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青い鳥の幸せーBLUE BIRD HAPPINESSー

作者: 大藤匠

青い鳥の幸せ-BLUE BIRD HAPPINESS-



ー『幸せの青い鳥』は、欲望を満たそうとする多くの悪漢たちに幾度も狙われて怪我をしてしまい

空を羽ばたく力を失いました。


しかし、最後の死力を尽くして辛くも追手から逃げ伸びることができたのですー




ある青年が傷を負った『青い鳥』を見つけました。


手当てしようとしてそっと近づくと。

『青い鳥』はその綺麗なスカイブルーの身体を小刻みに震わせて怯えるようにしています。


『大丈夫。もう、大丈夫だから。』

青年は優しいテノールで『青い鳥』に語り掛けます。


『・・・・・・・・・』

『青い鳥』はそのビー玉のような瞳ににわかに感涙をためて青年の手当てを受け入れます。


こうして『青い鳥』はその怪我が癒える日まで青年に保護されました。




ー毎日毎日献身的に看護する青年。


『青い鳥』と青年の絆は日々刻々と深くなっていきました。


毎日ささやかな幸福な日常・・・ー




しかし、ある平和な昼下がり。


青年が『青い鳥』を保護している事を知った悪漢が現れました。


『小僧、その青い鳥を渡せ』


『貴方は何の目的でそう言う?この子は酷い怪我をしている。』


『ち、いいからそいつをおとなしくこちらに渡せ!!』


悪漢は、静かな重圧を以って低い嗄れ声でそう言い放ちます。


!!?


瞬間的に青年との間合いを詰めて、『青い鳥』をかばう青年ともみ合いになりました。



『お願い。逃げて!!!』

青年は隙を見て、恐怖と心配で両の瞳を陰らせている『青い鳥』を空に放ちます。


『・・・・・・・・・』

『青い鳥』は声にならない声を発して未だ傷の癒えぬスカイブルーの羽で青空に飛び立ちます。


『・・・き・・・よ』



ー青年は抵抗らしき抵抗もせぬまま、悪漢ともみ合いになり後頭部を強かに床に打ち付けられて落命してしまいましたー




『青い鳥』は純粋無垢なその青年に惹かれていました。


天を見上げて夜空の星に願います。


(来世は人間に生まれ落ちますように)と・・・




ー死力を尽くして羽ばたいたために力尽き果てた『青い鳥』。

『青い鳥』の意識は常闇に還りました。


どれくらいの時が流れたでしょう・・・


再び覚醒すると

『青い鳥』の姿は人間の姿に成っていましたー




人間に成れた『青い鳥』は青年を捜しました。

数えきれない歳月の間、世界中廻り捜しました。


しかし、青年はどこにも転生していませんでした。


人間に成れた『青い鳥』は、諦めかけて想い出の地に小屋を建てて過ごすことにしました。



ー途方もない歳月を取り返しのつかない悲哀に暮れて、独り青年の帰還を待ちましたー


やがて、人間に成れた『青い鳥』がおばあちゃんになると綺麗なスカイブルーの羽をもつ『青い鳥』の姿が庭先にありました。


あの日生命を賭して散った青年も、『青い鳥』を愛おしく想って

(次の世は『青い鳥』に生まれ落ちますように)と、天に願っていたのです。


全てを知った人間に成れた『青い鳥』は

この上なく幸せな気持ちで人間としての生涯を終えました。



ー2人の想いは

種や立場、環境さえも超えて重なっていたのです。


2人は再び

大地に転生することはありませんでしたが

きっと天で伴侶に成れたのだと信じていますー



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― 新着の感想 ―
[一言] 生まれのすれ違いは悲しいけれど、心はいつも一緒だったのなら、最後は幸せだったのでしょうね。切ない、でもとても清らかなお話でした。
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