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追悼作業

作者: miha-lay

男が、自転車に乗りながら交差点に差し掛かると、一台の車が、男のすぐ前を走り抜けていった。その時、男は思った。俺はもうすでに車に轢かれているのではないか、と。


いわゆる「パラレルワールド仮説」は、SFのみの概念であったが、今や多くの人が知る、かなりメジャーなものになった。さっきの自分だってそうだった……もし俺がもう少し速ければ、車が交差点に差し掛かるのが数秒遅ければ、俺は車に轢かれていただろう。しかしこの事柄が決定する前には、俺が車に轢かれた世界と、轢かれなかった世界が同時に存在していた。自分が生きているこの世界では、たまたま車に轢かれなかっただけで。いやむしろ、既に車に轢かれた世界があったのではないか?俺は本当に車に轢かれなかったのか?俺は人生で一度も車に轢かれたことはないが、本当にそうだろうか?俺はもうすでに車に轢かれているのではないか?

男は、ぼーっとそんなことを考えていた。男は次の交差点に差し掛かり、横から来た車に轢かれてしまった。



────────────────────────



「ア、もう完治しましたね。退院です。おめでとうございます。さっさと出ていけ。ニ度と来るな。二度とそのツラを見せるな。」


……その考えは、自転車に乗っている間の、単なる思いつきであって、交差点を過ぎればすぐ忘れるはずのもののはずであったのに、病院という場所で長い長い時間を過ごしてしまったために、おそらく男のこの後の人生でも永く付き纏われるようなものになってしまった。

男は家に帰る途中で、例の交差点に着いた。男がここに来たのは、その考えを忘れる為などではない、ただ単に家に帰る途中の道で、ここを通らなければならないからである。自分が車に轢かれた跡など何処にも残っていなかった。男はまたぼーっとあの事を考えていた。

通り過ぎようとした時、突如、道の端に停まっていたトラックが急発進した。男はそのトラックを避けるように前に飛び出した。トラックは男のすぐ後ろを走り抜けていった。


ブロロロ……


トラック……いわゆる、異世界転生モノの導入として、海外ではミーム化して、別の世界へと飛ばしてくれるものと考えられているらしい。もしかしたら、俺がトラックに轢かれた世界と、轢かれなかった世界を繋ぎ、二つの世界を存在させているモノなのかもしれない。また、俺が避けるのが数秒遅ければ、俺はトラックに轢かれていただろう。でも、俺は今、本当にトラックに轢かれなかったのか?本当は轢かれたんじゃないのか?トラックに?

男は、交差点の横断歩道の上で立ち尽くしていた。トラックがあった場所の陰からバイクが飛び出してきて、男を轢いた。


その時、男の考えは豹変した。そうか……あのバイクの所為だ。轢いたやつが悪いんだ。あのバイクが俺を轢いたからこそ、この世界が俺があのバイクに轢かれた世界に決定されたのだ。この世界の決定者はあのバイクだ。そして被害者の俺は、あのバイクを絶対に許さない。絶対に報いを受けさせてやる。ナンバーは2525、車体は赤、乗っている奴の服は上下黒のジャンパー、身長は178cm程、年齢は24歳、あの顔は……あの顔はどこかで見たことがある。そうだ、あの顔は俺の住んでいるマンションの向かいの棟に住んでいるアイツの顔だ。毎週土曜日にゴミを出し、その時に俺と出会っては、嫌な顔をして離れていくアイツだ。午前8時20分に起き、午前2時50分に寝て、俺の働いている店で午後10時49分35秒に入店しては決まって40番のタバコと赤色のガムを買うアイツだ。湾山市の外れにある發戸商事に仕事に行き、帰ってきてはエアコンの温度を23.5℃にするアイツ……



────────────────────────



警察や救急が到着した頃には男は既に死んでいた。コンクリートに染み付いた血痕は、何かの執念の如く書かれた血文字のように見えた……という人もいる。目撃者がいなければ監視カメラも無く、そもそもバイクが存在したような証拠は何処にも無かった。犯人が探されることはなく、事件は誰の目にも留まること無く終わりを迎えた。飛び降りとして処理されたのかもしれない。数ヶ月後には舗装工事によってコンクリートが張り替えられた。今あの男の痕跡は何処にも無い。



ただ、男が生きていたとして、その後どうなっていただろうか?その意味では、あのバイクは人を救済する天使として、その男を殺したのかもしれない。真実は誰も知らないが、男が言うにはその世界は確かに存在するのだろう。天使の救済によって、その世界が現実きならなかっただけである。



おしまい






────────────────────────




え?人殺してる時点で天使なんておこがましいって?なんだよ(笑)もしかしてお前、おれがバイクで人轢いちまったから自分を正当化しようとしてこんな文章書いたなんて考えてんのか(笑)そんなわけねえだろ(笑)探偵か著作家になれよ(笑)そんな(笑)現実はそう上手くいかねえよ(笑)思い上がんなよ(笑)クソが(笑)死ねよ(笑)

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