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貧乏辺境貴族令嬢の契約結婚から始まる事件簿  作者: マモシ
第一章 見えない脅威

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15/21

信念と過去

私が調査を頼んでから数日後。


「ヴァン様、まいりました」

「ああ……」


部屋には私とヴァン様そしてジュエルがいる。


「どのような用件でしょうか?」

「今回、私はある調査をした」

「ある調査ですか?」

「ああ」


そういってヴァン様はテーブルに書類を置く。


「それは調査報告書だ」

「これは…」


ジュエルは眉を少し動かし目を細める。

そこにはジュエルの不明な出自などが書かれていた。


「ああ、それはお前の身元調査の報告書だ」

「……なるほど。そこまで調べられましたか」


彼はそう言って静かに息を吐く。


「ですが、なぜそこまで私の身元を?」

「それは……」

「あなたが、帝国を偽る組織のリーダーである可能性があるからよ」


私はヴァン様の言葉を遮り言う。

ジュエルは落ち着いた様子で尋ねる。


「それはどういうことですか?」

「まず、違和感がありました」

「違和感ですか?」

「ええ、あなたほどの人が簡単に帝国の物やフランを入れさせていることが不思議でした」

「私とて、そう言う事もありますよ」


私はさらに追い打ちをかける。


「確かにあなたも人、そういう事もあるでしょう。ですが、フランの件も考えても二度も侵入を許すとは思えません」

「……」


肯定も否定もない。

ただそれが答えなのか黙ったままだ。


「そして、組織の中での宝石の話。彼女は大切な人と言っていた。ジュエル、その名前は宝石。意味は大切な人とも言います」

「ほう……」


ジュエルの目がさらに細くなる。


「これは仮定ですが、あなたは、止めてほしかったのでは?」

「なぜですか?」

「迷っているのでしょう?」

「……」


ジュエルは視線を少し下げる。


「なぜなのですか?貴族の浄化などしようとしているのですか?」


彼は視線を再度上げて答える。


「あなた達のような方がいる世界は美しい。私は本気でそう思っています。ですが――その美しさは、腐敗を温存する」


彼の目には強い火がともっていた。

決して消えることのない火だ。


「あなた達は世界でも珍しい貴族です。優しく正義感があふれており穏やか。ですが、そんな貴族ばかりではありません」


そういって報告書を床に投げ捨てる。

そこには散らばっている書類の内容が見えた。


「それはあなたの家族を壊した貴族のことですか?」

「……ええ」


彼の家は貧困で食べていくのがやっとなくらい貧乏だった。

領民はその日ぐらしをしており、領主は贅沢三昧。

そんな領地に住んでいた。


「私は兄や姉、両親が餓死していくのを見ることしかできませんでした。私が生き残ったのは数少ない食料を家族が末っ子の私にくれていたからです」


彼は手を強く握っている。


「彼らは何か悪いことをしましたか?ただ、穏やかに生きたかっただけ……なのに貴族の汚い欲の為に犠牲になり、私の家族は死にました」


私はただ静かに聞いていた。

そうさせるほどの叫びに聞こえたから。


「私はその時から決めていました。すべての貴族を浄化し、抹殺すると決めました。」

「あなたはそれでいいのですか?」

「ふ、綺麗ごとは言わないのですか?」

「……私は領民が一番でした。ですからその貴族に対して怒りはあってもかばうつもりはありません」

「あなたらしい答えですね?」


彼は少し悲しそうにただ嬉しそうにも見える笑みを浮かべる。


「……それしかないのか?ジュエル」

「ヴァン様、あなた様に使えられたことは生涯の誇りです。感謝します」


ジュエルは礼儀正しく礼をする。


「ジュエル……」

「……ですから、私の邪魔をしないでください」


彼は懐からナイフを出し旦那様に投げる。


「ヴァン様!」


旦那様はそれを少しだけ避けて回避する。


「それが答えなのだな?」

「はい」


しばらくにらみ合ってやがて切り結ぶ。


「ふ、剣の腕はないがナイフはうまいな?」

「恐悦至極です」


刃が弾かれ、火花が散る。

互いに致命打を許さない。

二人は一度後ろに引く。


「どうも、決着がつきそうにないな?」

「どうもそうみたいですね?」


二人はにらみ合い膠着が続くかと思われた。


「ジュエル様準備出来ました!」


窓の外から声がした。


「悪いですが、ここまでです。またお会いしましょう」


そうしてジュエルは窓を突き破って外に出ていく。


「な、ここは二階だぞ!?」


ヴァン様と窓の外を覗く。


「やられた…」

「ですね…」


下には大きなクッションのようなものがあった。

彼らは馬に乗って去っていた。

その背中には確かな覚悟を感じた。

彼の信念と、私の信念がぶつかる日がきっと来る。

それらが、胸の奥に、重い何かが残った。


読んでいただき、ありがとうございます。

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