【運命の愛】は一言で
婚約破棄はありません。
ハッピーエンドです。
「エリアーデ、俺との婚約を白紙にしてくれないか?」
定例のお茶会にて、私はクッキーを落としそうになった。
婚約白紙を切り出したのは、私の婚約者であるレオリス殿下である。
王妃と母とが親しい間柄なので組まれた婚約で、なかば幼馴染ともいえる。
一応気安い間柄でもある。
「何がありましたの?何故婚約を白紙にされるのかしら?」
レオリスは顔を赤らめ夢見がちに話し出す。
彼が言う【運命の愛】のお相手はどうやら平民で、如何に真剣に彼女を想っているか語りだした。
ちょっとドン引きながら、折角王家と公爵家で組まれた縁談なのだから、まず親を通せよと言いたい。
が、我慢だ。
「すぐにハイとは言えません。が条件がありますの」
彼は条件を呑んだ。
☆☆☆☆☆
後日。
彼に………泣かれた。
「君の言う通り『君との結婚となると僕は廃嫡され平民になるかもしれない。それでも結婚してくれるかい?』って聞いてみたんだ………」
ブアッとボロボロと喚き泣きだした。
「滅茶苦茶暴言っ吐かれてっ、振られちゃったぁ……酷いよぉ……」
元々繊細王子なのだ。
私は彼を慰めつつ、一人称が俺から僕に戻っていることに苦笑する。
夢見がちで、泣き虫、そんな彼が好きだ。
だから色々頑張れるし、支えていく覚悟はある。
でも彼は物語のような恋を追い求めてるので、ボーダーラインまでは付き合ってあげようとも思うのだ。
今後破棄や白紙になったらどうするか?
……多分覚えたスキルはなくならないとは思うので、楽観的に考えている。
多少の隙は、良からぬ者の炙り出しになるのでトラップ待ちだ。
☆☆☆☆☆
何度か同じやりとりを重ねHP0で、スン……となってるレオリスの隣で、私はウェディングドレスを纏っている。
彼が夢見たヒロインは遂に現れる事はなかった。
(一人?居たようだが、「えー?バグじゃん……」とドン引きされたらしい)
表に裏に悪しき者を斥けつつ、場を盤石に整えた。
なんだかんだで、私達の仲は良好だ。
まぁ、難があるとするなら初夜か。
☆☆☆☆☆
「気が優れないのでしたら今日はお休みになられては?」
連戦連敗、【運命の愛】に破れた彼の落ち込みは凄い。
そんな私はしれっと告げる。
「私は【運命の愛】見つけましてよ?」
彼は枕に填めたはずの上半身を勢いよく振り上げた。
「はっ?いつ?相手誰?ソイツ絞め殺すから教えてくれっ!!僕のエリーなのにっ!!!」
んんっ?
自死はいけませんよレオリス。
っていうかエリー?
いつからエリーってなってた?
呼ばれた事ないんだけども!!
慌てはじめるレオリスの頬を両手で挟んで唇に口付ける。
「貴方の事ですわ、レオリス」
手を離す事なく頬に額に瞼にキスをする。
「私達の腐れ縁、これもある意味【運命の愛】といえるんじゃないかしら?」
破顔して唇を寄せると、彼のキャパオーバーだったのか鼻血を吹き出しつつ真っ赤になって倒れてしまった。
初夜は勿論お流れ。
それでもその後、彼の溺愛がヒートアップし、三男三女に恵まれたのだった。
幼馴染エンドです。
もっと短くどっとはらいな感じにするつもりでしたが、意外に長く。(汗)
ヒーローは隠れスパダリです。
二人の関係はニュアンス的に、の○太とド○えもん的な間柄かもしれない。
調子に乗ってはコテンパンにされて帰ってくる………。