第三話:ぷるぷるスライムと目に見えない骨 (3/3)
プルンは、目の前で輝く宝石のようなデザートを、ただじっと見つめていた。その体は、期待と不安で、わずかにぷるぷると震えているようだった。
「さあ、食ってみな。見た目は綺麗だが、遠慮はいらねえぞ」
俺が促すと、プルンは意を決したように、その広がった体の一部をゆっくりとゼリーに伸ばした。
そして、じゅわ……と、ゼリーを体の中に取り込んでいく。
一口、また一口と、プルンがゼリーを吸収していくにつれて、彼の体に驚くべき変化が起こり始めた。
だらしなく床に広がっていた彼の体が、中心に向かってきゅっと収縮していく。表面には、失われていた艶と張りが戻り、まるで風船に空気が入るように、みるみるうちに綺麗な球体になっていくではないか。
そして、皿の上のゼリーをすべて吸収し終えた時、プルンはそこに、見事な「ぷるんぷるん」のスライムとして、その姿を取り戻していた。
《あ……あれ……? 僕の体……ちゃんと、丸い……!》
驚きと喜びに満ちた心の声が響く。
そしてプルンは、その場で一度、ぐっと体を沈ませたかと思うと、
「ぼよんっ!」
と、元気な効果音が聞こえてきそうなほど、高く、高く、天井に届かんばかりにジャンプした。
《跳ねた! 僕、跳ねられたよ! 旦那、見て! ぼよん、ぼよーん!》
プルンは店の中を、嬉しそうに、楽しそうに、何度も何度も跳ね回る。その姿は、最初のだらしない液体状の彼とはまるで別物だ。俺は壁に寄りかかり、その微笑ましい光景を満足げに眺めていた。
「はは、そりゃ良かったな。これで仲間たちと一緒に遊べるだろ」
一通り跳ね回って満足したのか、プルンは俺の足元にやってきて、体をぺこぺこと上下させて感謝を伝えてきた。
《旦那、ありがとう! 本当にありがとう! これで僕、またみんなと鬼ごっこできるよ!》
「おう。だが、また体がゆるくなったら大変だろ。これを持って行きな」
俺は厨房から、板状のゼラチンを数枚、布に包んで持ってきた。
「サプリメントみたいなもんだ。調子が悪くなったら、こいつを少し水でふやかして飲むんだぞ。まあ、一番はちゃんと飯を食うことだがな」
プルンは、その包みを大事そうに体の中に取り込むと、もう一度深々と頭を下げた。
《うん! 絶対、大事にする! 旦那、本当にありがとう!》
そう言うと、プルンは元気よく「ぼよん!」と一回跳ねて、今度はちゃんとドアノブに体当たりして器用にドアを開け、森の中へと帰っていった。
「やれやれ、今日の客も賑やかだったな」
俺は床に残った、プルンが跳ねた跡を拭きながら、小さく笑った。
骨のない生き物に、目に見えない骨格を作ってやる。フードコーディネーターだった頃には、想像もしなかった仕事だ。
だが、悪くない。実に、やりがいのある仕事じゃないか。
俺は次の不思議な客に思いを馳せながら、仕込みを再開するのだった。
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