第二十二話:サテュロスと腸脳相関の話 (2/3)
「今日は、君の心と腸に、最高の応援団を送り込んでやる。君の魂が、もう一度、陽気なメロディーを奏でたくなるような、特別な料理でな!」
俺は厨房に立つと、まず、丁寧に研いだ米を土鍋に入れ、火にかけた。そして、棚の奥から、今日の主役となる、日本の食卓の魂ともいえる食材たちを、次々と取り出していく。
「旦那、よく見とけよ。あんたのその、沈んじまった心と、疲れ切った腹を、同時に叩き起こす、魔法の菌たちだ」
俺は、大きな甕に入った自家製の味噌と、醤油麹に漬け込んでおいた魚の切り身、そして色とりどりの野菜で作った漬物の樽を、サテュロスの青年に見せる。
「この味噌や醤油麹、漬物みてえな『発酵食品』にはな、『善玉菌』っていう、お腹の中を元気にしてくれる、小さな応援団が、これでもかってくらい詰まってるんだ。こいつらが、あんたの荒れちまった腸内環境を整えて、腹の調子を元に戻してくれる」
俺はそう説明しながら、まず、味噌汁の準備を始めた。鍋に昆布とキノコの出汁を張り、さいの目に切った豆腐と、ワカメを入れる。
カウンターの向こうで、サテュロスが、不思議そうな顔でこちらを見ている。
《菌…? 腹を元気にする…?》
「ああ。そして、ここからが肝心だ。腹が元気になると、その健康な信号が、脳、つまり心に届く。そうすりゃあ、今まで感じていた不安やストレスが和らいで、心が自然と、上を向くようになるんだ。腹が笑えば、心も笑う。そういうこった」
俺は、醤油麹に漬け込んで、旨味が凝縮された魚を、網の上でじっくりと焼き上げていく。醤油の焦げる、香ばしい匂いが、店の中に立ち込めた。その匂いは、ただ食欲をそそるだけでなく、どこか心を落ち着かせる、懐かしい香りだった。
炊き立てのご飯、豆腐とワカメの味噌汁、こんがりと焼けた魚、そして数種類の彩り豊かな漬物。派手さはないが、一つ一つが、生命の力に満ち溢れている。
「お待ちどう。心を躍らせる和定食だ」
俺は、湯気の立つお盆を、サテュロスの青年の前に、そっと置いた。
彼は、目の前に並べられた、素朴で、しかし、今まで感じたことのない、不思議な力強さを放つ料理の数々を、ただ呆然と見つめていた。
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