05
「ヤツらって誰ですか?」
「ハッキングしてきてる連中。正確には分からないけど、検討はついてる。今エイちゃんが解析してくれてる」
「エイちゃんってのは?」
「ウチのPM。プロダクトマネージャー。ウチで作ってるアプリとかはだいたい彼女のお手製。そのOSも含めてね。天才だよ」
「サーバーのネットワークインターフェース外しますか?攻撃されるだけですよ」
SE界の基本、何らかの脅威が確認された端末はネットワークから切り離す。被害の拡大を防ぐための処置だ。
「それは駄目」
「でも、常識ですよ?」
「そんなことしたら、私たちからもヤツらを追えなくなる。707は囮で、かかったのはヤツらの方」
「なるほど…」
わかった風に頷いてはみたが、正直よくわからない。というか、これから俺は何をするべきなんだ?サーバーは操作できないうえ、そもそもが『囮』らしいし。
黙りこくっていたら、携帯が鳴った。当然俺のじゃない。
「もしもし、エイちゃん?」見つかった?と、また聞いている。何度か頷く。見つけたか、と嬉しそうにして言った。
「行くよ、新人くん」
「サーバーはここにあってウンとも動かない状況で、どこへですか?」
「同業者って言ってたのに鈍いねぇ」
「鋭くはないですけど、鈍いとも思いません。あなた…なんて呼べばいいですかね?の説明が足りてないだけです」
「社長でいいよ」
「社長?俺より若そうなのに」
「関係ない、年齢。意識すべきは仕事。これ見て」
デスクの上に日本地図が広げられた。社長は群馬県の中心部あたりに赤丸を落とした。
「エイちゃんがヤツらの攻撃拠点を逆探知したの。榛名山に行くよ」
「攻撃拠点って…何があるって言うんですか?」
「敵のサーバーに決まってるでしょ」
「敵のサーバーって…まぁ、確かにそうか。でも、行ったところでどうするんですか?」
「エイちゃん曰く、敵システムのセキュリティは頑強。遠隔でのハックは困難。だから、現地に行って、直接物理的に破壊してほしいんだって」
「はぁ??」
「車のキー貸したげるから運転して。あと、707も予備電源と一緒に車に詰め込んどいてよ。まだ使えるんだから」
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