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クール美少女の秘密な趣味を褒めたらめちゃくちゃなつかれた件  作者: ネコクロ
第2章「譲れないもの」

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第55話「笹川様はどうしようもなく鈍感な人のようですね」

「笹川さん?」


 僕が二人のことを見つめて考え込んでいると、不思議そうな表情をした不知火さんに名前を呼ばれてしまった。


「あっ、すみません……。それで、僕たちの本の感想を言いにわざわざ来てくださったのでしょうか?」

「ふふ、私もそんなに暇ではございませんよ」


 僕の言葉に対し、不知火さんは口に手を当てて笑ってしまった。


 だったら何をしに来たんだろう?


 そう思って見つめていると、ふと不知火さんの目が僕の顔を見据える。

 表情だけ笑っていて、目だけが笑っていなかった。


 えっ、僕今何か地雷を踏んだ?


「風の噂でお聞きしたのですが、書籍化打診があったにもかかわらず、お断りになったということは本当でしょうか?」


 笑顔にもかかわらず目が笑っていない不知火さんは、ジッと僕の目を見つめながら聞いてきた。

 なぜか知らないけれど、おそらく今この子は怒っている。


 いったい僕はどんな地雷を踏んだのか――そして、書籍化打診があったことは鈴花ちゃんと姉さんにしか言っていないのに、どうしてこの子が知っているのか。

 疑問がたくさん出てきてしまった。


 地雷を踏んだことに関しては全くわからないのだけど、書籍化打診を断ったことに関しては鈴花ちゃんと姉さんのどちらかが誰かに話していれば他の人が知っていてもおかしくはない。

 だけど姉さんはこういった秘密事は絶対に他人に話さないし、鈴花ちゃんは凄く抜けた天然みたいなところはあるけれど、基本はクールで隙がない女の子だ。

 不知火さんととても仲がいいとなれば犯人はまず間違いなく鈴花ちゃんだけど、ほとんど話したことがない程度の関係ならおそらくあの子は話さない。


 そして前の同人即売会で不知火さんは鈴花ちゃんのことを知らなかった。

 となれば、犯人は鈴花ちゃんでもない。


 しかし、だったらいったいどこからこの子は情報を得てきたのだろうか?

 僕の学校や名前まで知られているし、漫画の世界だけじゃなく現実でもお嬢様はとんでもない情報力を持っているということなのかな?


 ……実際のところはわからないけど、少なくとも厄介な人に目を付けられたようだ。


 僕は得体の知れない情報力を持つ不知火さんに目を付けられたことに内心頭を抱えながらも、ここは誤魔化さずに正直に話すことにする。

 どれだけの情報を持っているかわからない以上、下手に嘘を付くのは相手の怒りを買いかねないと思ったからだ。


「えっと、僕たちにはまだ早いと思ったんです。今は部活に専念したいなって」

「それは、書き下ろし依頼を断った理由でもあるのでしょうか?」


 やっぱりおかしい。

 どうしてこの子がその情報まで知っているのか。

 もしかして出版社と繋がりがあるのかな?

 同人即売会に顔を出していたのだから当然ラノベや漫画などに興味があるだろうし、先程メイドさんが言っていた大量の本を捌いていたというのも気になる。

 不知火さんも製作側の人間なのだろうか?


「はい、そういうことになります」


 僕は彼女たちのことを考えながらも、正直に答える。

 それにより不知火さんは残念そうに首を横に振った。


「笹川さん、押しつけがましいと思いになられるかもしれませんが、はっきりと言わせて頂きます。チャンスをみすみす捨てるなど、笹川さんは間違っておられます」

「いえ、しかし……僕たちも考えがあって、話し合った結果お断りさせて頂いているんです」


 僕だって書籍化の打診を断ったことに対して惜しいことをしたと思わないわけではない。

 だけど、やっぱり鈴花ちゃんの気持ちを尊重したかったし、僕も彼女と楽しく創作活動をしていきたいと思っている。

 だから自分の選択が間違いだったとは思っていないんだ。


 しかし、僕の言葉を不知火さんは気に入らなかったらしい。

 笑顔をやめ、真剣な表情で僕の顔を見てきた。


「チャンスはいつでも来るわけではございません。今を逃せば次はないかもしれないし、来たとしても数年後かもしれません。今笹川さんがしようとしていることは、そういうことなのですよ?」

「それは確かにそうかもしれません。ですが、それも覚悟をしてのことです」


 今回書籍化の打診が来たのは、きっと同人即売会での話題性があるからだろう。

 つまり今が旬であり、後々になって話題性を失えば書籍化打診はこなくなる。

 そしてその話題性がなくなれば、書き下ろしのほうの依頼もなくなるはずだ。

 結局そちらも話題性を重視してのことだろうからね。


 だけど僕は別に小説家になりたいわけではない。

 ただ単に自分の好きな作品を書き、それに鈴花ちゃんのイラストを付けてほしいだけだ。

 将来は普通に公務員を目指すつもりだし、書籍化できなくても問題はないと思っていた。


 ……いや、公務員になると副業ができなくなるから、今後の鈴花ちゃんとの関係次第では大手企業に入ることを目指すかもしれないけど。


 とまぁそんなことはさておき、どうして不知火さんはこれほどまでに言ってくれるんだろう?

 僕と不知火さんが昔からの知り合いとかであれば心配して忠告してくれているのだとわかるけれど、生憎不知火さんと話すのは今日で二回目だ。

 そんな僕にわざわざ忠告をしてはくれないだろう。


 そのことが気になった僕は、思い切って不知火さんに聞いてみることした。


「あまりにも軽く見られておりませんか? 本当にかけがえのないチャンスを失おうとしていらっしゃるのですよ?」

「軽くは見ていませんよ。僕の姉は作家として活動をしておりますし、そんな姉のことを僕は前から凄いと思っていました。だから今回のことももったいないことをしているということはわかっているんです。ですが、それでも僕たちは断ることにしました。不知火さんはどうして、ここまで僕たちのことを気にかけてくださるのですか?」


「お姉様も……いったいどなたなのか気になりますが、今は優先すべきことではないですね。私が笹川さんにこのようなお話をさせて頂いているのは、折角の才能をこのまま潰してしまうのはもったいないと思っているからです」


「折角の才能? あぁ、イラストは本当に凄いですよね。一緒に活動できていて誇らしく感じます」

「かぐや、私は今おちょくられているのでしょうか?」

「いえお嬢様、おそらく本心かと存じます。どうやら笹川様はどうしようもなく鈍感な人のようですね」


 何やらとても訝しげな表情をした不知火さんがメイドさんに尋ね、そしてメイドさんが無表情で僕のことを貶してきた。

 僕は何か変なことを言ったのかな?

 鈴花ちゃんの才能は本当に凄いと思うのだけど……。

現在発売中の『クール美少女の秘密な趣味を褒めたらめちゃくちゃ懐かれた件』を

ゴールデンウィークのお供にどうぞよろしくお願いいたします(*´▽`*)

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[一言] 面白いです。 良い物語をありがとうございます。
[一言] 自己評価が狂っているから、仕方ない… 自分のことを普通だと思っている主人公だから/w
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