第6話「好きな髪色は銀髪」
周りからの視線が強まってる事に戸惑っていると、春風さんがか細い声を出した。
そして彼女の目線に釣られて視線を落としてみると、そこにはバッチリと春風さんの手を握る僕の手がある。
……あっ。
「ご、ごめん!」
自分がとんでもないことをしていることに気付いた僕は慌てて手を放して謝る。
絶対に怒られる――そう思ったのだけど、春風さんは優しく笑って首を横に振った。
「いい、別に。驚いただけだから」
「あっ……ありがとう……」
意外な反応に僕は戸惑ってしまい、反射的にお礼を言うことしかできなかった。
ただ、気になるのは更に周りのざわつきが激しくなったことだ。
みんな信じられないとでも言いたげな表情で僕たちのことを見ている。
「なぁ、今の見たか……?」
「あっ、あぁ……春風さん、あんなふうに笑うんだな……」
「やばい、鼓動が激しくて爆発しそうだ……。春風さんの笑顔、かわいすぎるだろ……」
コソコソといったい何を言ってるのか気になるけど、生憎僕は聴力に優れていないため内容が聞き取れない。
まぁろくなことは言ってなさそうなので聞き取れなくていいのだけど。
特に端っこの男子なんてだらしない表情を浮かべて春風さんの顔を見つめているから本当にろくでもないことを考えていそうだ。
「…………」
春風さんもいつの間にか素っ気ない態度に戻っている。
さっきの笑顔は幻かと思うほどの切り替えの早さだ。
――まぁそれはそうと、これから帰るわけなんだけど……この子はいつまで付いて来るのかな?
春風さんは下駄箱に着くと自分の靴を取りに行ったのだけど、その後すぐに戻って来て僕の隣で靴を履き始めた。
どう見ても一緒に帰ろうとしているらしい。
「どうかしたの?」
「いや、別に……」
「ふ~ん」
春風さんの考えはよくわからないけど、ここで一緒に帰ることを拒むのは失礼になるよね。
正直言うと、素っ気ない春風さんと一緒にいるのは空気が重くて少し居心地が悪い。
でもだからといって、一緒に帰ろうとしてくれてる女の子を突き放せるほど僕は冷たい人間ではなかった。
ここで僕が取れる選択肢なんて春風さんと一緒に帰ること以外にない。
……もうそれは、選択肢とは言えないのだけど。
僕たち二人は校門を出た後も周りの生徒から注目を浴びていた。
それくらい春風さんが誰かと一緒に歩いてることが珍しいみたいだ。
ましてやその一緒に歩いてる人が男となれば、みんなが注目をしてしまう気持ちもわかる。
春風さん、男を近寄らせない雰囲気を放ってるからね。
それから十分ほど歩いた頃、僕たち二人だけになると春風さんの雰囲気がガラッと変わる。
部室で見せたクールさも残ってはいるのだけど、優しさがある笑顔で僕の顔を見上げてきたのだ。
心なしかどこか構ってほしそうな仔犬の表情にも見える。
「どうかしたの?」
さすがにそんな表情を向けられると無視はできないため、こちらから声をかけてみる。
すると春風さんは待ってましたと言わんばかりに表情を輝かせた。
構ってほしたがりなのかな?
「笹川さんは髪色だと何色が好きなのかしら?」
春風さんがしてきた質問はかなり唐突な物だった。
まぁエロ話よりは全然マシなのでいいのだけど。
「そうだね、どの色も好きだよ」
「その言い方、優柔不断な人が言いそうな言葉ね」
「うっ、そ、そう言われるとなんだか駄目な答えだった気がするね」
「別に駄目ってわけじゃないけど……強いて言うなら、何色が好きなの?」
人の事を優柔不断呼ばわりしていたのに、どうやら春風さんに悪気はなかったらしい。
まぁ確かに声は優しかったし、言葉自体にも棘があるような印象は受けなかったため思ったことを口にしただけなんだろうね。
それはそうと、好きな髪色かぁ。
「銀髪、かな?」
一般的に人気があるアニメキャラの髪色で多いのは、金髪か銀髪だと思う。
ピンク色も多いけど、個人的な印象では金か銀って印象だ。
そして僕は、そんな二択に絞らなくても銀色が一番好きだと自覚している。
特に銀色の髪色をしたクール美少女が実はデレるキャラだったという所謂クーデレのキャラが大好きだ。
だって普段素っ気なかったりするのに二人きりになると急に甘えん坊になったりするのってとてもかわいいじゃないか。
銀色の髪はクールを印象づけやすいし、それで個人的には銀色がいいなってなってる。
ちなみに僕が書いてる小説のヒロインも銀色の髪をしたクーデレキャラだ。
……まぁといった理由から銀色と答えたのだけど、春風さんは急に自分の髪を触り始めて意味ありげな視線を僕に向けてきた。
僕はもう少し考えて発言をしたほうがいいかもしれない。
「私、銀色だね」
そう、春風さんの髪色はとても綺麗な銀色だった。
つまり今しがた僕が好きといった銀髪は春風さんに当てはまってしまうのだ。
だから彼女が意識してしまっても仕方がないし、僕は迂闊な発言をしたことに後悔するしかなかった。
しかし春風さんは特段嫌そうにしている様子はなく、むしろどこか嬉しそうに見える。
どうしてだろう?
「私は銀髪より黒髪のほうが好きかしら。笹川さんの黒髪は艶があって綺麗だから凄く羨ましいと思う」
先程のお返しのつもりなのか、春風さんは僕の黒髪の事を褒めてくれる。
艶があるとかそういうのはよくわからないけど、女の子の代表ともいえる春風さんに羨ましがられるなんて思いもよらなかった。
後、正直女の子に羨ましいと言われるのは複雑な気持ちにもなる。
「僕の髪なんて大したことないけどね」
「そんなことない。結構お手入れに気を遣ってるんじゃないの?」
髪のお手入れに気を遣う?
春風さんは意外と純粋なのかな?
女の子と違って男だと髪のケアなどしない人がほとんどなのにね。
「別に何もしてないよ。普通にお風呂上りにドライヤーで乾かして終わりかな」
「えっ、そうなの? 羨ましい……私なんて結構お手入れ頑張ってるのに……」
「春風さんのほうが圧倒的に綺麗な髪をしてるんだからそんな物言いたげな目で見てこなくていいんじゃないかな!?」
僕の返答が気に入らなかったのか、春風さんがプクッと頬を膨らませながら物言いたげな目で僕の顔を見つめてきたので、僕は慌ててフォローをした。
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