表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気まぐれ食堂ねこまんま〜動物好きおっさんの異世界飯テロ日誌〜  作者: はぶさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/300

第二十七話:トレントと脳科学の話(1/3)

「くそっ、やっぱりこの世界の小麦粉だと、あのモチモチ感は出ねえか…」

俺、仏田武ことぶっさんは、石窯で試作していたピザ生地をこねながら、一人ごちていた。故郷の味を再現しようと試行錯誤するのも、この異世界スローライフの楽しみの一つだ。

「まあ、これはこれで、素朴で悪くねえけどな」

そんなことを考えていた、その時だった。

ダンダンダン!

と、店のドアを、まるで壊れてしまうのではないかというほど、激しく叩く音がした。


「おっと、こりゃまた、随分と慌てたお客さんだ」


俺がドアを開けると、そこに立っていたのは、第五話で助けた、ドライアドの少女だった。彼女の美しい緑の髪は乱れ、その瞳は、今にもこぼれ落ちそうなほどの涙で潤んでいる。


「嬢ちゃん、どうしたんだい、そんなに慌てて。まあ、中に入りな」


俺が店の中に招き入れると、彼女は、わっと泣き崩れた。


《ぶっさん様、大変なんです!長老様が…!『一番星の名前を忘れてしまった』『千年前に月が歌ってくれた子守唄が、もう聞こえない』と…!長老様の葉が色を失うたびに、この森から、大切な物語が一つ、また一つと、消えていってしまうのです…!》


長老。この森の「生き字引」ともいえる、古代から生きる賢者、トレント(樹木人)のことだ。

なるほど。森の歴史そのものが、失われかけているのか。これは、ただ事じゃない。


(…記憶が霞んで消えていく苦しみか。だんだんと俺の顔も分からなくなっていった、オフクロの寂しそうな目を思い出すぜ…。よし、人ごとじゃねえ。最高の栄養を、あのじいさんの脳みそに直接ぶち込んでやる!)


俺は、内心で固く拳を握りしめた。


「嬢ちゃん、案内してくれ。長老の様子を、この目で見なきゃ始まらねえ」


俺は、ドライアドの少女に案内され、森の最も深く、神聖な場所へと向かった。

そこにいたのは、天を突くほど巨大な、一本の大樹だった。トレントの長老だ。だが、その姿は、俺が噂に聞いていたような、生命力に満たたものではなかった。葉は色を失って灰色になり、その幹には、深い疲労が刻まれている。


《…おお…おぬしが、噂の…料理人か…》

まるで、遠くから風に乗ってくるかのように、途切れ途切れで、ノイズ混じりのテレパシーが、直接、俺の脳に響いてくる。

《…もう、わしの記憶も、長くは…もたぬ…》


俺は、長老の足元、その根が張る土壌を、そっと手で掬い上げた。

(…痩せた土だ。これじゃあ、必要な栄養素を、十分に吸い上げられねえ)


俺は、長老と、心配そうに見上げるドライアドの少女に向き直った。


「長老の不調は、呪いでも病でもねえ。あんたたち植物で言うところの、根腐れみてえなもんだ。だが、問題は土の中の根っこじゃねえ。記憶を司る、『思考の根』の方だ。人間で言うなら、脳の栄養失調だな」


《のう…?》


「ああ。脳が正常に働いて、記憶を保つには、特別な栄養素が必要なんだ。今の長老は、それが圧倒的に足りてねえ。だから、記憶が消えていくのさ」


俺はニヤリと笑うと、森の存亡の危機に、力強く宣言した。


「よし、任せとけ。今日は、長老の脳みそに、最高のガソリンを届けてやる!森の記憶を、絶対に消させやしねえ!」


ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます!皆さんの感想や、フォロー・お気に入り登録が、何よりの励みになります。これからも、この物語を一緒に楽しんでいただけたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ