第二十四話:水晶ゴーレムと結晶の話 (2/3)
「今日は、君に、君自身の体の『取扱説明書』を教えてやる!世界で一番美しくて、美味い、『食べる宝石』でな!」
俺は厨房に立つと、まず、鍋に水と、棒状の寒天を入れて火にかけた。そして、棚の奥から、今日の主役となる、真っ白な砂糖をたっぷりと取り出す。
「嬢ちゃん、よく見とけよ。これから、あんたの体の仕組みを、この鍋の中で再現してやる」
俺は、寒天が完全に溶けた鍋に、大量の砂糖を加え、木べらでゆっくりと混ぜながら煮詰めていく。
「あんたの体が、魔力を取り込むと大きくなるのはな、この砂糖水が冷えると結晶になるのと同じ理屈だ。砂糖の小さな粒が、規則正しく手を取り合って、どんどん大きな塊になっていく。これが、『結晶成長』だ」
俺はそう説明しながら、煮詰まった砂糖水を、型に流し込む。ふわりと、甘く、優しい香りが店の中に立ち込めた。
カウンターの向こうで、水晶の少女が、その様子を、固唾をのんで見守っている。
《わたくしの体も、これと、同じ……?》
「ああ。だが、ここからが肝心だ。成長し続けるだけじゃ、いずれ、ただの大きな砂糖の塊になっちまう。美しい宝石であるためには、その成長を、優しく止めてやる必要があるんだ」
俺は、店の裏手で育てているハーブの中から、レモンバームの葉を数枚摘んできた。その葉をすり鉢で丁寧にすり潰し、香りの良いエキスを抽出する。
「こいつが、今日の魔法の主役、『阻害剤』だ。このハーブに含まれる特別な成分が、砂糖の粒が手を取り合うのを、そっと邪魔してくれる。完全に止めるんじゃない。これ以上は大きくならないように、優しく、成長の勢いを和らげてくれるんだ」
俺は、そのハーブのエキスを、まだ固まりきっていない砂糖水に、数滴、静かに垂らした。
そして、食用の色素で、彼女の瞳のように、美しい青色と、夕焼けのような茜色に、淡く色付けをしていく。
「さあ、これで準備は万端だ。あとは、こいつが固まるのを待つだけだ」
俺は、宝石のようにキラキラと輝く液体が入った型を、彼女の前にそっと置いた。
水晶の少女は、その型の中を、ただじっと見つめていた。
そこには、これから生まれようとしている、小さな、美しい宝石の世界が広がっていた。そして、それは、彼女自身の、新しい未来の姿でもあった。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます!皆さんの感想や、フォロー・お気に入り登録が、何よりの励みになります。これからも、この物語を一緒に楽しんでいただけたら幸いです。




