第12話 本当の家族
三人で森を出る、辺りはすっかり暗くなっている。詳しい事情を話しとりあえず診てくれる事になった。
「マスターへの報告どうすんだよ、話したら悪い奴じゃなかったって言うのか?」
「そんなの後よ、とりあえずそのシーリアって子に会ってそれからね。だからアンタも来て」
俺を睨むデイジーに、両手を合わせ何度も頭を下げた。
廃墟に着き入り口のドアをノックする。
「あ、ケイゴさん!今開けますね」
思わぬ客人に驚くシーリアを二人に紹介しながら中に入る。
「酷い傷ね……とりあえずこの子の部屋に行きましょ」
クレアに言われシーリアの個室へと案内する、不安げなシーリアを呼び中に入れた。
「人さらいねぇ……つらい目にあったわね。」
「……でも、ケイゴさんが助けてくれたから……」
シーリアが俺を見る。よせ照れくさい、シーリアから目を背けた。
「ゴブリンにコボルトまで……」
シーリアを見ながら考え込むデイジー、よその子供を助けるのは珍しいのだろうか。
「分かった、出来る限りの事はするわ。安心しておじさん」
クレアが俺を見て言う。治癒の力を自ら経験したとは言え心配ではある。二人を祈るように見ていた。
「ちょっといつまで見てんの?出てって!エッチ!」
「あぁ!すみません!」
俺とデイジーが部屋から追い出される。
部屋の前でしゃがみ込み、手を合わせて祈る。
「大丈夫だおっさん、それより今後の報告についてだ」
デイジーに言われて思い出す、依頼は失敗しているのだ。まぁ俺にとっては成功なんだが。
デイジーを食卓の椅子に案内する。
「召喚された者の特別な力とは、本来こんなにも凄いのですね」
デイジーにそう言いながら終わらない熱光線を思い出す。二人を倒す事を選択していたらと思うと血の気が引く。
「あぁ、本来ならな。」
そう言って意地悪く俺を見る。お恥ずかしい限りだ。
「だけど、アタシらみたいなのが魔王軍にも居るよ」
魔王軍、ここが廃墟になったのもそいつらが原因と聞いたが。知らない事が多すぎる、この機会に聞いておこう。
「魔王軍の召喚された者って、どういう方々なんですか?」
「いや魔王軍のは召喚術じゃない。よその世界の死者をこの世界に蘇らせる転生術だな」
ゾンビみたいなものだろうか、恐ろしい物を想像する。
「イサベル王女の召喚術と魔王軍の術師の転生術は同じような周期で行われるんだ。だからその数も似たようなもんだな」
なるほど、何度も好きなだけ出来るものでは無いのか。だからミザリア王妃は機嫌が悪かったのだな。
「だからどちらか一方がおっさんみたいなハズレを引くと戦局が大きく変わるって訳だ」
俺は国を滅ぼしかねない失敗作って訳か、そう言われてもだな。申し訳なさそうに笑っておく。
「でも安心しろ魔王軍もハズレを引いたみたいだぞ。よかったなおっさん」
シーリアの部屋のドアが開き、中からクレアが出てきた。
「終わったよおじさん、報酬は今度貰うから用意しといてよね」
シーリアが部屋から顔を出す、湿布や包帯は無く怪我は完治したようだ。
「ケイゴさん!」
立ち上がり駆け寄るシーリアを抱きしめた。耳も治っている。傷があった所に体毛が無いが、またすぐ生えてくるだろう。
「良かったなシーリア、あとは家族の所に帰るだけだな」
「……はい!」
「そうだ。食事の用意をしようか。良ければお二人も食べて行ってください」
「あ、作りかけてたんですよ。ケイゴさんは大事な話があるんでしょ?私がやりますから」
シーリアの成長に驚く、コボルト族は子供の頃から家事などするのだろうか。
「んじゃ、マスターへの報告の事だけど」
「報酬は諦めるしかないよね、言っても信じないだろうし」
やはりゴブリンは害獣のような扱いなのだろう。でなければ俺もあんな対応はされなかったはずだ。
「いや報酬は貰おう、おっさんがあのゴブリンたちとマスターを会わせれば信じるだろ」
「えっ?俺がですか?」
「そんな無茶よ、私たちだって信じられずにおじさん攻撃してたのに?」
確かにこのままではあのゴブリンたちが危ないのは変わりない。今対応しておくべきだ。
「依頼が達成されない限り、またすぐに別の討伐隊が向かうでしょう。報酬は別にいいとしても俺は賛成ですね」
とは言ったもののゴブリンを町に連れて?俺が討伐されてしまうな。
ボスゴブリンも人間との距離感はまだ遠いように感じる、過去に仲間を目の前で殺されているんだ。
「じゃあおじさんはゴブリンたちを何人か森の入り口まで連れて来てよ、私たちがマスター引っ張っていくわ」
「お互いに何か手土産でもあれば信用されやすいだろうな。食料や衣類を用意させる、おっさんも何でもいいから用意させてくれ」
簡単に言ってくれる、そっちは普通に言葉が通じるだろ。俺の本質を見極める力で出来るのか?信じるしかない。
「出来ましたよ、お二人の分も有りますからね」
シーリアが食事を食卓に運ぶ。元集会所だからか食器類が多く残っていて助かった。
俺が町で仕入れていた食材やレシピに有っただろうか、シチューのようだな。
「まぁ!美味しそう!いただいて帰りましょ、デイジー」
「ん?そうだね、マスターとの交渉の件も詰めておきたいし」
良かった、まだまだ聞いておきたい事が山ほど有る。俺も配膳を手伝い食卓に四人が揃った。
「美味しいじゃない!シーリアちゃん、お料理上手ね」
「あぁ、酒場のマスターのより美味いんじゃないか?」
二人が褒めるとシーリアが照れながら笑う。俺も自分の事のように嬉しいな。
「このあとシーリアちゃんはどうするの?」
「はい、次の物資が来る時に衛兵に頼もうかと。チャドという男なんですが」
「あぁアイツか。ふざけたヤツだけど……ちょっとおだてれば利用出来そうだな」
チャドのやつデイジーと何か有ったのだろうか。酷い言われようだが分かる気もする。
「さっきデイジーさんと話してたんですが、魔王軍のハズレってどういう存在なんでしょうね。なんだか他人とは思えません」
「あ、転生術の事?魔王軍でのハズレってすぐ処分されそうだけどね。それがそうでもないらしいのよ」
「おっさんが召喚される一月くらい前だったかな、ソイツまだ生きてんだね」
二人は何故こんなに魔王軍の内情に詳しいのだろう、聞いてもいいのだろうか。
「お詳しいんですね、二人とも」
「ん?魔王軍も人間も一枚岩では無いって事だよ。おじさんだって魔王軍で話題にされてんじゃない?」
いつの世も同じだな。それが戦局を左右する事なら情報戦も苛烈だろう。
食事を終え二人は満足して帰っていった。女性二人で夜道を帰らせるのは一瞬気が引けたが、彼女たちを心配する必要は無いだろう。
「助かったよ。有難うな、シーリア」
「いえ……私こそ本当に有難う御座いました。ケイゴさん」
二人で洗い物を済ませて食器を片付ける。いつも食事の後はみさきと二人で洗い物だったな。みさきとやれば面倒な事も楽しかった。
「……もうすぐお別れなんですね。」
暖炉の火を見つめ、シーリアが呟く。別れを惜しんでくれているのか。
「あぁ、そうだな。本当の家族に会えるんだ」
シーリアが立ち上がり個室に向かう。
「ケイゴさんだって……本当の家族でしたよ」
そう言って中に入っていった。あんまり泣かせるな。
読んでいただいた全ての方に感謝します。
物語の中で存在感を増す魔王軍。




