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第5話 悪夢と悪罵(1)

挿絵(By みてみん)


 エルにすっかり心を溶かされている姫奈(ひな)は、エルに手を引かれて一室に入る。


 室内の異様な状況が目に飛び込んできて、一気に血の気が引いた。


 部屋の中央に置かれたクイーンサイズのベッド。その大きなベッドシーツの上に、トランクスパンツだけを身につけた裸の若い男性が、仰向けに横たわっている。両手首を革製のベルトで合わせて縛られ、格子状のベッドボードに堅いロープで繋がれ腕の自由を奪われている。


「……!」


 男性恐怖症の姫奈にとっては、強烈な光景だ。目眩がして後ずさりしようとしたが、その男性と目が合って固まった。


 あの男性だ。エルの講演会場で、そしてマトリアルカ社内で会ったスーツ姿の男性スタッフ。確かマヒルだと名前を紹介された。


 そのマヒルがこんなところにパンイチで横たわっている。意味が分からない。姫奈は腰が抜けそうになり、エルにしがみつく。


 マヒルも目を見開いて驚きの表情を見せている。姫奈が来ることを知らされていないようだった。


 姫奈とマヒルはお互い視線が釘付けになり、顔面が真っ赤に染まる。



 理解が追いつかない姫奈は、エルに恐る恐る確認する。


「エルさん……、あの……これ……」


「これ、マヒルくん。前に会ったよね」


「いや、どうして……、彼が……ここに」


「飼ってるような感じかな。ここで」


 エルの説明に、姫奈の頭には疑問符が並ぶ。


 エルから同棲を持ちかけられた時、他に誰も同居人がいないと確認したはずだ。男性のマヒルを飼っているとは、どういうことか。


 困惑している中、姫奈は思い出した。あの時、エルに確認はしたが、「他にも女性が何人か一緒に住んでいるか」という確認だった。確かに女性の同居者ならばいない。エルは嘘はついていなかった。


 しかし、かつて男性恐怖症だったというエルが、なぜ自社の男性社員をこんな姿で辱めているのか。そして、姫奈が極度の男性恐怖症であると知っているはずなのに、なぜ同棲を勧めてこの部屋に連れてきたのか。


 姫奈は逃げ出したい衝動に駆られた。しかし、なぜか足が動かない。このままここから逃げ出せば、エルに見棄てられ二度と会ってもらえない気がするからだ。


 そして、マヒルとの視線もなぜか外せない。涙目のように潤んだ瞳で、小刻みに顔を震わせている。なぜか一言も喋らないが、見つめる姫奈に何かを伝えようとしているような気もする。初めて会った時は鳥肌が立ったが、今は悍ましさよりも憐れみのような感情が起こっている。


「エルさん……、あの……、どういうことですか……」


「私の夢は、女性優位の社会の実現。知ってるよね」


「はい、知ってます……」


「じゃあ、女性優位って何なのか。私はもっとその本質を探りたい。だから、彼を使って実験を繰り返しているの」


「……??」


 姫奈はますます混乱して眉をひそめる。エルは一体何を言っているのか。


「でも……どうして……」


「姫奈。彼は私の一部よ」


「……?」


「私にとっても、マトリアルカにとっても、彼は必要なの。そしてきっと、姫奈にも必要になってくる」


「いや……」


 姫奈は反射的に首を振った。エルの理屈は常軌を逸している。


 しかし、姫奈はエルの全てを愛するとエルに宣した。エルの全てを受け入れるとエルに誓った。エルがこの彼を「私の一部」と言うなら、自分は彼も愛して受け入れなければならないのか。無理に決まっている。


 そんな姫奈の葛藤を見透かして、エルはベッドの隣のソファーに姫奈を腰下ろさせ、優しい声で言う。


「姫奈が混乱するのも分かるわ。今日は見ているだけでいいから。私のやること、私の為すこと、今から全て見ていて。私の全てを見つめていてくれるんだよね?」


 エルは先ほどの姫奈の誓いを口にした。姫奈はどうしていいか分からず、固唾を呑む。頭の中がいろんな情報と感情でこんがらがっている。


「姫奈。いくよ」


 エルは姫奈に微笑みかけると、マヒルが唯一身につけているトランクスに手をかけた。


 姫奈は慌てて声を上げる。


「ま、待って……!」


「……姫奈、どうかした?」


「待ってくださいっ。私には……無理……」


 姫奈は手で目を覆ってしまう。


 しかしエルはその姫奈の手をつかんで払うと、姫奈の目をしかと見つめながら諭していく。


「姫奈はこれからも、私の仕事を手伝っていく?」


「も……、もちろんです」


「だったら理解して。女性優位の社会を追求していくなら、女性のことだけじゃなくて男性のことも追求していかなきゃいけないでしょ?」


「それは……」


 姫奈はエルの理屈を聞いて口を紡いでしまった。それは、エルを心酔する者であればよく知っている、エルの「対極直視理論」だ。


 エルはよく経営誌や女性誌でのインタビュー記事で、「理想の実現を夢見るならば、対極にある悪をも直視し研究していかなければならない」という話をしている。環境問題を考えるなら公害を研究する必要があるし、刑事裁判制度の改善を目指すなら犯罪に精通しなければならない。対極の悪もプロ並みに理解してようやく、理想に近づけるという理屈である。


 エルはそのことを言っているんだ、と姫奈は思った。エルの理念は女性優位の社会の実現。そのためには対極にある男性のことからも逃げちゃダメなんだ。エルはそれを自分に教えようとしているのではないか、と姫奈は脳内で瞬時に予測した。しかし、心の準備が全くできない。


 エルは姫奈のそんな理解と葛藤を読み取ったようで、姫奈の目の前で容赦なく、マヒルのトランクスを勢いよく剥ぎ取った。


「あっ……」




(ここのシーンは、有料官能版にてお楽しみください!)


挿絵(By みてみん)



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