第三話:ぷるぷるスライムと目に見えない骨 (2/3)
「ああ、目には見えない、魔法みたいな骨格だ。とびきり美味いデザートでな!」
俺は厨房に入ると、棚の奥からとっておきの食材を取り出した。それは、とある獣の骨や皮を煮詰めて作ったという、半透明の板状の塊。この世界では使い道が分からず安く売られていたが、俺の目には宝の山に見えた。こいつの正体は、故郷の言葉で言う「ゼラチン」だ。
「いいか、プルン。よく聞いとけよ。お前さんの体は、ほとんどが水分だ。だから、その水分を支えるための『骨格』が必要になる」
俺はゼラチンを水でふやかしながら、床に広がったままのプルンに語りかける。
《こっかく……でも、僕、骨なんてないよ……》
「今から作ってやるんだよ。このゼラチンってやつはな、タンパク質の一種で、水に溶けて冷えると、目に見えないくらい細かーい網目状の骨組みを作るんだ。その網の隙間に水分をがっちり閉じ込めて、液体をぷるぷるの個体に変える力がある。プリンやゼリーが固まるのは、全部こいつのおかげなんだぜ」
俺は鍋に、森で採れたベリー系の果物を数種類入れ、甘みを加えて煮詰めていく。甘酸っぱい香りが、厨房にふわりと漂った。
火から下ろした果物のソースに、ふやかしたゼラチンを加えて、余熱でゆっくりと溶かしていく。完全に溶けたら、ガラスの器に流し込んだ。
「さあ、ここからがショータイムだ」
俺は器を、この世界で言う「氷魔法石」っていう便利な道具が入った箱の中にそっと置いた。ひんやりとした冷気が、ゼラチンが仕事をするのを助けてくれる。
待つこと数分。
鍋の中ではただの液体だったものが、見る見るうちに固まっていき、透き通った赤い宝石のような輝きを放ち始めた。
《わぁ……きれい……》
プルンから、感嘆のため息のような心の声が聞こえる。
俺は仕上げに、ミントの葉を一枚そっと飾り付けた。太陽の光を浴びてキラキラと輝く、ルビーのようなゼリー。それは、もはや料理というより、一つの芸術品のようだった。
「お待ちどうさん。特製、ぷるぷる復活ベリーゼリーだ」
俺は完成したゼリーを、床にいるプルンが食べやすいように、平たい皿の上に乗せて、彼の目の前にそっと置いた。
「こいつを食えば、お前さんの体の中でも、このゼリーと同じことが起きる。失われた体の骨格が、きっと元に戻るはずだ」
プルンは、目の前で輝く宝石のようなデザートを、ただじっと見つめていた。その体は、期待と不安で、わずかにぷるぷると震えているようだった。
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