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14-4 【視点M】五十鈴モモ、奴は四天王の中でも最強

 俺の名前はサモナ・アク・ローム。魔王のような何か。


「ずーるーいー! 私も侵略したいー!!!」


王の間に、魔王軍四天王最強の魔法使い、五十鈴モモさんの喚き声が響く。


「モモちゃん? せっかくサモおじさんが新しい顔を用意してくれたんだから、しっかりくっつくまでじっとしてないと」


「ぶー!」


大ブーイングのモモさんの横で、召喚された二人目の魔法使い、二葉クルミさんが彼女をあやす。


「クルミさん? サモおじさんって……、俺まだ二十代なんだけど」


「二十歳過ぎたら、男はみんなおじさんです」


「そう……じゃあ女子は? ていうか、クルミさんって年いくつなの?」


「二十歳過ぎた女性に年齢を聞くのも、おじさんです」


「理不尽……!」


するとくるみ割り人形がデザインされたステンドグラスの窓のそばで、魔王軍四天王戦士にしてクルミさんの実兄、二葉ライ君が不敵に笑う。


「それにモモちゃん……この侵略計画は、君が殺されたことに対する人類への報復なんだ。君が生きてることがバレたら、攻め入る言い訳ができなくなっちゃうでしょ?」


「ブー! ブー!」


ブーイングの豚と化したモモちゃんを、魔王軍四天王僧侶、カブトさんが抱え上げその巨大な鎧の肩に乗せる。


「わー! 高い高ーい!」


「……」


相変わらずカブトさんは無言だが、モモさんの面倒を見るのは上手い。それにしてもこの幼児、モモさんこそ何歳位なんだろうか。玉座からぼんやりと二人を眺めていると、俺の考えていることを察したのか、ライ君がまた不敵に笑う。


「見た目通りの年齢なのだとしても、敵とは言えこんなに小さな子の首を刎ねられるなんて……人類一人目の勇者、一ノ瀬ヒイロさんと言う人は相当な手練れだね」


「……」


「その辺について何かコメントはあるかい? 勇者ヒイロの一番弟子、四谷マシロ君」


ライ君が、王の間の隅で明らかに居心地の悪そうに突っ立っている召喚された二人目の戦士、マシロ君に話を振る。


「ヒイロさんは、正義の味方じゃない。人類の味方だ。……だから俺も、人類の味方をするだけだ」


マシロ君が、腕を組んだまま答える。


「なるほどね、さすがはクルミの元カレだ。割り切ることができる行儀の良い子は嫌いじゃないよ」


そう言えば、元いた世界でマシロ君とクルミさんは付き合っていたんだったか。


「私はまだ、別れたつもりはないんですけど」


「え」


「せっかく付き合ったんですから、最後まで使い切らないと」


今度はクルミさんが不敵に笑う。やはり、俺にこの兄弟を御せる気がしない。


「それで……俺の部隊のメンバーがどうなったか、そろそろ教えてほしいんだけど」


「ああ……今のところ、人間の死者が出たという報告は受けてないよ? ね、魔王様」


マシロ君と共に魔王城の東側から攻撃を仕掛けてきた冒険者たちは今、魔王城の結界の中の、魔族領の一角に新たに作った区域で、魔族と共に暮らしてもらっている。


「人間に割と好意的な魔族を選りすぐっているから、君の部下が殺されることはないはずだ。むしろ、魔族の死者も出てないことにびっくりしてる。冒険者なんて、問答無用で魔族を忌み嫌ってると思ってたから」


「暴走した魔族に、仲間や家族を殺された人たちもいた。襲われれば、殺し合いもする。でも、差し伸べてくれた手を振り払ってまで関係ない人に掴みかかる程、俺の仲間はバカじゃない」


「それはそれは……」


「それに、そんなことをしたらお前たちの思う壺なんだろ?」


マシロ君がライ君を睨む。


「思う壺だって?」


「保護してあげた人間が、善良な魔族を手にかければ……それこそ、王都に攻め入る良い言い訳になるだろ」


「確かに」


「でも安心して? 攻め入る予定なのは王都じゃない」


ライ君がクルミさんに目配せをする。


「東町。通称ギルドタウン」


「そう。勇者アヤメが、最近拠点にしてる町だ。今回の防衛戦で、僕だけ彼女に会えなかったわけだし……ぜひ手合わせ願いたいんだよね」


「モモだって会ってないもん!」


モモさんが治したばかりの顔を膨らませるが、ライ君は彼女の頭をポンポンするだけで視線をマシロ君に戻す。


「勇者アヤメに伝えたいなら、軟禁状態のこの魔王城から、ぜひとも自分だけの力で脱出してごらんよ。君の元カノとその兄を殺せるなら、だけどね」


「…………俺は、俺にしかできないことをする」


そう言ってマシロ君は、王の間の扉に手をかける。


「カブトさん、モモちゃん、それじゃあ私たちも、マシロ君とおいかけっこをして遊びましょう? ルールは前と一緒で、マシロ君が自分のお部屋に辿り着くまで、ね?」


元カノの提案にマシロ君が固まり、モモさんが飛び起きる。


「うん、やる!」


カブトさんも頷き、真っ赤な兜の奥の目がさらに赤く発光を始める。


「く、来るなー!」


マシロ君が一目散に逃げ出し、それをクルミさんとモモさん、カブトさんが追いかける。あの三人は割と仲良しな気がするし、やっぱりカブトさんの中身って、女子なのだろうか。


「それで魔王君……ギルドタウンへは、君もついてくる?」


「え、良いの?」


そして残された男子二人で、作戦会議を開始する。


「今回はこっちから仕掛けるんだから、残って魔王城を守る必要もないでしょ」


「じゃあ……ついていこうかな」


勇者のアヤメさんはともかくとして……賢者のサイカ君とは、いつか本気で戦ってみたい。


「次の魔王候補を潰すのは……今の魔王候補の役目だよね」


俺はまた、天井のステンドグラスを見上げる。魔王城の天井にあるのになぜか女神がかたどられているそれは……いつもと変わらない微笑を、貼り付けていた。

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