彼からの挑戦状
今日も二本立てです。
二度目の更新は16時です。
よろしくお願いします。
ジュエルの裏切り発覚から数日後。
私たちは慌ただしかった。
当初はフランの件やらで、ひやひやしたが、そちらは何もなかった。
どうもジュエルは周辺国にフランの件は言ってない様だった。
私はそのこともあいまって困惑していた。
きっと迷っている彼の気持ちがわかるから。
「リアリス大丈夫か?」
「は、はい。大丈夫ですよ」
私は作り笑顔を浮かべる。
だが、それがいけなかった。
「リアリス……一人ではない私も困惑している」
ヴァン様には分かってしまう。
困惑が。私の。
「ヴァン様……彼はきっと悪人ではありません」
「ああ、知っている」
きっとそれはお互い分かっていた。
彼のすべてが嘘だったなんて思わない。
だから、信じられた。
彼が悪人ではないと。
「だが、リアリス俺達はやらなければいけない」
「……彼のその気持ちを切れと?」
「分かっているのだろう?」
「……」
私は肯定も否定もしない。
それが答えだ。
「はあ、ヴァン様は容赦がないですね?」
「ああ、俺は鬼だからな?」
軽く彼も笑ってくれる。
それに少し安心する。
彼が一番傷ついているはずだから。
「それで、今後はどうしますか?」
「そうだな……」
今後の動きは重要だ。相手の目的が分かり新兵器も判明。
ここまで知られたのだ。大きく動き始めるだろう。
だが、次の足取りがつかめない。
「彼らはいったい次に何をするつもりでしょうか」
「ああ、それが今一つ分からない」
私は紅茶を一口飲み静かに置く。
その水面は静かに波打っていた。
「彼らは貴族の抹殺を目的にしています。ですが、隣国の制圧は我が国の援助でなくなります。そして、我が国の制圧も困難になります」
「そうなると、今のところ全貴族の抹殺は難しくなったということだな」
「はい、ですから、次の一手を打ってくるはずです」
「だが、手掛かりは無しか……」
部屋には沈黙が降りる。
とても心地いいものなどではなく息詰まるほどの沈黙だった。
「奥様」
それを破るようにフランが部屋に入り声をかけてくる。
「うん?フランどうしたの?」
「報告があります。メイドの一人が失踪しました」
「ジュエルの手の物かしらね」
「はい、そのようです。これが部屋に」
そう言ってフランは紙を渡してくれる。
「これは……」
「リアリス何と書いてるのだ?」
私はなにも言わずヴァン様に紙を渡す。
「そうきたか……」
その手紙には「今度の式典は血で染まるでしょう。あなた方が信じる正義で止められるなら、どうぞ」と書かれていた。
どうも彼は私たちを試したいらしい。
「ヴァン様、行きましょう」
「はあ、君なら行くと言うと思ったよ」
彼は仕方ないなと言わんばかりの笑みを浮かべる。
私は「知ってるでしょ?」そう言わんばかりに笑みを返す。
そうして式典に出ることになった私たちは馬車にて数日早く王城に来ていた。
「奥方よく来たね?」
「俺もいるのだが?」
「ああ、気付かなかったよ。君もよく来たね」
「こいつ……」
王城に着くと王子が出迎えてくれた。
「君たちは本当に面倒ごとに付き合わされるね?」
王子はけらけらと笑っている。
この人、本当に自分が殺されそうだと分かっているのだろうか。
「ビンセント、お前の身が危ないのになぜのんきなのだ」
「て、言われても小さなころから日常茶飯事だからね?」
王子はさぞ大変みたいだ。
「ですが、今回の相手は侮れません」
「知ってるよ。君のとこのジュエルには何度かお世話になっているからね」
その顔は少し険しくなった。
「で、いったいどうやって守ってくれるのかな?」
「実は、それを考えたいのです。どこか個室で話し合いませんか?」
「いいね。こちらだよ」
そういって個室に案内される。
「ここなら防音も兼ねていて、外には話は漏れないから安心するといい」
「お気遣いありがとうございます」
「いいってことさ」
そうして椅子に座り話し合いが開始される。
「さて、今回はいったいどうやって殺しに来るのかな?」
「あのですね、少しは緊張感持ちませんか?」
「と、いわれてもね」
王子は肩をすぼめる。
「はあ、まあいいです」
そういって一息つき話を再開する。
「肝心の方法だが、いくつか考えられるのをピックアップした」
ヴァン様はテーブルに書類を広げる。
「一つ目が毒殺これは鉄板だが強い」
「ああ、よくやられかけたよ」
「……そんな軽く」
この人には怖いものはないのだろうか。
「二つ目が新兵器を使った遠距離からの暗殺」
「うむ。これは正直式典が外で行われるだけあって危険だね」
「ええ、で、三つ目が使い捨ての駒を使っての暗殺」
その言葉で王子は肩を少し上げる。
「……まあ、よくある話だね?」
その目はとても静かだが怒っているのが分かる。
よほど過去に嫌な経験があったのか、かなり怖い顔をなされていた。
「他にも、事故に見せかけての暗殺なども考えられます」
「はあ、言い出したらきりがないね?」
「ええ、ですので絞り込みが必要かと」
私は手を少し強く握る。
「まず、可能性が高いのは新兵器での遠距離からの暗殺です。あの兵器ほどそれに向いているのはありません」
「そうだね。ただ他の方法もないとは言えないよね?」
「ええ、ですが、今回についてはおそらくこれだと思われます」
「なぜだい?」
私はジュエルの顔を思い出す。
あの貴族に向けた憎しみの目を。
そして、ヴァンさんへの感謝も同時に思い出す。
「まず、使い捨ての案ですが、こちらは仲間が犠牲になります。彼ならそれは許しません」
「悪人の善を信じると?」
「いいえ、彼は悪人でも善人でもありません。ただの迷っている人間です」
私は王子の目をみて答えるように言う。
「そして、事故に見せかけた方法ですが、これも一般の人が巻き込まれる可能性がある以上、可能性は低いです。最後に毒ですが、これは王家なら常時警戒している物ですから低いと思います」
私は静かに息を吸う。
「以上から遠距離からの武器での暗殺だと思われます」
「見事だね」
「いえ、少し考えればわかることですから」
だが、私は何か見落としている気がした。
兵器での狙撃。
だが、そんな方法少し考えればわかる。
簡単に防げるはず。
だが、何か胸騒ぎがしていた。
「……王子、今回の式典で、あなたはどこに立つ予定ですか?」
王子が答える。
「中央の演壇だよ?」
毎年、演壇の背後に巨大な王家の紋章が掲げられているはすだ。
リアリスの顔が変わる。
中央=目立つ=だが距離が遠すぎる。
あの新兵器であの距離は難しい。
つまり――
狙いは王子ではない。
「彼は狙いは王子ではないのかもしれません」
「では、何が狙いなんだ?」
「王子を殺すのではなく権威を殺したいのかもしれません」
彼はこんな単純な方法を取らないきっと、もっと残酷なことをするはずだ。そう確信した。
「王子を殺すよりも残酷なこと……
それは、王子を守れなかったと国民に思わせることかもしれません」
「なるほど。王を撃つのではなく、王を嗤わせるか」
もし彼が王の権威を撃ち抜くなら——
それを塗り替える覚悟が、私にはあるのだろうか。
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