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第14話 確証バイアスを、愛と呼ぶ

シーリアを見送りに表に出る。


「シーリアちゃん、また遊びに来てね。」

「はい!クレアさん、本当に有難う御座いました」

シーリアの傷はもうほとんど目立たなくなっている。

「あ、治療費はあとで請求してください。積み荷に入っているはずです」

「あぁ、お金はもういいわ。シーリアちゃんは私にとってももうお友達だしね」

そう言ってクレアがシーリアを抱きしめる。


「シーリア、これマスターが持ってけって。リヴェンのみんなからお土産だってさ」

用意が良いな、チャドがシーリアを引き受けてくれると分かっていたようだ。

デイジーが持ってきた袋を、シーリアに渡す。

短い間だったが俺の知らない間に町の人にも相当気に入られていたみたいだな。

服や食料、色々な物が入っている。

「こんなに!?有難う御座います!」


「嬢ちゃん、もう別れは十分済ませたのかい?」

「はい……お願いします」

チャドが荷馬車の準備を終える。

「良かったな……シーリア。元気でな」

シーリアの目を見つめ頭を撫でる。

「はい、ケイゴさん。必ずまた会いに来ます」


「キイィーーッ!」

キー助の声だ、少し先の森の木の上にキー助が手を振っている。

不思議だな、お前も見送りにきたのか。ただ人がたくさん集まっているのが珍しいだけか。

「キー助ちゃん!」

目に涙を浮かべ、シーリアが手を振る。

それを見てキー助は森の中に消えていった。


チャドとシーリアが馬車に乗り込む。

「じゃあな、ケイゴ。このチャド様に任せとけ!」

「あぁ、頼んだよチャド」

「さぁ!行こうか嬢ちゃん。」

「はい!さようなら、みなさん!絶対また来ます!」

俺たちは馬車が見えなくなるまで手を振り見送った。



中に入り三人で余韻に浸る。

「行っちゃったねぇ、シーリアちゃん」

「チャドのヤツ、シーリアに余計な事教えてなけりゃいいけどな」


俺は二人に切り出す、魔王軍の事だ。

「あの……お二人が前に言っていた魔王軍の事なんですが」

俺の質問に二人が答える。

「この辺には来てないよ、実際戦闘してるの大体決まったところだし。民間に直接的な被害は出てないから安心して」

クレアが言う、戦争はある程度ルールに基づいているという事か。一枚岩ではないとも言っていたな。

俺の勝手なイメージとは違い、魔王軍は手あたり次第侵略という訳では無いようだ。

「あぁ、今んとこずっと膠着状態だしな。だからアタシやクレアがここに居られるって事」

デイジーの言葉に納得する、二人は戦場に何度も出ているのだろう。

あの破壊光線は戦場で役立つものだ。ウェイトレスには必要ない。


「その、魔王軍に転生したハズレの事なんですが……」

「ん?あぁ、居たねそんなの。どうかした?」

「会いに行こうかと思ってます」

二人が俺の意外な発言に驚く。

「えっ!なんで!?」

「……意味が分からんな、理由を聞こうか」

話せば笑われるだろうか、単なる妄想に過ぎない。それでも、この気持ちを抑える事は出来ない。

少し考え話すことにした。


「はい、実はこの世界に来る前に妻を亡くしてまして……」

二人に話す、根拠も何もない単なる俺の妄想を。


「……まぁそう考えるのは分かるな。奥さんが亡くなった時期からしてもありえなくは無いか」

「おじさん一人で?当たり前だけど、危ないなんてもんじゃないよ?」

この世界に来る前の俺は死んだような抜け殻だ。それがここで生きる意味を見つけた、諦める事は出来ない。

「はい分かってます。ただ妻かどうか分かるだけでも良いんです」

二人が顔を見合わせる。黙っていくべきだったか、だが何の情報も無く出かけるのは流石に無理だ。

言っている内容と自分の無力さのギャップで恥ずかしさが込み上げる。

「すみませんが町の人には少し留守にすると伝えてくれると助かります、明日出ようと思います」


しばらくの沈黙が続く中、軽く手を上げデイジーが言う。

「……アタシも行っていいか?」

意外な申し出に驚く。この上なく心強いが理由は知りたい。

「もちろんですが……どうして」

「いや、おっさんが死にに行くの見送るのはな。それとアタシも興味出てきたからね」

難しいのは分かっていたが、そんなに無謀だったのか。それと確かにハズレがすぐに処分されずに生きているのは気になる。

「しょうがないな、私も行ったげる。そのハズレがどこに居るか、大体分かるから」

クレアが言った。二人の有難い申し出に溢れる涙を拭う。

明日リヴェンの町で集まる事になった。別れ際にデイジーがつぶやいた気がした。


「……アタシが興味あるのはおっさんの能力だけどね」

読んでいただいた全ての方に感謝します。

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