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3.楽しい誘拐計画

シオンを誘拐するには、王妃やタレスの目を掻い潜って、シオンに近付かなければならない。

シオンは基本、王妃の側にいるし、王妃が不在でも、タレスの息のかかった侍女達がシオンの側にいる。

どうすればいいのか。

取り敢えず、王妃の居室の外にある中庭から、シオンの様子を探れないか、行ってみる事にした。


ーーいた。

何で?侍女は?

シオンは中庭で一人、膝を抱えて泣いていた。

その姿は前世の弟を思い出させた。

弟は両親に置いて行かれた後、いつも膝を抱えて座り込んでいた。

「いい?

一人で置いて行かれたら、その場で座って待ってな。

絶対、姉ちゃんが見つけるから」

と私が何度も弟に言い聞かせたからだ。

私が死んだ後、弟は何処かで座り込んで、私を待っていたのだろうか?

そう考えると、心臓がギュッと締め付けられた。


「…ねえちゃ。

どこにいるのぉ?」

シオンの言葉に、私は耳を疑った。

シオンが私を呼んだ事はない。

王妃は絶対、シオンを私に近付けなかったから。

だけど、もし呼ぶとしたら「姉上」か「お姉様」だろう。

私を「姉ちゃん」と呼ぶのは、前世の弟だけ。


「…シオン!

あんた、シオンなの?!」

私が言うと、シオンは泣き顔のまま、顔を上げた。

「…ねえちゃ?」

超絶美形のシオンの顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。

だけど間違いなく、この子は前世の私の弟だ。

「ねえちゃ‼」

全力で抱き着いてくる弟を抱き締めながら、私は声を上げて泣いた。


前世の父は私の死後、弟を趣味の渓流釣りに連れて行き、仲間との話に夢中になって、弟の存在を忘れたそうだ。

弟は真っ暗闇の中、一人で取り残され、父を探して歩き出した所、ぬかるみに足を取られ、川に落ちたらしい。

その話を聞いた私は、血管が切れそうだった。

あれほど‼

弟を危険な所に連れて行くなと言ったのに‼

父にしてみれば、口うるさい私がいなくなったので、自由に弟を連れ回せると思ったのだろう。

最後まで、無責任な親だった。


弟が前世を思い出したのは、つい先程だそうだ。

幼い弟からすれば、前世と今世と、2回分の記憶がある意味が分からずパニックを起こし、取り敢えず、前世の姉である私を探そうとして、迷子になったらしい。

私の言いつけを守り、その場で動かず座って待っていたのだと。

笑顔で話す弟に、私はまた号泣した。


弟によれば、今世の母親である王妃はシオンに関心がないらしく。

シオンがいつも王妃の側にいたのは、他に行く場所がないからで、親から関心を持たれない子供であるシオンを、侍女達も最低限の世話だけして、放置していたらしい。

「あんたも私も、前世も今世も、親ガチャ失敗したね…」

私が言うと、シオンもラヴィも「?」という顔をしていた。

そういえば、ラヴィも親ガチャ失敗だよなあ。

よし、決めた!

今世はシオンもラヴィも、まとめて幸せにしてやる‼


シオンを誘拐するにも、王妃の情報を集めなければ、無理だ。

私は侍女になりすまし、ラヴィは美少年顔の真価を発揮し、城中の情報を集めて回った。

シオンはその間、何事もなかったかのように、王妃の側にいた。

そして、1週間後、私は堂々と城の正門から、シオンとラヴィと一緒に、私の生母の実家であるクール帝国に向かった。




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