第十四話:デュラハンと飢餓ホルモン (1/3)
「おい、体!貴様、聞こえんのか!我は腹が減っているのだ!エネルギーが足りぬと、脳が!この私が!そう言っているのだぞ!」
生首が、自分の体を睨みつけて怒鳴る。
しかし、体の方は、困ったように、自分のお腹のあたりを、鎧の上からポンポンと叩いてみせた。「空腹ではない」と、そう主張しているかのようだ。
「ああ、もう!話にならん!だから、最近の貴様は動きが鈍いのだ!このままでは、愛馬の世話もできなくなるぞ!」
「……(こくり)」
「分かっているなら、何か口にしろ!」
「……(ふるふる)」
なるほど。これはまた、厄介な問題だ。
味覚を感じる「首(脳)」と、食事を摂取する「体」。その二つの意思疎通が、全くうまくいっていない。
「まあまあ、落ち着きな。とりあえず、話を聞こうじゃねえか」
俺が割って入ると、生首は、はぁ、と大きなため息をついた。
「聞いてくれ、店主。この体、最近、全く『空腹』というものを感じんのだ。私がどれだけ『エネルギーが不足している』と訴えても、『腹は空いていない』の一点張りでな。このままでは、二人とも動けなくなってしまうというのに!」
俺は、彼女たちの奇妙な言い争いを聞きながら、一つの答えにたどり着いていた。
これは、精神論や、ただのすれ違いじゃない。もっと根本的な、体の仕組みの問題だ。
「嬢ちゃんたち、そりゃあ、『飢餓ホルモン』の伝達不全だな」
「きがほるもん…?」
「ああ。生き物が『腹が減った』と感じるのはな、胃袋から出る『グレリン』ってホルモンが、血に乗って、脳に『飯を食え!』って信号を送るからなんだ。だが、あんたたちの場合、その信号を出す胃袋(体)と、信号を受け取る脳(首)が、物理的に離れちまってる。だから、いくら体が信号を出しても、それが首に届かねえ。体が空腹を感じないのは、当然っちゃ当然なんだ」
俺の説明に、生首は「なんと!」と、目を見開いた。
「じゃあ、どうすれば…。このままでは、本当に…」
「ホルモン信号がダメなら、もっと原始的な感覚に訴えかけるしかねえな。よし、任せとけ。お前さんたちの体に、無理やりにでも『食欲』を思い出させる、最高の料理を作ってやる」
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