第04話 よその子よその子よその俺
バッドエンド後の長い長いエンドロールが流れるだけだった彼の人生。
召喚は救済か、試練か。
「荷物はこの辺に全部置いてくれ、後で自分で運ぶよ」
廃墟に着き荷物を下ろし始める、廃墟と聞くと不安だったが思ったより綺麗だ
「いいのか?中の掃除に町の案内まで全部やるぜ?」
「いいんだよ、チャドは次が有るんだろ?俺はどうせ暇だしな。」
「ワリィ、正直助かるわ。荷物に金も入ってる、足らない分はリヴェンの町で買い揃えてくれ」
荷物を全て下ろし終えた、後に来るであろう筋肉痛に怯える。
「早く行けよ、誰か待たせてんだろ?」
「あぁ、また一月後には物資も金も持って来るからよ。それまで達者でな!」
チャドを見送り改めて廃墟を見る、元は集会所だったらしい。
より安全な場所に新たに集会所を建て、ここはもう使われていないという訳だ。
「さてと、暗くなる前に寝床くらいは用意しなきゃな」
荷物を入り口前まで運ぶ、扉を開け恐る恐る中を覗き込む。
「うん……いい建物じゃないか。俺は見捨てられた、という訳では無さそうだな」
ハズレ……チャドはアタリだと言ってくれたが。人に向かって言う言葉では無いだろう。
王妃の冷たい視線を思い出す、あの時何も言えなかった自分に対する思いが無意識に握りこぶしを作る。
「ソシャゲの!ガチャじゃ!ねぇんだぞ!!」
今開けたドアに三度こぶしを叩きつけ、情けない中年が叫ぶ。静かな室内に声が響く。
(ガタン!)
部屋の奥で音がした、廃墟に路上生活者が住み着くというのはよくある事らしいが。
「誰か居るのか?」
ゆっくりと音のした所に歩み寄る、魔力を構えた方がいいだろうか?
呼吸の音が聞こえる、荒い呼吸。身を守る魔力の準備をしようとした時、その姿が見えた。
(ハァッ…ハァッ…ハァッ…)
子供だ、体の大きさは。しかし犬の様な見た目、獣人というのか。服装から恐らく少女だろう。
顔は口元が長く突き出ていて、白い体毛が全身を覆っている。服はボロボロで、毛が所々血で固まっている。
全身傷だらけで尻尾は弱々しく床に垂れ下がっている。特に耳の傷が酷い。千切れそうな程に深く痛々しい。
「お……おい!大丈夫か!?」
少女が俺を見る、目を開けるのもやっとといったところ。荷物を取りに走る、何か有ればいいが。
荷物をあさる、薬草だ。包帯に出来そうな布も有る。持てるだけ持って少女のところに戻る。
「待ってろよ……薬草を……おい、もたもたすんな!本質を見極める力!」
理解出来てきた、すり潰して湿布にしよう。それ用の道具も入っている、多分正解だろう。
薬草をすり潰す、布の上に薬草を乗せ少女の耳に貼り付ける。
「……ンッ!」
「痛いか!?すまん、でもあってるはずだから!」
飲ませるのも良いみたいだ、湯を沸かして煎じて…そんな暇はない。
「これを食べるんだ!」
怯える少女、なにか間違ったか?少女の口にすり潰した薬草を運ぶ。
「ンーッ!……ケホッ…」
外傷、痛み止め等、数種類の薬草を使い様子を見る。
しばらくして少女の呼吸も落ち着いてきた、ただ全体的に緑色になった。
他には……とにかく身体を休めてもらおう。辺りを見回すと部屋の壁に組み込まれた暖炉が目に留まる。
火を起こしておこう、それと何か食べる物を用意しておこうか。道具を取り出し暖炉に火をつける。
「あ……あの…」
少女がしゃべった、言葉が通じるようで助かった。便利なものだ。
「まだ安心できない、ここで休んでなさい」
暖炉の近くに毛皮を敷く、床に直接寝るよりは良いだろう。少女を抱え毛皮の上に寝かせた。
「ここで待ってなさい、なにか食べる物を用意するから」
「…ありがとう」
入り口に残りの荷物を取りに行く、何か……居る?薄暗くて見えづらいが小さな生き物が荷物を漁っている。
刺激しない様にゆっくりと近づく、姿が見えたが何なのか全く分からない。小さな人型の何か。
「おい、ダメだよ。それに触っちゃ」
「キィーーーッ!」
腰に布を巻いただけの緑色のざらついた肌をした小さな生き物、大きな黄色い目がこちらを見ている。
長く尖った鼻、尖った耳、やせ細った体に鋭い爪、こちらを威嚇しているのか牙も見える。
言葉が通じないのか……本質を見極める力に期待を寄せこいつの声に集中する。
「キキーーッ!キーーッ!」
まだ子供だ、怯えている。そして腹が減っている……かすかに思いが伝わる。
両膝をつき姿勢を低くする、四つん這いになりゆっくり近づく。
「それが欲しいのか?今からもっとおいしい物を作るから、もう少し待てないか?」
「キュー……」
目の前まで来た、荷物を掴む手にそっと手をのせる。
「なっ、中に入って。おとなしく待っててくれよ。」
小さな生き物の手を優しく引き中に招き入れる。暖炉の近くに連れていく。
「すまない、コイツも腹が減ってるみたいで。一緒に待っててくれ」
「ヒッ……ゴブリン!」
少女が怯える、こいつはゴブリンなのか。ゲームではよく目にしたが実際会うと分からんものだ。
「大丈夫だよ、大人しく待っててくれるよな?」
そう言ってゴブリンを見ると、バンザイしながらキーキーと飛び跳ねている。
読んでいただいた全ての方に感謝します。




