第二十三話:ナーガの姫君と美肌スープ(2/3)
「今日は、君の体に、最高の絹糸を、腹一杯補給してやる。君が、今までで一番美しく輝くための、特別な料理でな!」
俺は厨房に立つと、まず、店の奥の貯蔵庫から、ずっしりと重い、鶏の手羽先をたっぷりと取り出した。
「姫さん、よく見ときな。こいつが、あんたの新しい鱗を作るための、極上の『絹糸』の素だ」
俺は、鍋に手羽先と、たっぷりの香味野菜、そしてショウガを入れて、ひたひたの水を注ぎ、火にかける。
「この鶏の手羽先や、軟骨みてえな部位にはな、あんたが失っちまった『コラーゲン』が、これでもかってくらい詰まってるんだ。こいつを、時間をかけてじっくり煮込むことで、体に吸収されやすい、とろとろの『食べる美容液』に変わるのさ」
俺はそう説明しながら、鍋の火加減を調整し、コトコトと、静かに煮込み始める。店の中に、鶏の優しい出汁の香りが、ゆっくりと満ちていった。
カウンターの向こうで、ナーガの姫君が、その香りを吸い込むように、静かに目を閉じているのが分かった。
《コラーゲン……。それが、わたくしの鱗の、輝きの源……》
「ああ。だが、絹糸だけじゃ、美しい織物は作れねえ。その糸を、しっかりと織り上げるための、職人の腕が必要だ。その役割を果たすのが、『ビタミンC』だ」
俺は、スープを煮込んでいる間に、付け合わせの準備を始めた。森で採れた、色とりどりの新鮮な葉野菜と、レモンのように酸味の強い、数種類の柑橘系の果実。
「この酸っぱい果実にたっぷり含まれてるビタミンCが、体の中でコラーゲンを作るのを、強力にサポートしてくれる。いわば、最高の絹織物を作るための、最高の職人ってわけだな」
俺は、その果実を絞って、新鮮なオリーブオイルと岩塩を混ぜ、特製のドレッシングを作る。そして、それをたっぷりと、葉野菜にかけた。
やがて、鍋の中の手羽先は、箸でつつくだけで、ほろりと骨から肉が外れるほど、柔らかく煮込まれていた。スープは、溶け出したコラーゲンで、美しい乳白色に色づき、とろりとした濃度になっている。
「お待ちどう。内側から輝く、美肌再生フルコースだ」
俺は、湯気の立つ温かいスープを深い器に注ぎ、新鮮なサラダを添えて、彼女の前にそっと置いた。
「さあ、まずは、このスープからだ。君の体に、最高の絹糸を、直接届けてやる」
ナーガの姫君は、目の前に置かれた、白く輝くスープを、ただ呆然と見つめていた。その瞳には、失いかけていた誇りの光が、再び灯り始めているようだった。
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