第十九話:鬼火と生命の燃料の話(2/3)
「今日は、君の魂に、春まで燃え続ける、最高の燃料を、腹一杯補給してやる!」
俺は厨房に立つと、まず、大きな鉄鍋にたっぷりの出汁を張った。そして、棚の奥から、今日の主役となる食材たちを、次々と取り出していく。
「坊主、よく見とけよ。あんたのその光の源である『リン』って成分はな、いろんな食材に含まれてる。特に、こいつらだ」
俺は、まな板の上に、脂の乗った豚のバラ肉と、真っ白な豆腐、そしてふっくらとした油揚げを並べてみせた。
「この豚肉や、豆腐や油揚げの原料である大豆にはな、生命活動に不可欠なリンが、豊富に含まれてるんだ。こいつが、あんたの光を、もう一度強く輝かせるための、直接的な材料になる」
俺はそう説明しながら、豚肉と、大根、人参、ごぼうといった根菜類を、食べやすい大きさに切っていく。
ストーブの前で、鬼火が、わずかにその光を強くしたように見えた。
《りん……。それが、僕の光の、もと……》
「ああ。だが、ただ材料を食うだけじゃ、弱った今のあんたの体には、うまく吸収できねえかもしれん。だから、こいつの力も借りる」
俺は、大きな甕から、自家製の味噌をたっぷりとすくい上げた。大豆を発酵させて作った、生命の力が凝縮された調味料だ。
「この味噌が、今日の料理の肝だ。大豆を発酵させて作る味噌にはな、栄養素を分解して、体に吸収しやすくするための『酵素』ってやつが、たっぷり含まれてるんだ。こいつが、弱ったあんたの体に、効率よくエネルギーを届けるための、最高の案内役になってくれるのさ」
俺は、鍋に根菜と豚肉を入れて火にかけ、じっくりと煮込んでいく。野菜の甘みと、豚肉の旨味が、出汁の中に溶け出していく。店の中に、心を落ち着かせる、優しい香りが満ちていった。
具材が柔らかくなったら、豆腐と油揚げを加え、最後に、味噌を溶き入れていく。ふわりと立ち上る、味噌と出汁の、日本人の魂に直接響くような、芳醇な香り。
「お待ちどう。魂まで温まる、具沢山の特製とん汁だ」
俺は、湯気の立つお椀を、鬼火の前にそっと置いた。彼は食事を摂れない。だが、この湯気にこそ、彼の魂を癒す、生命のエネルギーが凝縮されているはずだった。
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