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それはまだ未完の夢

これはまだ誰も知らない世界の物語

小さな農村に、

川見という少女がいた。


今日は、川で魚を獲っていた。

そして、彼女は、いつか祖母から聞いた話を思い出していた。


その話は、このようなものだった。


青い海の中、光るものがある。

それは、儚い光を放つ、蒼い石であった。


その形はまるで、

星が二つに別れたうちの、

小さな一つのようで―――


その欠片は、小さな器の中に、

大きな夢がある。


何時かの、蝉がなく夏の逸話。


まさか、そんなわけないのに、と

川見は時々思い出す。


「川見」の名を考えたのは、その祖母だ。

川を見通す、という意味らしいが、そんなの誰だって解かる。

天才だった祖母は、

もっと深い意味を考えていたのではないか。


でもそれはわからない。


なぜなら、

去年のこの日、


祖母は死んだ。


本当は川見が死ぬはずだったらしい。

襲いかかるイノシシに噛まれかけて、

でも、祖母が助けてくれた。


あの時の、

祖母の顔は忘れられない。


誇りであった祖母が死ぬと同時に、川見は祖母の真似を始めた。


だけど、

それは不可能だった。

昔、

軍の作戦を真っ向から打ち破る策を思いつき、

そのまま当時のクラスメイトと、

その作戦を実行した。


その頭脳も、

その行動力も、

川見にはなかった。


だけど、才能だけはあったから、

剣舞を始め、

いつか、

最強になって、


天国で祖母に褒めてもらおう。


そう思いふける。


キラリと、

石が、

光った。


その石は、

祖母の語ってくれた逸話に出てきた、


蒼い石と瓜二つだった。


いや、


そのものなのかもしれない。


内包する存在感は凄まじく、

彼女が想像していたものより、

綺麗だった。


だけど、

それは何故か、

哀しさと強さが、

混ぜられているような、

不自然なものだった。


「それ」に集中すればするほど、

森の歌は意識から遠のく。

が、―――


「给我!」


次の瞬間、

何かの声を聞いた。


中国語だった。


白衣をまとい、銃を構えている、その集団は続けて言った。


「立刻把那个“黑石”给我。你想被枪毙吗?

(今すぐ“黒石”をよこせ。撃たれたいのか?)」


なんと言っているのだろうか。

川見は疑問に思った。


「我再次问道:“你想被枪毙吗?”

(もう一度言う、“撃たれたいのか?”)」


英語なら通じるかもしれない、と思い、川見は訊いた。


「Who are you guys? I don't speak Chinese.

(あなたたちは誰ですか?私は中国語が話せません。)」


「Sorry.」


白衣の集団のリーダーはあやまり、滑らかな日本語で言った。


「私達は、“黒石”を研究する者です。よってあなたが持っている、“黒石”を要求します。直ちに渡しなさい。撃たれたいですか?」


その時点で川見は疑問に思った。

川見は“コクイシ”を持っていないのだ。

石は持っているが、黒くはない。青い。


川見は蒼い石を見せ、言った。


「私が持っているのは、蒼い石のみです。“コクイシ”は持っていません。」


集団は驚いた様子を見せ、


「“黑石”的另一半ッ――――――!!

(黒石の片割れッ――――――!!)」


叫んだ。


そして、思い出す。

この石の形は、星を二つに分けたような形だったな、と。


「“蒼石”には害はない。が、その分強い。“蒼石”にはあって、“黒石”にはない。それは、“護る力”だ。」


護る、力。それはもう、人外の領域であった。



通常、人は何かを守るために、

何かを犠牲にする。


それは、

時に良心であったり、

時には他の誰かだったりする。


それが何であろうと、

正義のヒーローであろうと、


失うのは変わりない。


守る、とはそういうことだ。


でも、

すべて護れたら、


すべて失わずに済んだら、


この世界はもっと平和なんだろう。


護ることができない。


その根拠は、

この世界が証明していた。


だからこそ、川見は蒼い石を見て、


この淡い光の中に、

そんな力はあるのだろうか、とぼんやり考えた。


全部護れたら―――


あの日、祖母のことを。


全部護れたら―――


私達の永遠の平和を。


でも、それは―――、


全部、叶えるのと同じだから。


楽しくない。


そう思った。


「そうなんですか。では、これで。」


そう言って。川見は笑って帰っていった。


その笑顔には、別の感情が混じっていた。


そんな力があるなら、

なんで祖母を救ってくれなかったんだろう。


祖母を失った今、何を護れ って言うんだろう。



食卓のテーブルで、

川見は今日起こったことを考えていた。


蒼い石を取り出して、そっと撫でながら。


“黒石”


それは何だろう。

この石と合わせれば、

本当の“星”になるのかもしれない。


川見の思考は、父によって阻害された。


「こら、川見。食卓に石を持ってくるな!」


はい、と答えながら、

二階の自室へと戻っていった。


ふと考えていなかったことを思い出した。

この石、どこに置こうか。


その時、祖母からもらった木箱が目についた。


―――ここが良い。



食卓に戻って来ても、頭は、あの石のことを考えていた。

上の空で食事を終え、シャワーを浴びて、そのまま布団で眠りにつく。

日常はすでに侵されているのかもしれない。




次の日は、学校で授業がある。一般生徒から、“ボロい”といわれる古い校舎は、朝の光を受けていた。


そこは、完全なる日常だった。


川見のクラスは4−Eで、担任は竹内誠先生。

不思議なことに、今日は石についての学習だった。

「―――と、このように、石は重量に押しつぶされた影響で生まれるものや、急な冷却によって生まれるものなのです。」


だったら“蒼石”はどうなんだろう。


誰が、“蒼石”を作ったのか。


それは未知であった。


だけど、それは、

自然では無理だろう、川見は思う。


「こら、そこ。」


川見に言っているのだろう。誠先生はこちらを向き、少し大きめの声で怒鳴った。


先生が前を向いた隙に、隣の席の友人、千理が声をかけてきた。


「怒られちゃったねぇ」


そこにあるのは、嘲笑ではない。だが、僅かなトゲを含んでいた。


だから―――、その声を、

排除した「モノ」がある。


それ故に、川見には千理の声は聞こえなかった。



掃除中の川見の母は、川見の部屋から、薄く漏れている光を見つけた。



「ねえ、ちょっと無視しないで」

「モノ」はこの千理の声を、排除。


光はこの時強まって―――。


これは、だめ。あれも、だめ。全部――、だめ。



川見は、守られていることを知らない。




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