表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気まぐれ食堂ねこまんま〜動物好きおっさんの異世界飯テロ日誌〜  作者: はぶさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/300

幕間:孤独な炎と初めての温もり

俺の体は、呪われているんだと、そう思ってた。

この、内側から燃え盛る炎が、俺から全てを奪っていく。

雪の上に落ちていた、一枚の青い羽根。綺麗だ、と思った。ただ、そっと触れてみたかっただけなのに、俺の指先が触れる前に、それは儚い灰になった。


また、壊してしまった。

美しいものも、温かいものも、この体はすべてを拒絶し、焼き尽くす。掌に残るのは、いつも虚しい熱だけだ。雪の冷たさだけが、呪われた自分の輪郭を、悲しいほどはっきりと教えてくれる。


だから、あの食堂を見つけた時も、中には入れなかった。

あそこには、温かい灯りと、優しい匂いがあったから。俺が近づけば、きっと、あの温かささえも、焼き尽くしてしまう。


そんな時、店の主が、外に出てきてくれたんだ。ぶっさんと名乗った彼は、俺の体を、少しも恐れなかった。それどころか、俺の呪いを、「温度計が壊れてるだけだ」と、いとも簡単に言いのけた。


彼が作ってくれたのは、雪の上で食べる、不思議な鍋料理だった。

ぐつぐつと煮える鍋。そこから立ち上る湯気は、温かいのに、何も燃さない。俺の体から溢れる、すべてを焼き尽くす熱とは違う。なんて、優しい熱なんだろう。


「この鍋が、お前さんを『みんな』の輪の中に、きっと帰してやるさ」

彼の言葉は、凍てついていた俺の心を、じんわりと溶かし始めた。


一口、食べた。

優しい出汁の味が、荒れ狂っていた俺の体の中の炎を、まるで、穏やかな雨が鎮めるように、すーっと、静めていく。食べるたびに、体が、心が、満たされていくのが分かった。


そして、食事が終わった時、彼は、雪の中から、凍った一枚の葉を拾い上げた。

「ほら、やってみな」

怖かった。また、灰にしてしまう。

でも、彼の目は、俺を信じていた。


おそるおそる、指先を、葉に触れさせた。


葉は、燃えなかった。

代わりに、俺の指先から伝わる穏やかな熱が、葉を覆う霜をゆっくりと溶かしていく。呪いだったはずの力が、氷を清らかな水滴に変え、その下から、美しい緑色の葉脈が瑞々しい姿を現したのだ。


涙が、溢れて止まらなかった。

マグマのように熱い、俺自身の涙が。


これが、葉っぱの筋の感触…。これが、雪の冷たさ…。俺は、今まで、何も知らなかったんだ。

初めて、世界に触れられた。初めて、俺の力が、何かを「生かした」。


ぶっさん様、ありがとう。

あなたの作ってくれた、あの温かい鍋は、俺の体の炎を鎮めてくれただけじゃない。その炎を、世界を温めるために使うんだと、そう、心に誓わせてくれた。


この温かい両手は、もう何かを焼き尽くすためだけのものじゃない。確かな希望を掴むためのものだ。

俺はもう、独りの呪われた怪物じゃない。ただの、一人の若者だ。


ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます!皆さんの感想や、フォロー・お気に入り登録が、何よりの励みになります。これからも、この物語を一緒に楽しんでいただけたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ