第06話 空白を埋めるように
どんなモンスターでも子供は可愛いんでしょうね。
朝だ、太陽の光が差し込む。そういえばこれは太陽なのだろうか。
余計な事は後回しだ、新しい家族の様子をうかがう。
キー助はまだ寝ているな。起こさないように厨房へ、きのうのスープを温めなおそう。
しばらくするとシーリアが起きてきた。
「おはようございます、ケイゴさん」
「ああ、おはよう。朝は昨日の残りにしようか、キー助が起きたら一緒に食べよう」
スープの匂いにキー助も目を覚ます、食いしん坊だな。
食卓に三人が揃う、こうしていると本当に家族のようだな。
「シーリアは、どうしてここに?」
「私は……数日前に、人間にさらわれて……逃げてきたんです」
シーリアの故郷は魔王軍の領地とアラステリア王国の境目にある村だそうだ。
異種族が集まる村で、シーリアは人間の間ではコボルトと呼ばれる種族らしい。
異種族の子供を好む人買いが居るのだろうか、人さらいとは……人間の恥さらしめ。
シーリアの傷を見て怒りに震える。
「いつまででもここに居て良いからな、必ず故郷に帰してやる」
「はい!……ありがとうございます!」
「キー助は……どうしてここに来たんだ?」
「キキッキキィッ」
声に集中する、どうやら迷子のようだ。寂しさや近くに仲間が居ない不安が伝わる。
「お前も絶対家族に会わせてやるからな、それまで三人家族だ」
俺が笑うとシーリアも微笑む、キー助も嬉しそうだ。
「ケイゴさんは、ゴブリンの言葉が分かるんですか?」
「いや、分からないよ。でも何を言いたいかは少しだけ伝わるかな」
シーリアは不思議そうにキー助を見ている、本質を見極める力にも個人差があるのだろうか。
食事の後片付けをする、井戸の水で食器を洗っているとキー助が覗き込む。
「お前も手伝うか?割ったりするなよ、あまり金は無駄に出来ないからな」
キー助は「キュ?」って首を傾げて、結局シーリアの所に戻っていった。
「じゃあ、リヴェンの町まで買い物に行ってくるよ。まだ傷が癒えてない、あまり外を出歩くなよ」
「はい、気を付けて」
「キー助、お前はシーリアを守ってやるんだぞ」
「キーーッ!」
廃墟を出てリヴェンの町まで歩く、チャドから聞いていた道を進むと町の入り口が見えてきた。
町の中を見て歩く、どうやら人間ばかりのようだ。シーリアのような獣人はどういう扱いなのだろうか。
そんなに大きくは無い町だ、一通り見て回る。雑貨屋、酒場、あとは民家だな。
とりあえず酒場に入る、まだ朝早いが開いているようだ。
「いらっしゃい、お?見ない顔だね」
酒場のマスターだ、歳は俺より少し上くらいか。
「ああ、すみません。飲みに来たわけでは無くて」
客はまだ少ない。丁度いい、マスターから話を聞こう。
「昨日から近くの廃墟の警備に配属されましたので、挨拶に伺いました。外山圭吾です」
「ああ!あの集会所の!あそこも昔は賑わってたところだったんだがねぇ、ずいぶん前だが魔王軍の連中が出たみたいでね……」
話好きのマスターで助かる、仕事の邪魔にならないように話を聞く。
どうやらこの町に医者はいないようで、重症の場合は城下町エルドリアまで行く必要があるらしい。歩いていくのは現実的では無いな。
獣人についてはあまりこの辺では見ないようでシーリアがどういう反応をされるか分からないな。キー助は聞くまでも無いだろう。
今じゃ魔王軍もすっかり見ないとの事だが、野生動物等よく分からないものが住み着くよりは俺がいた方が安心だそうだ。
「では私はそろそろ警備に戻らないと、有難う御座いました」
「あぁ、よろしく頼むよ」
酒場を出て雑貨屋に行く、包帯になりそうな布に薬草、石鹸も有るな。二人の服も買ってやりたいが今は贅沢は出来ない。
二人の事が心配だ、必要な物を買い揃え足早に帰路に着く。
廃墟に入るとキー助が飛びついてくる。
「はは、ただいま。大人しくしてたか?」
個室からシーリアも顔を出す。
「ケイゴさん、おかえりなさい」
「あぁ、シーリアは暖炉で休んでな。また痛みが出たらすぐに言うんだぞ。掃除するからちょっと我慢してな」
まずはシーリアの個室からだ、寝具を表に出し埃を払う。シーリアが表に出てくる。
「ケイゴさん、私も手伝います」
「馬鹿言うな、今俺がシーリアにして欲しいのはゆっくり休んで傷を癒す事だよ」
天日干しした方が良いだろうか、放置されていた寝具だ。カビなど心配だからな。
日の当たる柵が有る、物干し台代わりに丁度いいだろう。寝具をかけ戻るとキー助が残りの寝具を持ってきた。
「偉いぞキー助!一緒にやろうか」
頭を撫でてやり一緒に寝具の埃を払う、シーリアも手伝いたそうに見ている。本当にいい子たちだ。
次は軽く部屋を拭こう、布を軽く絞りシーリアの個室を全体的に拭く。キー助も真似して手伝ってくれている。
「上手いぞキー助、綺麗になると気持ちいだろう?」
「キキー!」
キー助から楽しいという感情が伝わってくる、俺も楽しいよ。
しかし、キー助……臭いな。ゴブリンはこれが普通なのか。独特な獣と沼地のような匂い、シーリアと違って悪臭だな。
「次はキー助、お前の番だな」
食器洗い用の大きなたらいに湯を張りこぼさないように表に持っていく。
石鹸を買っておいて良かったな、たらいの湯を泡立てる。
「ホラ、キー助こっちにこい」
「キュ?」
キー助を抱えてたらいに入れる。
「キュー!!キュキー!」
「はははっ!こらっキー助!暴れんな!」
暴れるキー助を押さえて布で拭く、腰布も一緒に洗っておこう。シーリアも笑って見ている。
「あはは!いーなーキー助ちゃん……」
シーリアには傷が癒えてから獣人も受け入れる大衆浴場など調べておいたほうがいいな。
キー助の身体を洗い流し乾いた布で拭く。疲れたのか大人しくしている、元の腰布の代わりに新しい布を巻いておく。
「キュー……」
「はい、お疲れ様。中に入ろう」
たらいを片付け、干していた寝具を取り入れる。キー助はぐったりとシーリアの隣に寝転がっている。
「じゃあ次はシーリアの湿布を張り替えよう、まだ傷がふさがっていないはずだ。痛みが出る前にな」
「はい……お願いします」
たらいに湯を張りシーリアの個室に持っていく、拭ける所は拭いてもらおう。
薬草をすり潰し布に乗せ、シーリアの湿布を剥がす。まだ血が出ていて痛そうだ。
「大丈夫か?痛かったら言うんだぞ」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
キー助も心配そうに個室を覗きに来る、刺激しないように汚れを拭き湿布を張り替える。
「じゃあ身体を拭いておいてくれ、終わったら言ってくれよ。ほらキー助、行くぞ。」
「はい、ありがとうございます」
キー助を連れて部屋を出る、薬草を煎じて飲み薬も作っておこうか。
シーリアの手当が終わって夕食の準備をする。買ってきたパン、野菜と干し肉のスープ。町で料理のレシピも聞けば良かったな。
「準備できたぞ、食べようか」
「はい!」「キーッ!」
三人が食卓に揃う、部屋も子供たちも綺麗になって忙しいけど充実した一日だった。幸せ……なのかもな。
読んでいただいた全ての方に感謝します。
次回バトル展開です。家族の為に何もない彼が立ち向かう!




