遊んでいないで、屋敷に入りましょう」
「はーい」
私はヴァン様を離して屋敷に入る。
「……もう少し欲しかった……」
聞こえぬつぶやきがそこに残った。
「さて、今後ですが、のんびりしましょう」
「いいのかそれで?」
私たちは庭で紅茶を飲みながら話す。
「ええ、彼は絶対このままでは終わりません」
「俺もそう思うが、なにか、こう準備していなくていいのか?」
「まあ、できればやりたいですが、彼は予測もつかない方向で攻めてきています。正直予測は完全に不可能です。事態が動き次第、仮説なりを立てて動くのが賢明かと」
彼はどうも方向性をシフトしている。
それなら、あいまいな考えで動くより、しっかり検討がつけられる状況で動く方が賢明だ。
「……そうだな。ゆっくりしよう。」
「ええ、ゆっくりしましょう」
そう決意したのだが……
「奥様、すみません。そうはいかない様です」
「え?フランどういう事?」
「これを」
そうしてフランが渡してきたのは私の家からの手紙だった。
「はあ、ヴァン様、私実家に帰ります」
「は!?り、離婚なのか!?」
「いえ、契約破棄ではなくこれです」
そういって手紙をヴァン様に見せる。
「ふむ。「領民が不正して財産を増やしたと思われている。リアリス助けてくれ」とどういうことだ?」
家は貧乏でそれは領民も理解していた。だが、ここにきてヴァン様の援助金のおかげで領民にも還元で来ているために不正で稼いだのではと疑われているのだ。
「……難儀だな……」
「ええ……」
そういう事で私は実家に帰ることになった。
翌日。
「それでは、行ってまいります」
「ああ、留守は任せろ」
そうして私はフランを連れて家に帰ることになった。
「はあ、フランどうにか楽に解決は無理よね?」
「ええ、これは地道に誤解を解くしかありませんね?」
私はため息を吐く。
大体、なぜ今そんなことを言い出したのか。
家が不正をできる度胸もない家なことくらい領民は理解できているはずだが…
そこに何かの手が加えられたような気がしてならない。
そうして考えていると実家に着いた。
馬車を降りるとパパが駆け出してきた。
「リアリス――!!」
「もう、ぱぱだらしがないですよ?」
私に抱き着き泣く父親。
なんという光景だろうか……
「フランこれがうちのパパよ」
「フランでございます。奥様の専属メイドです」
「これは、これは丁寧にどうも」
お互い綺麗なお辞儀であいさつを済ましていた。
「さあ、領民に説明ね」
「そ、そうだ!!」
パパは今の状況を思い出したのか、先程の綺麗なお辞儀はどうしたか、ひどく慌てている。
「で、パパ状況は?」
「それがね……」
「リアリス様!」
声を聴き振り向くとそこには村の村長がいた。
「村長さん!元気だった?」
「おお、元気じゃぞ。久しぶりじゃなー」
人懐っこい笑みのこの男性はうちの統治している村の村長さん。
よく、昔は遊んでもらっていた。
「で、なぜここに?」
「それがのう……」
村長さんは顔を少し下に向ける。
「今回は私が呼んだんだよ。村の現状を相談するためにね」
「そこまで、酷いの?」
「……」
回答はなかった。
この感じ、相当ひどいのだろう。
「とにかく中で話しましょう」
「うむ」
そうして、応接室に集まった。
「で、村の状況は?」
「ああ、かなり緊迫しておるのう」
「緊迫?なぜ?」
「それがのう。村の若い連中がそんなことは許さないと殺気立っておるのじゃ」
「でも、父から事情は聴いているのでしょう?」
「そうじゃが、若い連中は自分たちが考え直させると息巻いているのじゃよ」
厄介だ。
それが正直な感想だった。
不正に怒っているのは間違いない。
だか、父を正そうとしている領民を裁くのは個人的にも客観的にもできない。
「考え直させるとは、どうやってやるつもりですか?」
「そこまでは、教えてくれなんだ」
「そうですか……ですが、なぜそこまで正そうとしているのですか?」
「それが、不思議なことがあっての」
「不思議なことですか…」
ここでのその言葉はなぜか予想できた気がする。
まるで用意されていたような。
そう、舞台上のような気持ちがした。
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