表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気まぐれ食堂ねこまんま〜動物好きおっさんの異世界飯テロ日誌〜  作者: はぶさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/300

幕間:姫君の鱗と再生の涙

わたくしは、ナーガ。悠久の時を生きる、誇り高き水の一族。

その証は、この体に輝く、虹色の鱗。一枚一枚が、わたくしたちの歴史であり、魔力の源であり、そして、何よりの美の象徴でした。


その、誇りだったはずの輝きが、失われようとしていました。

年に一度の、神聖なる再生の儀式であるはずの「脱皮」が、今年は、わたくしを蝕む呪いと化したのです。古い皮は、醜い瘡蓋のように体にこびりつき、新しい鱗は、その下で輝く力を失っていました。


痒い。痛い。そして、何よりも、醜い。

鏡に映る自分の姿を見るたびに、心が引き裂かれそうでした。民の前に、この姿を晒すことなど、到底できません。わたくしは、ナーガの姫として、終わってしまったのだ、と。絶望が、冷たい毒のように、わたくしの心を蝕んでいきました。


そんな時、風の噂で耳にしたのです。森の奥に、どんな悩みも解決するという、不思議な料理人がいると。

料理人が、この呪いを? 馬鹿げた話です。わたくしの体は、どんな高名な癒し手にも、治せなかったのですから。でも、わたくしには、もうそれにすがるしかありませんでした。


お店の主、ぶっさん様は、わたくしの痛々しい姿を見ても、憐れむでもなく、ただ静かに、その優しい瞳で見てくれました。そして、わたくしの体の不調を、まるで熟練の職人が織物の不具合を見抜くように、いとも簡単に見抜いてみせたのです。「コラーゲン」と「ビタミンC」。わたくしの体に足りなかった、「絹糸」と「職人」の名前を、初めて知りました。


彼が作ってくれたのは、乳白色に輝く、不思議なスープでした。

一口、それを口に含んだ瞬間、わたくしの中で、奇跡が始まったのです。

温かく、優しい旨味が、乾ききっていた体の隅々まで、まるで清らかな泉の水のように、染み渡っていく。一口食べるごとに、失われていた潤いが、体の内側から、満ちてくるのが分かりました。


そして、食事が終わる頃、それは起きました。

あれほど頑固にこびりついていた古い皮が、するり、と、音もなく剥がれ落ちたのです。

そして、その下から現れたのは…わたくし自身が見惚れるほどに、美しく、力強く、虹色に輝く、新しい鱗でした。


涙が、溢れて止まりませんでした。

でも、それは絶望の涙ではありません。失われた誇りを、美しさを、取り戻した、歓喜の涙でした。


ぶっさん様、ありがとうございます。

あなたの作ってくれた、あの温かいスープは、わたくしの鱗だけでなく、傷つき、くすんでいた、わたくしの魂まで、洗い清めてくれました。


もう、わたくしは迷いません。

この、誰よりも美しく輝く鱗を胸に、誇り高く、民を導く姫として、生きていくのです。


ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます!皆さんの感想や、フォロー・お気に入り登録が、何よりの励みになります。これからも、この物語を一緒に楽しんでいただけたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ