5番テーブルご指名
「あっけみさーん、5番テーブルご指名でーす♪」
「あいあーい!」
フリルだらけのピンクのドレスをまとって、5番テーブルへ向かう。
先に同僚のひとみちゃんとともえちゃんがスタンばっていて、客にウイスキーの水割りを作っていた。
「君が明美ちゃん?」
「はーい。あらこちらのお客様、顔色が悪いわ」
「株式会社ガミラスの社員様よ」
顔色がなんていうか、青い。
「酔ってないの?」
こっそりともえちゃんに聞く。
「相当呑んだから酔ってるはずよ?顔色が変わらないのよ」
「我々は、母星ガミラスの名に恥じることなく、地球征服を行う!」
すっくと立ち上がって、妙なことを口走る客。
「おー!」
他の客が同調して声を上げる。
へー。
しらけ顔で私たちは彼らを眺めた。
「あのー、お客様?ガミラスって会社、ですよね?」
「何を言う!我らが故郷の星の名だ」
ヒック。
しゃっくり。
酔ってるな。
「特別室へごあんなーい!」
声を張り上げて、他の従業員の注意を引く。
「大丈夫なの?酔ってないように見えるけど?」
黒服が耳打ち。
「大丈夫。ぐでんぐでんだから」
「お客様、特等席へご案内致します」
客の両脇をがっしりと支えて、誘導する。
カーテンで仕切られた席に座らせて、従業員はばらける。
でっかいレバーをがちょん、と下ろすと、客席が回転してどんどん速度をあげた。
「いっちょあがり」
意識のない客からみぐるみはいで、持ち物を並べる。
物騒な武器多数。
そっちは買い取り業者行き。
「ひーふーみーの、ちっ、しけてやがんな。これっぽっちしか銭持たずにきやがって」
「客はどうします?」
「いつものように店の裏口から叩き出しとけよ」
「悪い店だなぁ」
「知ってて働いてるくせに」
「地球征服狙ってる悪い奴らを一網打尽!バー竜宮城とはこの店のことさ」
「いいんかなー?」
私はポリポリ頭をかいた。