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「主任、榛名山で不審な爆発があったそうです」
「それで?」
「現地に先行していた警官を対応に向かわせました」
「続行で」
「はい」
「我々としてはクライアントの要求にさえ応えられていればOKです。契約通り報告を上げましょう」
「はい。主任はどうされますか?現地へ向かわれますか?」
「別にいらないでしょう。ネズミはネズミ。獅子にはなれません」
「ことがセイウチの巣で起きているなら、その喩えは不適当かと」
「手厳しいね、君は」
そうだ、と、主任と呼ばれる男は指を弾いた。若い男だ。歳の程はいいとこでも三十の半ば。丸い眼鏡をかけている。
「サカナはサカナ。陸地にはあがれないってのはどうでしょう?」
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