第7話「クール美少女は意外と抜けているらしい」
「これも生まれ持った天性の差なのかしら」
うん、この子はいったい何を言ってるのかな?
学校一かわいいいと名高いのだからどっちが見た目に優れてるか明確なのに、羨ましがられる理由がわからない。
後、何度も言うようだけど僕は男だからね?
春風さんと比較対象になってる時点でおかしいよ。
「春風さんのほうがずっといいと思うんだけど……。よく男子から告白をされてるよね?」
「よく知ってるわね?」
「そりゃあ有名だから知ってるよ」
「ふ~ん」
あっ、興味なさそうだ。
というか、こういう話題は嫌いなのかもしれない。
だったら話を変えよう。
「ところで、春風さんって徒歩通なの?」
「どうして?」
「だって自転車通じゃないみたいだし、今駅に向かう道は通り過ぎたよ?」
「あっ……」
僕の言葉を聞いて後ろを振り返る春風さん。
まさかこの子……。
「もしかして、通り過ぎたの気付いてなかった?」
「うん……」
春風さんは小さくコクリと頷いて僕の言葉を肯定する。
あれだね、春風さんは少し抜けてるらしい。
今まで全くそんなイメージなかったし、むしろ隙が一切ない女の子だと思ってたから物凄く意外だ。
なんだか話してるとちょっとクールなだけの普通の女の子みたいに見えるから、今までのことは偏見だったのかな?
でも、みんながいる時の春風さんは息が詰まるように張り詰めた雰囲気を放っていた。
正直その春風さんは僕が知っていたイメージそのままだったと思う。
だけど今は他人と話すのが苦手な僕でさえ話しやすい女の子だ。
何か理由があるんだとは思うけど、さすがに話したばかりでそこに踏み込むことはできないよね。
それに多分、次に話すことがあったとしても当分先だろうし。
春風さんとはクラスが違うため普段なら顔を合わすこともそうそうない。
だから何か用事がない限りはもう話すことがないわけなんだ。
「……あれ? どうかしたの?」
もう春風さんも引き返すだろうから家を目指して帰ろうとすると、いつの間にか春風さんが足を止めて俯いてしまっていることに気が付いた。
声をかけると春風さんは少し言い辛そうにしながらも口を開く。
「明日も……部室に行ってもいいかしら……?」
それは、僕にとってとても予想外で意外な言葉だった。
最初に思ったのは、『どうして?』という言葉だ。
春風さんが文芸部の部室に顔を出すメリットがわからないし、むしろ彼女にとっては時間の無駄でしかない気がする。
何か彼女の目に止まる物はあったかな?
う~ん、特に彼女が気に止めそうな物はなかったと思うけど……。
それに部室にいた時の春風さんはずっと僕と話していて周りに視線を向けている様子もなかったから、やっぱり部室の中に何か気になる物があったというわけではない気がする。
となると、本当にどういうつもりなのだろう?
それは気になってしまうけど、部員でもない子を何日も部室に入り浸せると神代先生に怒られてしまうんだよね。
だから正直いいよとは言い辛い。
でも、春風さんも冗談とかふざけて言ってきてるわけではないんだよね……。
今の春風さんは落ち着きなく両手を擦らせながら不安そうに僕の顔を見上げている。
全身ソワソワとさせているし、僕に断られたらどうしようと不安に思ってるのが伝わってきていた。
こんなふうにしている女の子のお願いを断ると僕が酷い人みたいになりそうだ。
そして何より、春風さんが態度を急変させる理由を知りたいと思っている僕がいた。
普通態度を急変させることなんてありえないし、ましてや春風さんの場合は変わりようが激しすぎる。
春風さんが部室に来たいのは明日だけかもしれないけど、もしかしたらこれから何度も訪れるつもりなのかもしれない。
これから彼女と一緒にいる時間が増えれば彼女の態度が急変する理由を知れるチャンスは必ず訪れるはずだ。
逆に言うと今この場で別れてしまえばもうその秘密を知るチャンスは訪れないと思う。
――うん、そう考えると僕が出せる答えは一つしかないね。
「いいよ」
「ほ、本当にいいの……?」
「うん、本当だよ」
僕が頷くと春風さんはとても嬉しそうに笑みを浮かべる。
その笑みが僕の中で一瞬あるキャラに重なってしまった。
だけど僕は慌てて首を横に振ってイメージを吹き飛ばし、現実と重なりそうになった妄想を頭から吹き飛ばす。
「どうしたの?」
当然いきなり首を横に振ったりしたら春風さんに訝しげられる。
きっと僕のことが変人に見えたことだろう。
「うぅん、なんでもないよ」
「そう? だったら、本当に明日も部室に行っていいのね?」
「うん、問題はないよ」
神代先生は去年の三年生が卒業してから中々部室を訪れなくなってるし問題ないと思う。
特に最近だと僕がWEB小説サイトに書いた小説を載せているため、僕が見せにいかなくても空き時間にチェックをしてくれているらしいから時間に縛られることもない。
もしそれでも春風さんが見つかってしまったらその時は小説作りを手伝ってもらってたと言えば一回くらいは見逃してくれるだろう。
……多分。
あの神代先生が一回でも大目に見てくれるかと考えると自信がなくなってきたけど、春風さんは喜んでくれてるみたいだし僕の判断は間違ってないと思った。
――次の、春風さんの言葉を聞くまでは。
「よかった、今までは趣味の話ができる女の子がいなかったけど、これからは笹川さんとできる」
「うん?」
「あれ、なんで首を傾げるのかしら? 笹川さん、私のイラストに凄く興味を持ってくれてたわよね? 女の子はやっぱり内心では興味津々のくせに取り繕う子が多いから迂闊に話ができなかったんだけど、笹川さんは興味あるって事がわかったからもう遠慮はいらないと思うのだけど?」
「うぅん?」
あれ、なんだろ?
なんだか物凄い食い違いがあるというか、春風さんの言葉には違和感がある。
後、勝手にエロイラストに興味津々だと捏造されてるんだけど、この子は自分に都合よく取りすぎじゃないかな?
とはいえ、今はこの違和感がなんなのかを突き止めたい。
「えっと、さっきからどうして首を傾げてるのかしら?」
「いや、ね? なんだか違和感を覚えていて……」
「違和感?」
「うん、なんだかおかしいというか……女の子に話し相手がいなかったというのはわかったけど、どうしてそこから僕が話し相手ってなるのかな? 女の子じゃなくていいんだったら、僕じゃなくてもいいよね?」
「えっ……?」
僕が違和感を覚えた部分に関して尋ねると、春風さんは『この人何言ってるの?』みたいな感じの戸惑いの表情を向けてきた。
あれ、これはもしかしなくても……?
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